不透明な原油相場。高値でもファンド勢は買い姿勢
トウシル / 2018年7月9日 6時0分
不透明な原油相場。高値でもファンド勢は買い姿勢
7月2日~6日原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は反落。供給不安を背景に、WTI期近8月限は一時75.27ドルまで上昇し、期近ベースとしては2014年11月下旬以来、約3年7ヶ月ぶりの高値を付けた。しかし、その後は需給不均衡への警戒感が強まり、マイナスサイドへと値を崩している。
リビア国営石油(NOC)が、ズウェイテイーナ港とハリガ港からの原油積み出しに関してフォースマジュールを宣言した。東部の産油地帯および港の閉鎖により、日量85万バレルの生産喪失につながる可能性がある。また、6月から不可抗力となっているラスラヌフ港およびエスサイダー港からの積み出しに関しても再開が妨げられており、同国からの供給が停滞する恐れがある。リビアに限らず、イラン、ベネズエラ、カナダのオイルサンドからの供給に対する根強い不安感もあり、供給減少を懸念した買いにより、一時3年7ヶ月ぶりの高値を示現するに至った。
しかし、石油輸出国機構(OPEC)加盟国の一部や非加盟国ロシアの増産への懸念が抑制要因となり、上値を買い進む動きは限られた。7月から協調減産幅を縮小して目標対比で増産に動くことになっているが、すでに6月の時点で一部の主要産油国は増産に傾いている。ロイター調べによると、サウジアラビアの6月の産油量は日量約70万バレル増加、OPEC全体としても同32万バレルの増加となった。また、ロシア石油相によると、ロシアの6月の産油量は同1106万バレルに達したという。合意前からすでに生産量を増やしているうえ、さらなる増産の可能性も浮上した。
トランプ米大統領はサウジアラビアのサルマン国王と電話会談し、必要であればサウジアラビアが増産に動くことで合意したとホワイトハウスが発表した。同大統領はツイッターで、日量200万バレルの増産要請に同国王が合意した投稿、需給逼迫への懸念が和らいだ。同大統領はまた、原油相場が高止まりしていることからOPECに対し、価格をすぐに引き下げるべきとツイッターで非難。米国からの増産要請に対してサウジアラビアを中心に増産を強める可能性が出てきている。
これらを背景に上値が重くなると、直近の上昇に対して買われ過ぎ感も意識され始め、徐々に市場のセンチメントは弱気に傾き始めている。さらに3週連続で市場予想以上に減少していた米国の原油在庫が、この週発表分では予想外の増加となったことも相場の重石に。米中貿易摩擦が強まると、石油消費大国の需要が抑制される可能性も懸念材料であり、やや売り優勢の地合いとなった。
ただし、高値達成で天井確認から下げに転じたとの判断は早計だろう。値動き荒く、ボラティリティが高い状況にあるため、調整安局面でも相応の下げとなる可能性がある。需給面では買い材料に出尽くし感があるが、ファンド勢が再度買い姿勢を強めていることもあり、予断を許さない状況にある。また、外為市場も不安定さが拭えず、市場参加者のバイアスは上下どちらにも傾注しやすくなりつつある。不透明感強い状況はしばらく続く見通し。
【今週の予想】
- WTI 中立 72.00-76.00ドル
- BRENT 中立 75.00-79.00ドル
国内石油化学関連ニュース
- 三菱ケミカル、アクリル系コーティング材料値上げ
- デンカ、酢酸ビニル-エチレン系共重合エマルジョン値上げ
- デンカ、ポリビニルアルコール値上げ
- 東亞合成、次亜塩素酸ソーダ製品値上げ
- AGC、次亜塩素酸ソーダ値上げ
- 旭化成、スチレン系特殊透明樹脂およびスチレン系熱可塑性エラストマー値上げ
- 昭和電工、塩素化ポリエチレン値上げ
- 新日鉄住金化学、経営統合に伴う統合会社および連結後会社の商号を変更
- レンゴー、新しいセルロースナノファイバーを開発
- プロテインケミカル、福井工場で爆発
- 豊通ケミプラス、アルケマとアジアにおける親環境発泡剤の販売契約に署名
- 昭和電工、パワー半導体用SiCエピウェハー高品質グレード品の3次増強を決定
- 国内クラッカー、相次いで定修明け
- DIC、子会社とキャセイインダストリーズグループから高純度酸化鉄顔料事業を買収
- デンカ、関連会社がMS樹脂事業を譲受
- 東洋紡、グループ事業を再編
- 大陽日酸、プラクスエアから欧州事業の一部を分割譲渡
- 東レ、膜利用糖化プロセスのタイ実証プラントが竣工
海外石油関連ニュース
米中、第1弾の340憶ドル相当の輸入品への追加関税発動
米国は7月6日、知的財産権の侵害を理由に、中国からの輸入品の自動車、半導体、医療機器、産業ロボットなど818品目(340億ドル相当)を対象とし、25%の追加関税を課す制裁措置を発動した。一方、中国はこれを受け、米国からの輸入品の大豆や牛肉など545品目(340億ドル相当)に対し、報復措置を発動すると発表した。今後、両国は第2弾となる160億ドル相当の輸入品にも追加関税を課すことが見込まれており、さらに拡大する可能性がある。実施日が後日発表される第2弾では、米国は284品目、中国は原油、石油製品、化学製品、医療機器など114品目が対象となる。
