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貿易戦争激化で原油レンジは下抜け。対イラン制裁は買い要因だが、力不足

トウシル / 2018年8月13日 11時54分

貿易戦争激化で原油レンジは下抜け。対イラン制裁は買い要因だが、力不足

貿易戦争激化で原油レンジは下抜け。対イラン制裁は買い要因だが、力不足

8月6日~10日原油マーケットレビュー

 前週のNY原油相場は下落。米中貿易摩擦が激化することが懸念され、直近に形成していた67-70ドルのレンジをダウンブレイクした。WTI期近9月限は一時66.32ドルまで下落する場面もあった。ただし、レンジから大きく放れたとまでは言い難く、新たなステージに突入したのか、それとも一時的な下げなのかは不透明な状況。米中の通商政策への不安が後退すると、短期的に戻り圧力が強まりやすいだろう。期近のサヤ関係からは、需給の弱さが窺えるだけに、米中問題の動向に対する市場のムードの変化には細心の注意が必要である。

 米中の両国首脳が互いに譲らず、通商政策で応戦し合う状況が続いている。米政府が中国製品に対して追加関税を発動すると表明、これに対して中国政府は即座に報復措置を講じるなど貿易戦争はエスカレートの一途を辿っている。この通商摩擦が世界経済の成長失速の火種になることを市場は警戒、景気後退に伴う需要減少への懸念から原油相場は売りが優勢となった。両国の歩み寄りが見られないようだと、原油相場にとっては重石となり続ける公算大。また、貿易戦争への懸念から外為市場では新興国通貨安が進んでおり、この影響からドルが買われ、ドル建てで取引される原油に対して割高感が意識されやすい状況にあることも、売りが促される一因となっている。

 米国の対中政策は原油売りの要因となっているが、対イラン制裁は原油買いの要因。この週、米国は対イラン制裁の一部発動に踏み切った。今回の制裁により、イランと取引のある第三国の企業も対象となるため、欧州企業などがイランでの石油取引から撤退することで、イラン産原油の供給が停滞とするとの見方が下支え要因となっている。ただし、原油禁輸措置は11月からの予定であり、両国が強硬姿勢を貫くのか、それとも譲歩の姿勢を示すのか、不透明な状況にあり、サポート要因とはなっているものの上値を買い上がるほどの材料とはなっていないのが現状。

 これらのことから、米国の対外政策の進捗状況で右往左往する相場展開を余儀なくされている。サウジアラビアの7月の産油量が前月比マイナスとなったことで買いが入る場面もあったが、現在の相場の手掛かり材料は、米中貿易摩擦動向、米国の対イラン制裁動向、米国の原油在庫の増減、ドルの動きにあり、概ね米国絡みであることは明白である。このなかでも足元の市場の関心は米中貿易摩擦の行方。石油輸出国機構(OPEC)加盟国およびロシアの産油動向や中東の地政学的リスクなども相場変動要因ではあるが、市場参加者が神経質になっているのは米中の通商政策にあり、これに対して市場がどのように反応するかには注意が必要である。

 なお、サヤ構成からは弱気にシフトしていることが窺える。ブレントはすでにコンタンゴ(限月が先に行くほど価値が高くなる)に転じているが、WTIは未だバックワーデーション(限月が近いほど価格が高くなる)を形成している。しかし、期近のバックワーデーションは縮小傾向にあり、これは需給面の弱さの証左だろう。米中貿易戦争激化への懸念がより一層強まると、売り圧力が強まる可能性が高い。

 

今週の予想

  • WTI    やや弱め 65.00-69.00ドル
  • BRENT    やや弱め 70.00-74.00ドル

(CREEX LLC.)

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