相場を支える「見えない」自信と根拠
トウシル / 2018年8月21日 8時35分
相場を支える「見えない」自信と根拠
先週の国内株市場ですが、週末8月17日(金)の日経平均は2万2,270円で取引を終えました。前週末の終値(2万2,298円)と比べるとわずかに28円安ほどなのですが、週間の値幅(高値と安値の差)自体は529円とまずまずの大きさがありました。
また、下の図1を見ても、日々のローソク足が長めのものが多くなっているほか、陰線と陽線が繰り返し現れ、上げ下げの様子が目まぐるしい印象になっています。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2018年8月17日取引終了時点)
このように、陰線と陽線が交互に現れる局面は「鯨幕(くじらまく)相場」と呼ばれます。
鯨幕とは葬儀などで使われる白黒の幕のことで、ローソク足の陽線(白)と陰線(黒)の並びが、この鯨幕と形状が似ていることから名付けられました。鯨幕相場は、「相場に対する見方が強弱で分かれている状況」、「相場の手掛かりとなる材料に欠いている状況」などを意味するとされます。反対の性格を持つ線が入れ替わり出現するわけですから、ごく自然な解釈と言えます。
あらためて、上の図1で先週の値動きを振り返ってみても、株価が節目の2万2,000円台割れのところで買いが入って反発する一方で、上値は200日移動平均線がめどとなっています。
先週はトルコの通貨リラの急落をきっかけとした新興国不安や、13年ぶりの四半期減益となった中国企業の騰訊(テンセント)の決算、通商摩擦問題で膠着(こうちゃく)状態になりつつあった米中間で交渉再開に向けた動き(中国側の担当事務次官の訪米する予定)など、悪材料と好材料が入り混じっていましたし、そもそも国内株市場はお盆休みの関係で薄商いになりやすい時期でもありました。
そのため、値動きの荒さが目立った割に相場は崩れておらず、市場のムードはさほど悪化していないと言えそうです。
さらに、先週のローソク足の並びは、鯨幕相場だけでなく、「下放れタスキ」出現による売りサインを回避したという別の見方も存在します。
■(図2)「下放れタスキ」
下放れタスキとは、下落相場の中で「窓」を空けた陰線が出現し、その翌日に高寄りの陽線が続く形の事です。
大きく下落した後に強めの反発となる格好であるため、一見すると底打ちのように見えるのですが、実は下げが継続することが多いサインとされています。ただし、今回についてはさらに下値をトライするような動きにはなりませんでした。ポイントになったのは陽線の長さで、14日(火)に出現した陽線が「窓」を埋めきっています。
同様に、TOPIXでも下放れタスキが出現しているのですが、こちらは陽線が「窓」を埋めきれず、結果的に16日(木)に下値をトライする場面を見せています(下の図3)。
■(図3)TOPIX(日足)の動き(2018年8月17日取引終了時点)
下落トレンドは、一般的に上値と下値を切り下げながら形成されていくのですが、TOPIXの短期的なトレンドは16日の下値トライの出現によって、取引時間ベースの直近安値(7月5日)をも下回ってしまい、下方向への意識がより強まってしまった格好です。
他の株価指数に目を向けても、マザーズが年初来安値を更新したほか、日経JASDAQ平均も年初来安値水準に位置していますので、日経平均だけが相対的に強い点は意識しておく必要があると言えます。
では、中期的なトレンドについてはどうでしょうか?下の図4は少し期間が長めの日経平均の日足チャートです。
■(図4)日経平均(日足)の動き その2(2018年8月17日取引終了時点)
上の図4ではチャートの形状でトレンドを捉えていきます。
まず出現したのは「ダブルトップ」です。ネックラインも下抜けして、下落トレンドへ転換しつつあったのですが、反発して3度目の2万3,000円台を目指す動きとなります。
ただし、その2万3,000円台に乗せ切ることができず、大きめの「保ち合い」となります。それと同時に3度の失敗ということで、「トリプルトップ」も形成されますが、ここでも相場は崩れることはありませんでした。次に、75日移動平均線をサポートにした狭い範囲内での新たな「三角保ち合い」が2週間以上続き、これによって、市場のエネルギーが蓄積されることになりました。そして、その均衡が破れたのが先週の値動きですが、鯨幕相場や下放れタスキの回避など底堅い面を見せています。
以上のように、相場自体は何だかんだで本格的な下落トレンドへの転換を幾度となく回避していることが分かります。企業業績や日銀のETF買い余力(年間6兆円のペース)など、先行きの株高に繋がる材料がないわけではありませんが、足元では海外情勢を中心に不透明な材料の方が多く、不思議と相場を崩れさせない「見えない」自信が存在しているような印象です。
とはいえ、相場を支える力があっても、株価を押し上げる自信が感じられないのも事実です。次の焦点は「好材料に対してどこまで株価を上昇させることができるか」になると思われます。
(土信田 雅之)
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