米国のリストは米通商代表部(USTR)が4月3日に通商法301条に基づき1333品目、計500億ドル相当に対する制裁の原案を明らかにした。その後、利害関係者から寄せられたパブリック・コメントと5月15日からの公聴会の内容を踏まえて、1102品目へ絞り込んだ。6月15日の最終リストの第1弾の品目リストには818品目、約340億ドル相当が含まれており、当初の品目リストの一部となった。これについて7月6日に25%の関税適用を開始することとなった。第1段品目リストには、当初のリスト案に掲載されていた品目のうち515品目(29類/有機化学品、30類/医療用品、38類/各種の化学工業製品、72類/鉄鋼、73類/鉄鋼製品、76/アルミおよびその製品、83類/各種の卑金属製品、91類/時計およびその部分品、93類/武器および鉄砲弾並びにこれらの部分品および附属品、94類/家具、他、プレハブ建築物)が削除されている。第2弾の品目リスト案の284品目、約160億ドル相当は4月3日のリストに含まれていなかった13の類にわたり、大部分が第39類(プラスチックおよびその製品)に集中している。一方中国のリストの第2弾では27類/原油や石油製品などの鉱物性燃料および鉱物油並びにこれらの蒸留物、歴青物質並びに鉱物性ろう、29類/有機化学品、39類/プラスチックおよびその製品に集中している。
CFTC、ファンド建玉明細
米商品先物取引委員会(CFTC)が発表した建玉明細報告によると、26日時点におけるWTIのファンド筋のポジションは62万5091枚の買い越しと、前週から買い越し幅を4万4144枚拡大させた。ショートカバーを進めるとともに新規に買い建ちしており、買い姿勢を強めていることが窺える。一方の生産者筋は65万5458枚の売り越しと、前週から売り越し幅を3万5385枚拡大させた。こちらは手仕舞い売りを進めるとともに新規に売り建てしている。
EIA、原油在庫は予想に反して増加
米エネルギー情報局(EIA)が7月5日に発表した6月29日までの週の週間石油統計の概要は次の通り。
原油在庫は前週比124.5万バレル増の4億1788.1万バレルとなった。前年同期比は16.9%減と前週の同18.2%減からマイナス幅が縮小した。ロイター事前予想の350万バレル減に反して増加している。生産量は日量1090.0万バレル(前週比変わらず)、過去最高水準。4週連続で同量となっている。輸入量は同905.5万バレル(同69.9万バレル増)と増加した。リファイナリーへの投入量は同1805.1万バレル(同7.3万バレル減)と減少し、稼働率は97.11%と0.39pt低下した。輸出量は同233.6万バレル(同66.4万バレル減)と減少した。なお、WTIの受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの原油在庫は2778.0万バレル(同211.3万バレル減)と7週連続で減少した。戦略石油備蓄(SPR)は6億6001.6万バレル(同変わらず)。
ガソリン在庫は前週比150.5万バレル減の2億3969.1万バレルとなった。前年同期比は1.0%増と前週の同0.1%増からプラス幅が拡大した。ロイター事前予想の80万バレル減をやや上回る減少。生産量は日量1029.7万バレル(前週比4.3万バレル増)と増加した。輸入量は同64.8万バレル(同34.0万バレル減)と減少した。輸出量は同48.7万バレル(同12.6万バレル減)と減少した。需要は同986.9万バレル(同13.8万バレル増)と増加した。4週平均の需要は同970.1万バレルと前年同期の同958.2万バレルを1.2%上回る水準。全米平均ガソリン小売価格(レギュラー)は前週比1.1セント高の284.4セントと5週ぶりの値上がり。なお、ナショナル・ハリケーン・センター(NHC)によると、現在大西洋上に熱帯低気圧は発生していない。
ディスティレート在庫は前週比13.4万バレル増の1億1755.7万バレルとなった。前年同期比は21.8%減と前週の同22.9%減からマイナス幅が縮小した。ロイター事前予想の50万バレル減に反して増加。このうちヒーティングオイル在庫は同10.4万バレル増の847.5万バレル、前年同期比11.0%減と前週の同12.7%減からマイナス幅が縮小した。生産量は日量546.3万バレル(前週比6.7万バレル増)と増加した。輸入量は同9.2万バレル(同3.8万バレル増)と増加した。輸出量は同141.0万バレル(同42.6万バレル減)と減少した。需要は同412.6万バレル(同51.4万バレル増)と増加した。4週平均の需要は同399.2万バレルと前年同期の同413.9万バレルを3.5%下回る水準。全米平均ディーゼル小売価格は前週比2.0セント高の323.6セントと5週ぶりの値上がり。
なお、プロパン/プロピレン在庫は前週比286.4万バレル増の6122.9万バレルとなった。生産量は日量189.8バレル(前週比1.9万バレル減)と減少した。輸入量は同10.4万バレル(同1.6万バレル増)と増加した。輸出量は同76.9万バレル(同20.3万バレル増)と増加した。需要は同82.4万バレル(同0.3万バレル減)と小幅減。4週平均の需要は同74.6万バレルと前年同期の同96.2万バレルを22.4%下回る水準。
石油製品全体の4週平均の需要は、日量2089.9万バレルと前年同期の同2061.3万バレルを1.4%上回る水準。SPRを除く石油全体の在庫は、前週比330万バレル増の12億0690万バレル。前年同期を9.9%下回る水準。
(CREEX LLC.)
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