日経平均、急落から株価回復への道のりは遠い?
トウシル / 2018年8月15日 7時0分
日経平均、急落から株価回復への道のりは遠い?
※今週の本連載は休載予定だったのですが、週初の国内株市場の変動を受けて臨時のレポートをお送りします。
今週の日経平均は大幅に下落して始まり、8月13日(月)の終値は2万1,857円でした。前週末比では440円安となったほか、節目の2万2,000円も割り込んでしまいました。
ちなみに、日経平均は先週から4日続落していて、その下げ幅を合わせると804円ほどになります。日々の下落状況を辿ると、18円、46円、300円、440円となっていて、直近2営業日の下げの大きさが際立っています。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2018年8月13日取引終了時点)
あらためて上の図1で直近のローソク足を確認してみても、長い陰線が「窓」空けで続いていることが分かります。また、75日移動平均線や200日移動平均線なども下抜けています。
前回のレポートでは、(1)「75日移動平均線をサポートとした狭い値動きが続き、市場のエネルギーが蓄積されつつあり、近いうちに大きな動きが出てくるかもしれない」ことと、(2)「企業業績を背景に買える銘柄が存在するあいだは、市場のムードを大きく悪化させる材料が出ない限り、相場は崩れにくい」というのをポイントとして挙げました。
実際のところ、日米閣僚級のFFR(新貿易協議)で合意に至るのが困難と見られたことや、米国とトルコの対立深化によるトルコリラ急落への警戒感などが市場のムードを悪化させる材料となってしまいました。好業績銘柄への物色は見られたものの、相場を支えきれずに株価が大きく動き出した印象になっています。個人的には、思っていたよりも動き出すのが早かったというのが正直な感想ですが、果たしてこのまま相場が崩れてしまうのでしょうか?
そこで、日経平均の中長期のトレンドを捉えてみます。下の図2は以前も紹介しました日経平均(週足)の線形回帰トレンドです。
■(図2)日経平均(週足)の線形回帰トレンド(2016年6月24日の週を起点)
週足の日経平均では、英国のEU離脱を問う国民投票が行われた2016年6月24日の週のタイミングで底を打って上昇基調となっています。
線形回帰トレンドは一定期間の値動きを一次関数の考え方を用いて表現する統計学的なテクニカル指標です。そして、この中心線を挟んで上下平行にそれぞれ1σ(シグマ)と2σの線を引きます。正確な説明ではありませんが、ボリンジャーバンドの直線版といったイメージです。
そして、中心線を挟んだ上下の1σと2σのあいだを「強気ゾーン」、「やや強気ゾーン」、「やや弱気ゾーン」、「弱気ゾーン」に区分することができますが、日経平均は直近の急落によってマイナス2σ付近に位置しています。
現時点では「弱気ゾーン」の下限で踏みとどまっているため、中長期のトレンドはまだ相場崩れておらず、一時的な下振れも想定されますが、今週末時点でマイナス2σの水準まで戻せればとりあえずオッケーということになります。
もちろん、下振れの許容範囲はあります。上昇トレンドの場合、上値と下値を切り下げながら形成されるというのが一般的なセオリーですので、直近安値を下回ってしまうとトレンド転換への意識が強くなってしまいます。目安となるのは7月につけた直近安値となり、終値ベースでは2万1,788円、取引時間ベースでは2万1,462円になります。今週末の終値がココを上回れるかが焦点になります。
反対に、日経平均が早期に反発できたとしても、ここ数カ月は「2万3,000円の壁」に阻まれていますので、不安の後退だけで本格的な戻りを期待するのはちょっと難しいかもしれません。
事実、米国の通商・外交政策は、中国だけでなく、日本、EU、ロシア、イランやトルコと、「間合い」の距離感や温度感の程度の差はあれ、その矛先は全方位的に広がっています。とりわけ、米国とトルコについては、これまでの中国などとは異なり、交渉や落ち着きどころといった微妙な「間合い」を探ることなく、お互いにファイティングポーズで一気に詰め寄ってきた印象があるため侮れない可能性があります。
また、さすがにここまで状況が複雑になると、いわゆる「米国一人勝ち」だけで市場を支えるのは厳しくなりつつあり、プラスαの買い材料が必要になってきます。そのため、当面は図1で触れたように、移動平均線(75日や200日)や、先週までもみ合っていた2万2,500円などが戻りのめどになりそうです。
(土信田 雅之)
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