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株式投資の基本「低PER銘柄は割安」を疑え。PER10倍で上がる株、下がる株の見分け方

トウシル / 2018年8月10日 8時35分

株式投資の基本「低PER銘柄は割安」を疑え。PER10倍で上がる株、下がる株の見分け方

株式投資の基本「低PER銘柄は割安」を疑え。PER10倍で上がる株、下がる株の見分け方

「低PER(株価収益率)=割安」は株式投資の常識。でも、低PERでも株価が上昇するものとそうでないものがあります。その違いは一体どこにあるのでしょうか?

 

今でも根強い「低PER」信仰

 読者の皆さんは、どのような基準で銘柄選びをしていますか?株価が割安かどうか、という切り口から投資対象とする銘柄を選んでいる方も多いと思います。

 株価が割安かどうかを示す代表的な指標が、「PER(Price Earnings Ratio)」です。株価が1株当たり予想当期純利益の何倍の水準かを表すもので、「株価収益率」と訳されます。PERの数値が小さいほど株価が割安とされます。一般的にはPERが15~20倍が適正値と考えられています。

 例えば1株当たり当期純利益が100円、株価が3,000円のA社のPERは3,000円÷100円=30倍です。1株当たり当期純利益が100円、株価が800円のB社のPERは800円÷100円=8倍と計算されます。

 単にPERの数値のみで比較すれば、A社よりもB社の株価の方が割安、と判断されます。このことは初心者向けの株式投資の教科書には必ず書いてありますし、投資情報サイトや雑誌でも「PERが10倍を切っているから割安」として投資を推奨する専門家も数多くいます。

 

「低PER=割安」なのは本当?

 しかし、不思議なことに、PERが高いA社の株価は上昇を続け、PERが低いB社の株価は全く上昇しない……という現象がしばしば起こります。なぜ、そのようなことになるのでしょうか?

 最も大きな理由は、B社は今後業績が伸びない、もしくは悪化すると投資家が予想しているからです。いくらPERが低くても業績が伸びなければ、株価はなかなか上昇しません。筆者の投資経験からいえば、業績が横ばいの銘柄の妥当なPER水準はせいぜい10倍程度です。今後業績の悪化が見込まれる銘柄であれば、10倍を大きく割り込むこともあります。

 ですから、低PER銘柄ランキングの上位のものを片っ端から買ったり、スクリーニングで低PER銘柄を探して買っても、株価が上昇しないことが多いのです。

株価が上昇する低PER銘柄の特徴とは?

 低PER銘柄の株価の動きをみると、面白いことに気づきます。株価が順調に上昇しているものと、株価がさえない動きをしているものの両方が存在しているのです。
 同じ低PER銘柄なのに、なぜ株価の動きが異なるのでしょうか?

 例えば、不動産関連株や商社株には、PERが低く、10倍を割り込んでいるものが数多くあります。これは、不動産関連株であれば景気や不動産市況、商社株であれば資源価格や為替レートといった不確定要素があるため将来の業績が読みにくく、予想とは大きくかけ離れる可能性が高いからです。そのため、PERが高くなるまで株価が買われることはなかなかないのです。

 とはいえ、そんな中でも実際に増収増益を続けている銘柄であれば、低PERであっても株価は上昇していきます。

 1株当たり当期純利益が50円→70円→90円、と推移している株であれば、PERが10倍程度までしか買われないとしても、株価は500円→700円→900円と着実に上昇していくのです。
 実際、PERが7倍程度しかないにもかかわらず、何年もの間、増収増益を続けている銘柄の株価が6年間で20倍にまで上昇した、というケースもあります。

 低PERの銘柄をみつけたら、次に業績が増収増益になっているかどうかをチェックするようにしてみましょう。

 

いくら増収増益の低PERであっても……

 では、増収増益の基調であり、かつ低PERの銘柄であれば、株価が値下がりしていても保有を続けて問題ないでしょうか? 人により考え方は違うようですが、筆者は保有を続けるべきではないと思っています。

 株価は将来の業績を織り込みながら動くものです。増収増益の予想が出ているとしても、株価が値下がりを続けている銘柄は、実際に株を売りたい人が多くいるという現れですから注意しなければなりません。

 実際、決算短信や会社四季報で増収増益の業績予想が出ているにもかかわらず、株価が下落することはよくあります。

 株価の方が業績の悪化をいち早く察知して値下がりする一方、業績予想の下方修正が発表されるまでにはかなりタイムラグがあるため、PERは低いのに株価が下落する、という現象が生じるのです。

 こうした銘柄については、増収増益予想かつPERが1桁と、どう考えても株価が割安にみえる状況で株価が天井をつけることもしばしば生じます。
 ひとたび株価が天井をつければ、その後は長期間株を保有するほど株価が値下がりし、含み損が膨らんでしまうことになります。

 そうした事態を避けるためには、低PERかつ増収増益の予想であっても、株価が上昇トレンドのときのみ保有するようにし、下降トレンドに転じたら速やかに売却する必要があります。

 いかがでしょうか。増収増益を続けている銘柄を探すこと、そして株価が下降トレンドになったら保有を避けること……。これらの工夫をするだけで、単にPERの数値のみをみて銘柄を選ぶよりも格段と投資成果が向上するはずです。

(足立 武志)

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