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10月から全ての銘柄が「100株」単位に!株価への影響は?

トウシル / 2018年8月30日 8時0分

10月から全ての銘柄が「100株」単位に!株価への影響は?

10月から全ての銘柄が「100株」単位に!株価への影響は?

 今年の10月から、全国の上場企業の株式売買単位が100株単位に統一されます。これにより株価にはどのような影響があるのでしょうか?

 

10月から売買単位が100株に統一

 日本取引所グループ(JPX)のホームページを見ると、「全国の証券取引所では、2018年10月までに売買単位を100株に統一することとしています」と書かれています。

 そして、8月1日時点で、すでに100株単位の企業と、10月1日までに100株単位に変更することを開示した企業を含めると、全3,601社中、ほぼ全ての3,592社が該当します。残り9社についても、証券取引所の働きかけにより、売買単位が100株に統一される見通しです。

 以前は、売買単位が100株だったり1,000株だったり、はたまた500株、50株、1株単位と、銘柄によってバラバラでした。

 そのため、例えば1株単位の銘柄に対し間違って100株の買い注文を出してしまい、想定していたものよりはるかに多額の株を買ってしまうなどといった、誤発注のリスクも問題視されていました。

 売買単位の取り組みは10年以上にわたって行われていて、まずは100株もしくは1,000株単位への統一、そしてついに今年10月をもって、全ての銘柄が100株単位に統一されることになります。

 

売買単位の変更のみのケースと株式併合を同時実施するケース

 ところで、現時点で1,000株単位の銘柄が100株単位となる場合、まずは大和証券グループ本社(8601)などのように単純に売買単位のみを変更するケースがあります。

 大和証券グループ本社の場合は、株価600円であれば従来は1単位の購入に600×1,000=60万円必要だったのが、現在は600×100=6万円で足りるようになりました。

 住友不動産(8830)は、現状では300万円以上が必要ですが、これが10分の1の30万円台での投資が可能になります。

 一方、売買単位の変更と同時に、株式併合を行うケースも少なくありません。例えば10月1日より1,000株単位から100株単位に変更するプリマハム(2281)の場合、同時に5株を1株にする株式併合が実施されます。

 現状の株価が600円だとすると、売買単位変更および株式併合の実施前と実施後で、次のように変わります。

<現状>

株価:600円

売買単位:1,000株

最低必要投資額:600円×1,000株=60万円

<変更後>

株価:600円×5=3,000円

最低必要投資額:3,000円×100株=30万円

 このように、現状は60万円が必要だったのが、半分の30万円で投資できるようになります。森永乳業(2264)などでも5株を1株にする株式併合の同時実施が行われました。

 ただ、売買単位の変更のみで株式併合を行わなかった大和証券グループ本社のケースに比べると、投資額の低減効果は小さくなっています。

1対10の株式併合との同時実施は実質的に何も変化なし?

 そして、中には太平洋セメント(5233)シャープ(6753)などのように売買単位を1,000株から100株に変更する一方で、10株を1株にする株式併合を同時に行うケースもあります。

 太平洋セメント株の場合、変更前の株価が400円とすると、次のようになります。

<変更前>

株価:400円

売買単位:1,000株

最低必要投資額:400円×1,000株=40万円

<変更後>

株価:400円×10=4000円

売買単位:100株

最低必要投資額:4,000円×100株=40万円

 このように、せっかく売買単位を1,000株から100株にしても、10株を1株にする株式併合が同時に行われると、投資に必要な金額は全く変わらなくなってしまいます。

 

変更対象の株をすでに保有している場合の影響は?

 売買単位変更の対象となる株式をすでに現時点で保有している方は、変更により影響があるのではないかと心配しているかもしれません。でも、結論からすれば、変更前と変更後で、保有株の価値には変化はありませんので安心してください。

 例えば、現在1,000株保有しているA社の株価が500円、売買単位を1,000株から100株に変更すると同時に5株を1株に併合というケースで考えてみましょう。

<現在>

株価:500円

保有株:1,000株

時価:500円×1,000株=50万円

<変更後>

株価:500円×5=2500円

保有株:1,000株÷5=200株

時価:2500円×200株=50万円

 このように、現在と変更後とで、保有株は1,000株から200株に減ってしまいますが、保有株の価値は50万円のまま変わらないことが分かります。

 株式併合をすると、その分株価が上昇します。理論的には5株を1株にする株式併合であれば株価は5倍、10株を1株にする株式併合なら株価は10倍になります。

 ですから、株式併合により保有株数が減ったとしても心配は不要です。慌てて保有株を売却する必要はありません。

 

厳密に考えると影響はないとはいえないが…

 ただ、厳密には株価に影響が全くないとはいえません。最低必要投資額が下がることで、次のようなことが投資家の心理状態や行動として起こり得るからです。

 例えば、現在の株価600円、売買単位1,000株のB社が、売買単位を100株に変更すると同時に、5株を1株にする株式併合を実施するケースで考えてみます。
 必要最低投資額は現在の600円×1,000株=60万円から、3,000円×100株=30万円となります。

 すると、すでにB社株を保有している投資家と、B社株への投資を検討している投資家とで、次のような心理状態になるはずです。

<すでにB社株を1,000株保有している投資家の場合>

 今までは1,000株売ると全部売ることになるから売りづらかったけど、これからは200株のうち半分の100株を売ることもできる!

<B社株の投資を検討している投資家の場合>

 今までは投資するのに最低でも60万円必要だったから躊躇していたけど、これからは30万円で良くなるから、投資してみようかなあ……。

 結局、売買単位変更により必要最低投資額が低下する株の株価がどう動くかは、既にその株を保有している投資家からの売りと、その株への投資を検討している投資家からの買いとの綱引きの結果によります。事前にどう動くかを予測するのは困難です。

 

株価が低い会社が株式併合をすると株価が下がりやすくなる?

 また、株価が低く、業績があまりよくない銘柄が株式併合をすると、見た目の株価が上昇するため、心理的に空売りがしやすくなり、株価が下がる傾向があると筆者は感じます。

 例えば株価100円、1,000株単位のC株が売買単位を100株に変更するとともに10株を1株に株式併合するケースで考えてみましょう。

 株式併合により、100円だった株価が1,000円になります。業績が良くないので空売りを仕掛けようとする投資家は、株価が100円だと、「これ以上は下がりにくそうだ」と感じます。でも、1,000円の株価であれば、「まだまだ下がる余地はある」と空売りを実行しやすくなるのです。

 とはいえ、具体的にどのような影響があるかを事前に予測することは極めて困難ですし、それほど神経質になるレベルの影響は生じないと思います。「こうなる可能性もある」と頭の片隅にとどめておく程度でよいのではないでしょうか。

(足立 武志)

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