トロフィーの値段は2,000万円!?13年で3倍、その変化から金相場を探ろう
トウシル / 2018年7月17日 15時49分
トロフィーの値段は2,000万円!?13年で3倍、その変化から金相場を探ろう
作り変え、デザイン改良を経て現在のトロフィーは3代目と言われている
サッカー世界選手権大会、ロシア大会(2018年)は、フランスの優勝で幕を閉じました。そしてフランス代表にはその健闘をたたえ、トロフィーが贈られました。
高々と掲げたり、抱きかかえたり、優勝メンバーがさまざまな仕草でトロフィーを愛でるシーンが幾度となく報じられました。
今回のロシア大会で優勝したフランス代表のメンバーが手にしたあのトロフィーは、作り変えやデザインの改良を経た3代目と言われています。
1930年の第1回ウルグアイ大会から1970年の第9回メキシコ大会まで使われ、そのデザインをした人物名からとった「ジュール・リメ」と呼ばれるトロフィーは、メキシコ大会で通算3度目の優勝を果たしたブラジルに永久譲渡されました。
1974年の第10回西ドイツ大会からは大会前年(1973年)に作られたトロフィーが使用されました。
そして、2006年のドイツ大会前にトロフィー上部の地球儀のデザインが改良されました。これが現在使用されているトロフィーです。
2002年の日韓大会で優勝したブラジルに贈られ、多くの日本人が目にしたあのときのトロフィーは、今回のロシア大会でフランス代表に贈られたトロフィーと同一ではないと言えます。
現在のトロフィーの物質的価値は2,000万円前後か
複数あるFIFA(国際サッカー連盟)の資料の一つには、「ジュール・リメ」は銀製で金メッキが施されたもの、そして現在のトロフィーは高さ36.8センチメートル、重さ6,175グラム、うち4,297グラムが純金(pure gold)と書かれています。
その現在のトロフィーについて、強度を高めた18金(金75%)と仮定し、銀が15%、銅が10%とすると各金属の含有量は以下の通りとなります。
表1:トロフィー1個あたりの各種含有物とその量、および物質的価値(筆者推定)
筆者の推定では、トロフィー1個あたりの2018年6月時点の物質的価値はおよそ2,000万円です。他方、6,175グラム全てが「純金」とする説もあり、仮にその場合はおよそ2,800万円となります。
近年の大会では、優勝が決まった直後にフィールド上で選手たちが触れた後は、セキュリティーの観点からトロフィーは直ちにFIFAの管理下に置かれます(選手たちにはロッカールームで金メッキのレプリカトロフィーが付与されるとのことです)。
通常、本物のトロフィーに触れることができるのは、優勝国のメンバーと国家元首など一握りの人物に限定されているようです。
また、必要に応じてトロフィーの製造業者がメンテナンスを行うのですが、デザインの修正や経年劣化の補修のために金を上塗りするケースもあると考えられます。
オリンピックのメダルと異なり、サッカー世界選手権大会のトロフィーは閉ざされた環境の中で繰り返し使用されているため実態が見えにくいと言えそうです(その意味では3代目という情報にも疑問符が付きますが…)。
FIFA資料の複数の間では、トロフィーの高さや金の含有量を含めた重さのデータが微妙に異なる点も気になります。
物質的価値については、2,000万円ぐらいなのか、諸説の一つである2,800万円なのかというのは正直なところ定かではなく、総合的に考えて「2,000万円前後」と考えています(2018年6月時点)。
金価格は大きく変動。トロフィーの物質的価値も大きく変動した
以下は、2018年6月時点と2005年(ドイツ大会前年のデザイン改良時点)の6月との物質的価値(推定値)の比較です。
表2:各年のトロフィーの物質的価値(筆者推定)と金価格(1グラム当たり税抜き)
金価格の動きが、トロフィーの物質的価値を大きく変動させたことがわかります。
2005年から2018年にかけて、金価格の変動によってトロフィーの物質的価値は大きく上昇しました。
そしてその金価格の変動要因について、1975年から2018年までの期間を3つに分けてみると、時代の変遷とともにその構造が大きく変化してきていることがはっきりとわかります。
近年の金相場の変動要因が「多層化」した点に留意したい
金相場の変動要因は大きく4つに分けられると考えています。「有事」「景気」「中国など」「ドル」です。
表3:金相場における各種変動要因の価格への影響 (ドル建て金の場合)
変動要因と価格の変動には上記のような関係があると考えています。
以下より、「1975~1989年」「1990~2002年」「2003~2018年」の3つの期間において、各種変動要因がどのように作用したのかを見てみたいと思います。
図4:金の価格推移 1975 ~ 1989年(ドル建て)
「1975~1989年」は、有事、ドル、景気が金相場に影響しました。有事の予兆・発生により金相場は上昇、収束によって下落、ドルの下落によって金相場が上昇、景気の悪化(株式の下落)によって金相場が上昇、という具合です。
図5:金の価格推移 1990~2002年(ドル建て)
「1990~2002年」は、景気がよかった(株が上昇し高値を維持した)ために金相場は低迷しました。
図6:金の価格推移 2003~2018年(ドル建て)
「2003~2018年」は、「有事」「景気」「中国など」「ドル」の4つの変動要因において、複数が同時に金相場に作用し、現在もその傾向が継続しています。
近年は「有事=金相場上昇」という従来から言われている単純な方程式だけでは金相場の変動を説明できなくなってきています。「株高(安)=金相場下落(上昇)」「ドル高(安)=金相場下落(上昇)」「中国景気良(悪)=金相場上昇(下落)」もしかりです。
複数の変動要因が作用する相場に変わった(多層化した)点は、足元の、そして将来の金相場を考える上で非常に重要であると筆者は考えています。
私たちは今、その時どの変動要因が最も強く金相場に作用しているのかを感じ取る力が求められているのだと思います。
今後は、2022年にカタール大会(第22回)、2026年に北米大会(第23回 カナダ、米国、メキシコの3カ国共催)が行われる予定です。
次回までの4年間、次々回までの8年間、変動要因が複雑化する中、金相場はどのように推移していくのでしょうか。
長期的な視点で金相場の動向を見守りながら、次回の大会を待ちたいと思います。
(吉田 哲)
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