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人気株と値上がり株を研究!新興株ランキング TOP20 2018年6月

トウシル / 2018年7月11日 8時0分

人気株と値上がり株を研究!新興株ランキング TOP20 2018年6月

人気株と値上がり株を研究!新興株ランキング TOP20 2018年6月

6月の新興株<マザーズ、ジャスダック>マーケットまとめ

 6月は、マザーズ市場にメルカリ(4385)がやってきました。メルカリの上場日は6月19日、初値は公開価格3,000円を67%上回る5,000円でした。公開規模(公開価格×公開株数)は、マザーズの創設来で最大となる1,306億円。これだけの超大型IPOとしては、これ以上ない好発進を切ったといえます。そんなメルカリIPOの大成功もありながら、6月も新興市場は低調・・・。闇が深くなっています。

 メルカリのIPO株人気(応募倍率は個人投資家で50倍だったとか?)で個人投資家の資金が拘束された影響もあったでしょうし、上場直後もメルカリに大量の資金が向かった影響もあったでしょう。ただ、それ以上に、多くの個人投資家のパフォーマンス悪化で全体心理を冷やしたことが、闇を深くしている最大の理由だと考えています。

 指数別の6月の月間騰落率では、上がったのが日経平均株価だけでした(東証2部指数は東芝の影響が大き過ぎるので除く)。日経平均は月間102円高で0.46%の上昇。一方で、TOPIX(東証株価指数)は▲0.94%、日経ジャスダック平均は▲2.03%、東証マザーズ指数は▲3.96%・・・東証マザーズ指数はこれで5カ月連続の下落で、年初来安値を更新しました。

 報復が報復を呼ぶ形に発展してきた米中の「貿易摩擦懸念」を理由に、6月は株式市場がリスクオフムードを強めました。それでも、日経平均だけ見ると、そこそこしっかり・・・。一方で、東証1部では年初来安値銘柄が続出していました。しかも、下げが続く銘柄は、逆張りで買っている個人投資家の多いメガバンクや自動車株、安川電機やファナック、東京エレクトロンといった銘柄群。画面に表示されている日経平均の値段と比べ、実感的には相場が強い感じがまるでない・・・そう思った方は多いと思います。

 日経平均のパフォーマンスより、自分のポートフォリオ(新興株や東証1部の割安株)のパフォーマンスが明らかに悪いことで、センチメントが冷え込んだ影響は大きいでしょう。とりわけ、米中の貿易摩擦懸念が中心テーマでしたので、リスクオン/オフの“炭鉱のカナリア”が中国株(上海総合指数)でした。

 その上海総合指数の下げがきつかったことで、リスクオフにスイッチが入ります。このときに広がる「質への逃避」の意識が、PERなどの株式指標、つまりバリュエーションの高い銘柄が多いマザーズ株(とりわけバイオ株)の売りにつながったともいえます。あとは、ビットコインの価格推移とマザーズの推移が似ているようにも思います。「質への逃避」ではビットコインは売り対象ですが、ビットコインなど仮想通貨の値下がりも個人投資家のセンチメント悪化を加速させた可能性は否定できません。

6月の売買代金ランキング(人気株)

 6月のマザーズ市場の月間売買代金は2兆842億円と、5月の1兆8,175億円と比べて15%の増加となりました。ただ、売買代金の増加も、完全にメルカリ要因。売り買いのエネルギーが最もぶつかる上場初日(6月19日)、メルカリ1銘柄で1,906億円の売買代金を記録しました。

 この19日のマザーズの売買代金は2,914億円と、2年ぶりの大商いです。とはいえ、メルカリは時価総額6,000億円超(新興株全体ではマクドナルドに次いで2位、マザーズでは1位)の特別な存在。この銘柄が加わった6月と、いなかった5月を比較しても意味がないわけで・・・。

 メルカリのIPOから6月末までの取引日数は9営業日ですが、この期間の売買代金を合算すると4,201億円になります。この分を除いた「6月のメルカリ抜きマザーズ売買代金は1兆6,641億円」ですので、5月と比べて極端に増えているわけではありません。マザーズ指数が年初来安値を更新する地合いにあって、売買が特段に増えていないというのは、押し目買いを入れる投資家が少ないと解釈できます。「閑散に売り無し」という相場格言があります、今は″閑散に買い無し“といったムード。個別株ベースでも、物色の柱になるような骨のある銘柄は出ませんでした。

