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半導体スーパーサイクルの勝ち組と負け組。関連株と投資判断

トウシル / 2018年7月5日 7時47分

半導体スーパーサイクルの勝ち組と負け組。関連株と投資判断

半導体スーパーサイクルの勝ち組と負け組。関連株と投資判断

トランプ・リセッションの影に怯える株式市場

 トランプ米政権がしかける貿易戦争が激化し、世界景気が腰折れするリスクが出ています。株式市場は、今年に入ってからこの不安を織り込み始めています。日本株の物色動向を見ると、はっきり二極化が起こっています。景気敏感株(自動車・中国・半導体関連など)が売られる中で、ディフェンシブ株(食品・医薬品・電鉄など)が堅調です。

 景気敏感株は、業績好調でも下げがきつくなっています。たとえば、産業用ロボットや建設機械株、たとえばファナック(6954)安川電機(6506)コマツ(6301)などがそうです。米中貿易戦争の影響で、中国の設備投資ブームがピークアウトするリスクを織り込み始めていると言えます。

空前の半導体ブームいつまで?フラッシュメモリの需給やや緩む

 半導体関連株もそうです。業績は好調でも、株価は下げ続けています。貿易戦争の懸念に加え、半導体ブームの先行きにやや懸念が出てきたことも影響しています。空前のブームに沸く半導体業界ですが、NAND型フラッシュメモリの需給がやや緩和し、市況が下がりました。まだ、気にするほど需給が弱いわけではありませんが、注意が必要です。

 4~5年周期で好不況を繰り返してきた半導体業界ですが、今は、かつて経験したことのない世界的ブームに沸いています。一部に「半導体スーパーサイクルが始まった」との声もあります。これは、「通常の半導体サイクルはなくなり、半導体産業が継続的に成長する時代に入った」という意味です。

 それでは、過去20年のシリコン・サイクル(半導体産業の好不況サイクル)を簡単に振り返ります。まず、過去20年の世界半導体出荷額と、SOX指数(米国の半導体株価指数)の動きを見てください。そこに、過去20年のシリコン・サイクルが表れています。

世界半導体出荷金額(3カ月移動平均):1997年1月~2018年4月

出所:SIA(米国半導体工業会)より作成

 

SOX指数(米国半導体株価指数)の推移:1996年12月~2018年6月

出所:ブルームバーグより作成

 ITバブルと言われた1999年にも半導体の大ブームがありました。この頃の半導体の主用途は、パソコン(PC)でした。20世紀にはPCの成長とともに半導体産業も成長しました。PC買い替えサイクルがシリコン・サイクルを形成していました。

 1999年には、インターネットの登場でPCでの成長期待が異常に高まり、株式市場でIT関連株や半導体関連株が異常な高値まで買われました。ところが後から振り返ると、それはバブルでした。2002年にはIT需要が大きく落ち込み、ITバブル崩壊不況が起こりました。

 その後、半導体産業は長期停滞局面に入りました。PCでの成長がなくなった影響です。2008年にリーマンショックが起こると、さらに落ち込みました。

 ただ振り返ると、そこから半導体業界の大復活が始まっています。今、半導体業界は久々の世界的ブームに沸いています。半導体ブームを牽引しているのは、データセンターや高機能スマホで使われる「半導体メモリ」です。

 クラウド・コンピューティングが普及し、個人でも大容量の動画を簡単に保管できるようになったことから、データセンターでのメモリ需要が急拡大しています。2019年から世界的に、5G(第5世代移動体通信)への移行が始まると、データセンターでのメモリ需要は一段と拡大が予想されます。

 他にも、半導体を使う分野が急速に増えています。自動車の電装化・電動化が加速しており、自動車は半導体需要を牽引する重要分野となりつつあります。IoT(モノのインターネット化)の普及も、半導体需要の増加要因。産業用機器でもIoTが広がり、半導体需要拡大に寄与しています。

 急拡大する半導体需要に、供給が追いつかない状態が長引くうちに、半導体スーパーサイクルが始まったという声が出てくるのも、理解できないことはありません。それでも私は、半導体業界がブームと不況を繰り返す体質にあることに変わりはない、と見ています。

 

好不況を繰り返す半導体メモリ。メモリ以外の半導体はスーパーサイクルへ

 より正確にいうと、今、大ブームを巻き起こしている半導体メモリは、これからもブームと不況を繰り返すと考えています。今、絶好調でも、最先端品の歩留り【注】がいっせいに上がる1~2年後には、再び供給過剰になると見ています。

【注】歩留り(ぶどまり)
工場で生産される半導体から、「不良品」を取り除いた出荷可能な「良品」の比率を、「歩留まり」という。最先端の半導体は生産が難しく、当初、歩留りが低い。技術がこなれて生産が軌道に乗ると、歩留りが上昇する。

 ただし、半導体メモリは半導体市場全体の一部に過ぎません。半導体には、メモリの他にもマイクロ、ロジック、アナログ、ディスクリート、光半導体、センサーなど、さまざまな種類があります。

 メモリ以外の半導体は、ここから安定的に成長すると考えられます。たとえば、個別オーダーメードとなる自動車用の半導体は、極端なブームにも不況にもなることなく、安定成長が続くと予想しています。メモリ以外に注目すれば、半導体市場全体ではスーパーサイクルが始まったと言っていいと、考えています。

 それでは、半導体関連株への投資は、どうしたら良いでしょうか? 私は今後、半導体関連株の値動きは、徐々に二極化すると見ています。絶好調の半導体メモリが供給過剰になるとき、メモリ関連株の業績は悪化すると考えています。

 ただし、メモリ以外の半導体ビジネスは、スーパーサイクルに入った可能性があります。半導体材料(シリコンウエハ)で最先端の技術力を持ち世界第1位の信越化学工業(4063)、同2位のSUMCO(3436)や、自動車用の半導体で世界第3位のルネサスエレクトロニクス(6723)は、スーパーサイクルの恩恵で安定的に収益を稼いでいけると予想しています。

 今、株価が安くなっているところで、買っていきたいと考えています。

 また、スマホやデジカメなどに使われる「画像センサー(半導体)」で高い技術を持つソニー(6758)も投資価値は高いと考えています。スマホの伸びが想定以下で今期、半導体事業は減益となりますが、ゲーム、音楽、映画などで、安定的に高収益を稼いでいけると予想しています。

 一方、メモリへの依存度が高い日本の半導体製造装置株は、要注意です。高水準の受注残を抱えているので、すぐに業績が悪化することはありませんが、ブームが去った後は、業績が急速に悪化する可能性もあります。

 私は26歳だった1987年に、投資顧問会社で、日本株ファンドマネージャー兼アナリストとなりました。その時、アナリストとして最初に担当したのが、半導体産業でした。それから、2013年まで、日本株のファンドマネージャー兼アナリストをやりました。いろいろな業種を担当しましたが、半導体業界について、常に考え続けてきました。

 半導体産業は波の大きい産業です。誰もが強気で半導体は絶好調がいつまでも続くと思っているときに突然ピークアウトし、半導体不況が始まります。そして、もう半導体産業は永遠に復活しないと思われている、半導体不況の大底から突然、急回復が始まります。

 半導体産業の業況をこれからもしっかり見て、気づいたことがあれば、ご報告します。

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(窪田 真之)

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