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米中間選挙カウントダウン。制裁に励むトランプに身内からジョーカー続々

トウシル / 2018年9月20日 6時0分

米中間選挙カウントダウン。制裁に励むトランプに身内からジョーカー続々

米中間選挙カウントダウン。制裁に励むトランプに身内からジョーカー続々

制裁第3弾の影響は少なく

 9月17日、トランプ米大統領は2,000億ドル相当の対中制裁関税第3弾を24日に発動すると発表しました。先週は、米国が米中貿易協議の再開を打診との米紙報道があり、米中貿易摩擦は後退かと一時楽観的な見方から円安に振れましたが、結局、トランプ大統領は発動しました。

 しかし、発表後のドル/円の動きは30銭ほど下押しした(円高)程度でした。その背景は事前にトランプ大統領がツイッターで強気の姿勢を発信していたことから、すでにマーケットでは要因として織り込み済みだったためかもしれません。

 また、上乗せする関税率が10%と、予想の25%よりも低かったことがあるでしょう。10%の追加関税率は年末まで中国の出方を見極めて25%に引き上げるようですが、第1段階で10%としたのは、柔軟な姿勢を中国に示すことによって、中間選挙までに何らかの成果を引き出したいという思惑の現れかもしれません。

 一方で、いきなり25%では米経済に与える影響が大き過ぎ、逆にマイナス要因となるため、選挙が終わるまでは10%に留めたという見方もあります。

 いずれにしろ11月6日の米中間選挙まで残すところ50日ほどになってきました。とにかくトランプ大統領にとってはこれまでの成果を高らかに謳(うた)い上げ、今後も米国民にとってその成果が続き、恩恵を享受できることをアピールする必要があります。

 

激しさを増す米中間選挙の攻防

 ところが、9月に入るとトランプ大統領の支持率を低下させるような出来事が次々と起こってきました。

 9月5日のニューヨーク・タイムズ電子版には、トランプ政権の高官が匿名でトランプ大統領を批判する論評記事が掲載されました。米新聞の論評記事は外部有識者が署名入りで書くのが原則で、匿名とするのは極めて異例の事態です。

 一方のトランプ大統領はツイッターで「反逆罪では?」とすかさず書き込みましたが、不利な状況です。9月11日にはトランプ政権内部の暴露本『FEAR(恐怖)』が発売され、異例の売り上げをみせています。

 また9月14日には、トランプ政権を巡るロシア疑惑の捜査が新たな局面に入りました。トランプ陣営の元選挙対策本部長が司法取引に応じたため、捜査は疑惑解明が一気に進む可能性があると言われています。民主党は当然、これらの弱点を突いてきます。

 今後、両党の攻防は一段と激しさが増してきそうですが、今回の米中間選挙のポイントをまとめてみます。

中間選挙のポイント

(1)米中間選挙は、4年に一度の米大統領選挙の中間にあたる年に開く選挙で、現職の大統領の2年間の政権運営に対する「信任投票」の意味合いがある。

(2)中間選挙での改選数は、上院定数100議席の3分の1(今回は35議席)、下院は435議席の全議席

(3)現在の議席数は、共和党が上院51議席、下院236議席と上下院とも過半数を握っている

(4)共和党の上院の非改選議員は42人であるため、改選35議席の内、9議席を取れば過半数を握れることから、上院は共和党が過半数を死守するとの見方が多い

(5)下院の435議席の内、共和党は236、民主党は193。共和党は19議席減で過半数(218議席)を失うことになる。「大統領が迎える最初の中間選挙では平均で32議席減らす」と言われており、過半数維持は容易ではない状況

(6)トランプ大統領の直近の平均支持率は40%。大統領就任直後と比べ、減税政策によって支持率は上昇しているが、大統領の支持率が50%を切って臨んだ中間選挙では、平均して上院で5議席、下院で40議席減らすという結果が出ている(図1参照)。低支持率は中間選挙に影響を与える可能性が高い

(7)トランプ大統領の進める貿易戦争や反移民政策などの極端な手法によって、トランプ大統領の支持率は主要州で政権発足時よりも低下している(図2参照)。例えば、イリノイ州では、中国の米国産大豆への報復関税が農家に打撃を与えていることから、民主党が議席を奪う可能性があるとの見方が強まっている。また、共和党の牙城であるオハイオ州では8月の下院補欠選挙で共和党は辛勝。政権の批判票が民主党に流れたとみられている

図1 大統領の支持率と中間選挙(下院)での与党の議席増減

図2 トランプ大統領の主要州の支持率(政権発足時との比較)

(注)調査会社モーニング・コンサルトの世論調査

 このように最初の中間選挙では与党が厳しい選挙戦を強いられると言われている環境の中で、9月に入って匿名の高官によるトランプ批判の投稿記事や、政権内部の暴露本によってトランプ氏の大統領としての資質への疑義が改めて話題になってきたことから、共和党は苦戦しているようです。

 米政治専門調査機関であるリアル・クリア・ポリティクスの最新の調査によると、民主党優位との結果が出ています。投票先を尋ねる調査(9月12日時点)で、民主党の支持率は47.6%と、共和党の支持率の39.4%を上回っています。

 米メディアの多くは下院435議席で民主党が過半数を奪還する可能性があるとみているようです。トランプ大統領は、当然この環境を自覚しているはずです。今後、ますます硬軟織り交ぜての交渉がエスカレートしてくることが予想されます。例えば、次のことが想定されます。

  •  米中摩擦悪化の一途を辿っているが、中国に対する強硬路線を転じ、協議を再開し米国優位の交渉を演出
  • 北朝鮮問題については、中間選挙までに第2回目の米朝首脳会談を開き、融和姿勢を演出
  • これまで温和姿勢だった対日貿易赤字について、農業や為替などで目に見える形で成果を演出。特に20日の自民党総裁選後、安倍首相の三選勝利を見極めた後は要警戒か
  • イランやシリアなどの中東問題に対して強硬路線を演出

 とにかく後2カ月弱の間に、米国内の批判や不満を抑え、支持を上げるために、これまでの交渉の成果を演出することが予想されます。
オセロゲームのように、ある時いっせいに黒が白に変わることも予想されるため、上記のような観点でのリスクシナリオも想定しておいた方がよさそうです。

FXセミナー福岡

(ハッサク)

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