市場 コード
銘柄名
6月末
終値
時価
総額
:億円
売買代金
25日移動
平均値
:億円
月間
騰落
率:%
ジャスダック 4712
KEYH
164 228 54.7 14.7
東証マザーズ 2497
UNITED
2,671 632 47.2 -26.6
ジャスダック 2702
マクドナルド
5,650 7512 40.4 3.1
東証マザーズ 2121
ミクシィ
2,804 2194 39.8 -17.8
東証マザーズ 3906
ALBERT
6,990 192 38.9 26.2
ジャスダック 4764
SAMURAI
459 145 35.0 5.8
東証マザーズ 7172
JIA
5,430 1629 23.8 -1.5
ジャスダック 3356
テリロジー
575 90 22.9 16.9
ジャスダック 6324
ハーモニック
4,690 4517 22.8 -9.8
ジャスダック 4579
ラクオリア
1,353 276 21.9 -0.5
東証マザーズ 4592
サンバイオ
2,882 1399 18.5 -2.5
東証マザーズ 6172
メタップス
2,965 399 18.5 -11.5
ジャスダック 9263
ビジョナリー
172 273 18.2 28.4
東証マザーズ 4565
そーせい
1,784 1360 18.0 -2.1
ジャスダック 8705
岡藤HD
221 24 17.4 -42.9
東証マザーズ 6177
AppBank
903 62 14.8 5.4
ジャスダック 2146
UT GROUP
4,150 1687 13.4 5.9
東証マザーズ 3900
クラウドワクス
1,849 265 13.2 8.2
東証マザーズ 3994
マネフォワ-ド
5,480 1057 13.0 1.9
東証マザーズ 3773
AMI
1,861 317 13.0 -26.8

 

売買代金ランキング(5銘柄)

1 KeyHolder(4712・ジャスダック)

 株価100円台前半の低位株に、個人投資家好みの材料がミックスされました。これで(まさかの)6月の売買代金トップ銘柄に・・・。
事の発端は、ネットの掲示板。音楽プロデューサーの秋元康氏が同社に増資するといった書き込みがなされ、これに対して同社側が否定。5日の夜中に「一部ネット掲示板などにおける書き込みについて」と題するリリースを出し、「決定した事実もない」と記載します。
 ただ、噂を否定したものの、噂は事実だったようで・・・。18日に、連結子会社KeyStudioが秋元康氏を特別顧問として招聘し、エンターテイメントコンテンツを手掛ける合弁会社を設立すると発表(この合弁会社には秋元康氏が出資)。発表翌日19日にストップ高で37%高すると、物色難だったことも相まって、低位の材料株として高値圏でのドンパチが続きました。

2 UNITED(2497・東証マザーズ)

 メルカリ株の大株主として、メルカリの上場期待で買われてきた銘柄。同社株を買ってきた投資家の大半が、メルカリIPOを目掛けていたこともあり、5月の上場承認時に暴落。そして、メルカリの上場当日も9.7%安と、典型的な出尽くし売りとなりました(しかもメルカリの上場日以降、8日間連続で下落)。
 正直、ここまで下げると理屈では説明できなくなりましたね。同社はメルカリのIPO時にメルカリ株450万株を売却しましたが、それでも残り1,050万株保有しています。時価ベースですが、この分だけで約480億円の価値があります。一方で、急落後の同社の時価総額は632億円(6月末時点)。メルカリ株分だけでも、トンデモナイ含み資産株と言えそうですが・・・。

3 マクドナルド(2702・ジャスダック)

 優待株のイメージが強いですが、この株、本当に株価モメンタムが強いです。6月も、6日に発表した5月の月次動向が好感されます。既存店売上高は前月比9.6%増で、前年同月比のプラスはこれで30カ月連続に! 他の小売各社の苦戦が目立つなか、マクドナルドの好調ぶりは目立ちました。
 既存店売上の発表翌日に上場来高値を更新すると、株価は節目の6,000円台乗せ。また、同社は6月優待の人気株ですので、信用取引を使った低コストでの優待取りクロスが活発化(権利付き最終売買日の1週間前くらいからクロス作る投資家が増えますね)。売買代金で3位に入ったのは、この影響が大きかったといえます。

