続伸の原油相場。70ドル本格上抜けは、米中通商問題の行方次第
トウシル / 2018年9月4日 12時31分
続伸の原油相場。70ドル本格上抜けは、米中通商問題の行方次第
8月27日~31日原油マーケットレビュー
前週のNY原油相場は続伸。リスク選好ムードが高まり、ドル安、株高を受けて買いが先行した。米国の原油在庫が予想以上に減少したことで、需給引き締まりを警戒する動きも買いを誘った。WTI期近10月限は一時70.50ドルまで上昇し、期近ベースとしては約1ヶ月ぶりに70ドル台を示現した。
リスクオンムードから買いが入った。米国とメキシコが北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉の2国間協議で合意、両国のNAFTA妥結を受けてカナダも交渉に参加するとの期待が広がった。通商問題を巡る問題が一部緩和したことを市場は歓迎、楽観が広がりリスク選好が強まった。安全資産とされる米国債が売られ、同じく安全資産として買われていたドルも巻き戻される格好に。株式市場もリスクオンの流れから上昇、ナスダック総合指数とS&P500指数は連日の最高値更新となった。リスク選好度が高まったことにより、リスク資産の一角とされる原油にも買い注文が集まった。
米エネルギー情報局(EIA)が発表した週間石油統計で、原油在庫が予想以上に減少したことも、買いを勢いづけた。高稼働にあったリファイナリーの稼働率は落ちたが、前週に減少した輸入量が若干ではあるがさらに落ち込み、輸出量が大幅に増えたため、原油在庫は取り崩しが進んだ格好。また、ガソリンやディスティレートなど石油製品在庫も予想外の減少となった。EIA発表前日の引け後に米石油協会(API)が発表した週間石油統計では、原油在庫が予想外の増加となっていたこともあり、EIA統計の内容はポジティブサプライズとなった。このほか、米国の対イラン制裁によるイランからの供給減少への懸念、ベネズエラの減産継続見通しなど、従来からある供給減要因も改めて買い材料視された。
これらを手掛かりに買いが優勢となり、WTI期近10月限は70ドルを上抜く場面も見られた。心理的な節目である70ドルを上抜くことで、買い気が高まるとの見方もあったため、同水準を超えた場面では上げ足を速める局面もあった。週末と月末が重なること、さらにレイバーデーに伴う3連休を控えていたこともあり、直近の戻り基調を受けて売り方のポジション整理が進んだことも相場を押し上げたとみられる。節目を上抜いたことによる踏み(売り方のロスカットオーダー)を巻き込んで、さらなる踏み上げ相場も期待できるが、需給環境からは一段高には懐疑的にならざるを得ない。米国の原油輸出入に関しては、概ねレンジ内で収束する動きが続いており、天候不順等がないことから次週統計では輸入増、輸出減の可能性は否めず。生産量の大幅な落ち込みは考え難いことからも、原油在庫は増加に転じる可能性は拭い切れない。また、リスク選好ムードが強まったとはいえ、トランプ米大統領が9月6日以降に2000億ドル規模の対中関税を課すことを表明しており、通商問題が再燃することが想定される。すでに外為市場や株式市場はこれに反応しており、原油相場もこの影響は不可避であろう。7月中旬の下げの際に一旦戻した71ドル半ばを超えるまでは、戻り高値は叩かれる公算大。ただし、この水準を上放れると、踏み上げ相場となる可能性が高い点は念頭に入れておきたい。
今週の予想
- WTI やや弱め 68.00-72.00ドル
- BRENT やや弱め 75.00-79.50ドル
(CREEX LLC.)
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