ドルと利上げの方向を決める重要な手がかりに?雇用統計に再び脚光
トウシル / 2018年8月1日 9時4分
ドルと利上げの方向を決める重要な手がかりに?雇用統計に再び脚光
今週の金曜日、8月3日に発表される米国の7月雇用統計は、失業率は3.9%に低下する一方、NFP(非農業部門雇用者数)は+19.5万人の増加、また平均労働賃金は前月比+0.3%という予想になっています。(表-1)
表-1 過去3ヵ月の推移と今回の予想値
米雇用市場は堅調さ保つ
米雇用市場は堅調で、失業率はFRB(米連邦準備制度理事会)が予想するより1年近くも早いペースで下がっています。非農業部門雇用者は前月ほど伸びていませんが、それでも平均すると今年は毎月20万人近く増加。米国経済の勢いが雇用統計に反映されています。(表2,3)
パウエルFRB議長も「米国の経済成長はかなり強い」と米議会で証言しています。そのうえで「段階的な利上げを続けるのが最善」の見解を示しました。FRBは今年すでに3月と6月の2回利上げしていますが、パウエル議長の自信に満ちた発言を聞いて、年内あと2回追加もありえるとの見方が増え始めました。
トランプ大統領「利上げ良くない」
ところが、トランプ米大統領がTVのインタビューで「利上げは良くない」と発言。マーケットに突然冷や水を浴びせました。トランプ大統領に言わせると、いくら投資や減税を積み上げても、そのたびにFRBがやってきて、せっかくの努力を水の泡にするというのです。もちろんパウエル議長が「わかりました、利上げやめます」と従うわけがありませんが、景気の邪魔をしているといわれ、FRBとトランプ政権との対立を印象づけたことはマイナスです。
実は、FRBの内部にも追加利上げに慎重な意見を持つメンバーがいます。ブラード・セントルイス連邦準備銀行総裁はその一人で、「利上げを遅らせるべきだ」と発言しています。トランプ大統領に賛同しているわけではなく、ある意味その逆で、関税問題を懸念してのことです。
ベージュブック(米地区連銀経済報告)には「すべての地区の製造業者が関税への懸念を表明した」との報告が寄せられました。貿易戦争の深刻化&長期化で、年末に向けて米国経済にブレーキがかかることを予見したブラード氏は、利上げは年内あと1回で十分だと意見したのです。同様の意見は今後FRBの内部で増えてくるかもしれません。
今回の雇用統計のポイントは?
今回の雇用統計は、貿易戦争が激化するなかで、それでも米国の労働市場は力強さを保つのか、あるいは悪い影響が出はじめているのか、ということに注目が集まりそうです。
結果が予想より強ければ、「米経済はまだまだ強い」という安心感で、マーケットがドル買いに動くことも考えられます。ただしトランプ大統領は「ドル高は米国の競争力を奪う」と文句をつけていますので、上値追いには慎重になりそうです。反対に予想より弱ければ、「これダメなやつ!」となってドル/円の売りが強まるでしょう。
これまでは、NFP(非農業部門雇用者数)や平均労働賃金が予想を下回っても、マーケットは楽観的に解釈して、ドルの下落も限定的でした。しかし、今回のマーケットは逆に、悲観に傾きやすくなっているようです。
(荒地 潤)
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