4 JIA(7172・東証マザーズ)

 出来高が急増したのは5日で、この日の出来高132万株は今年2番目の高水準でした。出来高が増えた理由は、公募増資の受渡日だったため。環境エネルギー事業などに充当することを目的としたファイナンスを5月18日に発表。公募価格は5,558円でした。
 受渡日となった5日の始値は5,560円で、わずかながら公募価格より上でした。好業績のマザーズ株として値持ちは良いのですが、公募株を取得した投資家にとっての旨味は限定的でした。

5 サンバイオ(4592・東証マザーズ)

 リスク回避のムードが強い地合いにあって、赤字のバイオ株は総じて軟調。まさに底なし沼状態で、28日に年初来安値2,421円を付けました。ただ、翌29日に強烈買い気配で急騰。きっかけとなったのは、マザーズの赤字バイオ株では異例といえる証券会社による超強気レポートでした。
 三菱UFJモルガンスタンレー証券が、投資判断を最上位の「オーバーウエイト」で新規カバー開始。株価2,400円台のタイミングで、目標株価は4,600円!同社のパイプラインである「SB623」の将来性を高く評価し、「SB623」が慢性期脳梗塞の適応だけでもピーク時の世界売上げは6,000億円を超えると予想。これ、現実になる日がくるのなら、目標株価は4,600円でも全然足りない気がしますが・・・。

6月の株価値上がり率ランキング

 個別の材料で爆騰した銘柄が入ることが多いのですが、6月については「なぜ上がったのか理由が分からない」銘柄がほとんどな気がします。実際、時価総額で100億円未満の超小型株が20社中8社と多く、最大でもライフネットの333億円と小粒。地合いが悪いなかで、少額の資金で動きやすい小型株を狙う省エネ相場だったのかもしれません。
 
 あとひとつ触れておかないといけないことは、5月の月間値上がり率トップ銘柄やまねメディカル(2,144)の件です。通所介護サービスを手掛けるやまねメディカルは、5月に定款の一部を変更し、事業目的に「仮想通貨の企画、開発や仮想通貨に関するシステム提供、仮想通貨の交換業」を追加しました。

 意外感と仮想通貨関連株が流行っていたこともあり、月間で222.3%高を記録したわけですが・・・6月は大暴落しました。26日に東証から上場廃止基準にかかる猶予期間入り銘柄に指定されたと発表(前期まで4期連続で営業赤字だったため)。まさに天国から地獄ですが、市場で人気がある(株価が短期的に上がっている)からといって、それが優良株であるとは限りません。業績や財務状況が悪いから低位株だったりするわけで、その株に発生した”よくわからない材料“に飛び付き、「儲けた、損した」と騒ぐような世界からは距離を置くべきだと思います。

 

市場 コード
銘柄名
月間
騰落
率:%
6月末
終値
前月末
終値
時価
総額
:億円
東証マザーズ 1401
エムビーエス
121.4 1,990 899 145
東証マザーズ 3989
シェアリングT
88.1 4,795 2,549 293
東証マザーズ 9271
和 心
66.2 4,670 2,810 132
東証マザーズ 6185
SMN
59.7 5,070 3,175 322
ジャスダック 6424
高見サイ
59.2 1,517 953 69
ジャスダック 3766
システムズD
58.5 1,444 911 57
東証マザーズ 3646
駅 探
55.6 1,100 707 76
ジャスダック 2186
ソーバル
48.6 1,901 1,279 155
ジャスダック 2195
アミタHD
46.2 4,400 3,010 51
ジャスダック 7519
五洋インテ
42.2 526 370 106
ジャスダック 6494
NFK-HD
37.5 253 184 78
ジャスダック 8946
エイシアンスター
34.7 194 144 35
東証マザーズ 3680
ホットリンク
34.5 1,057 786 140
東証マザーズ 3680
アセンテック
33.1 3,620 2,720 120
東証マザーズ 7157
ライフネット
28.4 651 507 333
東証マザーズ 2351
ASJ
28.4 1,710 1,332 136
ジャスダック 9263
ビジョナリー
28.4 172 134 273
ジャスダック 2721
JHD
28.0 1,060 828 21
東証マザーズ 5704
JMC
27.5 2,294 1,799 60
東証マザーズ 6541
グレイス
27.4 2,217 1,740 302

 

値上がり率ランキング(5銘柄)

1 エムビーエス(1401・東証マザーズ)

 マザーズで一番証券コードが早い(小さい?)銘柄が同社です。その同社が新興株でトップの上昇率を記録しました。きっかけは、テレビ番組で7日に紹介されたことでした。投資家の朝の必聴番組「モーニングサテライト」が、同社の独自技術の外壁リフォームがインフラ補強にも活用され始めていることを報じました。
山口県本社で、番組放送時の時価総額は60億円台だった超小型株。アナリストもカバーできず、一般投資家に知られることが難しいタイプの銘柄でした。こうした埋もれた隠れ小型株を掘り出す“コーポレートサーチ”は、お世辞抜きで偉大だと思います。

2 シェアリングテクノロジー(3989・東証マザーズ)

 民泊型ホテルの運営や、海外留学サービス「スマ留」など事業の多角化による成長期待で注目度急上昇の新興株。まだIPOから1年未満の企業ですが、6月に上場来高値を更新。かなりレアになった新値ブレイク銘柄としても目立っています。
 株価上昇に弾みを付けたのが、28日に発表した1対3の株式分割と自社株買い(発行済み株数の0.82%相当)。成長過程の企業の自社株買いはネガティブに見られることもありますが、同社の場合は「自己株式を駆使したM&A(企業の買収・合併)」という明確な目的を示したことが好印象につながっています。

3 ライフネット生命保険(7157・東証マザーズ)

 2012年の上場後、株価は低迷続き。そのライフネットが今年は一味違う!年初から6月末まで(上半期)で株価は約6割も上昇しています。
買われているきっかけは、足元で新規契約件数の増加が目立っているため。6月に発表した5月分では、新規契約件数が前年同月比98%増の4,827件でした。同社は前期まで、10期連続で最終赤字。今期こそ、念願の黒字転換できるかも?なる期待が強まっています。

4 ビジョナリー(9263・ジャスダック)

 昨年11月に、メガネスーパーの完全親会社として設立され、装い新たにジャスダックに上場。正直、ここまで上がっている理由は分からないのですが・・・株価モメンタムの強さは特筆すべきです。この手の低位株は大きく上がると調整が入るものですが、同社株は3月~6月まで4カ月連続で月間上昇。しかも、4月~6月は、新興株の値上がり率上位20に3カ月連続でランクインしています。3カ月連続ランクインは本コラム開始以来で初の快挙です。

5 グレイステクノロジー(6541・東証マザーズ)

 18日に、「東証本則市場への変更予備申請を行った」と発表したことが買い材料に。リリースの中で同社は、社会的な認知度や信用力を高め、企業価値向上を図るためには東証1部へ市場変更を行うことが重要であると考えていると記載。また、市場変更の時に投資家が心配するのが「市場変更とセットで公募増資も発表すること」ですが、こちらについても現時点では計画していないと記載。
 こうなると、東証1部への昇格発表目掛けて買うというのもわかるのですが・・・本則市場への変更予備申請ということで、①東証2部になる可能性もあること、②東証に承認されるかどうかもわからないこと――には注意でしょうか。

 

7月に注目したい新興株の動き

 7月5日、東証マザーズ指数が節目の1,000ポイントを割り込みました。前回1,000ポイントを割れたのは、昨年9月6日。この時は、マザーズ指数が1,000ポイントを割り込んだ瞬間に、押し目買いが殺到。そこから今年の1月高値1,367ポイントに向けた上昇相場につながりました。

 マザーズ銘柄にはバイオなど赤字企業が多く、マザーズ指数の予想PERなどファンダメンタルズ指標が算出されていません。そのため、「どこまで下げたら割安か?」といった目安が無ければ、議論もされていません。昨年9月でいえば、“1,000ポイント割れ”を合図に逆張り買いで動く個人投資家が多かったのは事実です。

 ただ、後場の寄り付き直後に1,000ポイント割れした今回は、結局後場の引け時点でも1,000ポイント割れ。株価が上がるときに「日経平均の2万円は通過点」みたいな表現がされますが、「マザーズ指数1,000ポイント割れは通過点」なる不安を抱えた7月相場に入ります。


 

 マザーズ指数は、先月まで、月間で「5カ月連続」で下落しています。そして7月もすでに9%下落しており、月間の下落は「6カ月連続」に期間を延ばしそうな情勢です。仮に、6カ月連続の下落になった場合、マザーズ指数が算出された2003年以降で初めてのこと。それほど長期にわたって下げ続いています。これは苦しい状況です、本格的なリバウンドがないわけですから。

 これまでの最長である5カ月連続の下落は2度ありました。リーマンショックの年の2008年6月~10月と、東日本大震災の少し後2011年5月~9月。こうなると、心理的にいわゆる“セリングクライマックス”(多くの投資家が耐え切れなくなり、価格無視で手持ち株をロスカット)が意識され始めます。

 例えば、2008年の5カ月連続下落の場合、5カ月でマザーズ指数が54%も下落しました。東証が公表する信用買い残の信用評価損益率は、ピークで同年10月に▲39.65%まで悪化。極限まで個人投資家が痛んだところの投げ売りを経由し、強烈なリバウンドに転じました。

 ただ、2011年の5カ月連続下落と今回は、下落率はそれほど大きくありません。2011年は5カ月で15%の下落、今回も5カ月で17%の下落。ゆっくりと長く下げているのが特徴ともいえます。2008年型のセリングクライマックス状態とは到底言えないわけです。実際、
2011年の場合、翌月こそリバウンドしましたが、2012年6月の安値289ポイントまで調整地合いが長引きました。今回も下げが急ではない分、ガツンと戻るイメージは抱きにくいところです。

 

 

 また、注意したいのは、最近よく目にする「高値期日を通過したら上がる」という説を過信しないこと。日本で一番信用買い残が多いのは任天堂(7974)で、新興株市場で一番信用買い残が多いのはそーせいグループ(4565)です。その2銘柄の高値は1月24日で、高値の期日は7月後半になります。下げ止まらないこの2銘柄も、高値期日を通過する7月後半には好転するだろうという考え方があります。指数でみても、東証マザーズ指数も年初来高値は1月24日、日経平均株価は1月23日ですので、高値で買ったまま持っている投資家の期日はたしかに近付いています。

 ただ、マザーズの過去のチャートを見てもらえばわかりますが、高値を付けた半年後の期日辺りで強くリバウンドした形跡はありません。個別株ベースでも同様です。なぜか?といえば、高値で信用買いした投資家で、手負いの塩漬け株を持ち続けている投資家は少ないからです。
信用買い残の多いそーせい株でみても、信用買い残が増加したのは高値を付けた1月ではありません。高値を付けた週のそーせいの信用買い残は570万株(4分割考慮)ですが、6月29日時点では793万株です。高値で買った投資家の買い残はすでに整理され、下げ続ける過程で逆張りで新しく建てた買い残のほうが圧倒的に多いと思われます。実際、直近の東証の信用評価損益率をみても、6月29日時点で▲11.57%に過ぎません。悪化傾向にあるものの、過去のセリングクライマックス時に発生するような評価損益率でとは言えないのが現状です。

 

 

 結局、今回の場合、高値期日のような昔の発想ではなく、なぜ下げたか?何が市場で嫌われていたか?に向き合うことが大事だと思います。

 今、市場参加者が口にする不安要因は「米中貿易摩擦の懸念」、これ一本です。そして、これ一本だからこそ、東京時間中は同じアジア時間に取引されている上海総合指数など中国株や、人民元の動向にナーバスになっています。市場参加者が米中貿易摩擦の懸念でリスクオフに傾き、リスク資産である株を売っているのであるとすれば、反転のきっかけは「上海総合指数の強烈なリバウンド」以外にあり得ないと考えています。

 マザーズなどの新興株は、米中貿易摩擦と関係ない企業ばかりです。それなのに、「なぜ日経平均株価よりマザーズ指数のほうが下げるのか?」、これは率直な疑問になります。ただ、この疑問については、東証1部銘柄の最大の買い手が日銀(ETF買い)、2番目が自社株買いであることが答えです。マザーズに関しては、日銀ETF買いの恩恵がゼロで、自社株買いを実施している会社も極めて少数。この違いで説明が付きます。

 そのため、米中貿易摩擦の“炭鉱のカナリア”は上海総合指数であり、まるで関係ないはずの東証マザーズ指数になっているのです。繰り返しになりますが、マザーズの反転のきっかけで気にするべきは高値期日ではなく、上海総合指数の反転タイミング。だからこそ、気にすべきニュースは米中の通商に関するニュース。そして、この不条理な下げがリバウンドに転じた場合に選ぶべき新興株は「下落率が大きかった流動性の高い新興株」になるはずです。

(岡村 友哉)

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