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世界経済見通しは2年振り下方修正。IMFが警告する寒冷期の到来?

トウシル / 2018年10月10日 12時56分

世界経済見通しは2年振り下方修正。IMFが警告する寒冷期の到来?

世界経済見通しは2年振り下方修正。IMFが警告する寒冷期の到来?

先週からの為替相場の振り返り    

 先週5日に発表された米雇用統計は、失業率が3.7%と48年振りの低水準となりましたが、雇用者数は予想を下回り(ただし過去2カ月分は上方修正)、平均賃金も予想ほど加速しなかったという、強弱まちまちの結果となりました。

 しかし、米長期金利は高止まりし、この金利水準を嫌気して米株が売られ、ドル/円は株安につられて円高方向に動きました。

 さらにニューヨーク市場の後半、ドル/円がもう一段円高に動いた要因は、株安だけでなくもう一つ要因があったようです。

 その要因とは、英国とEU(欧州連合)とのBrexit(ブレグジット:英国のEU離脱)交渉について楽観的な見方が浮上し、ポンドが急騰したこと。ポンド急騰はドルから見れば、ドル安の動きとなります。そしてドル/円は、このドル安に引っ張られて円高に動いたようです。

 最近のポンドやユーロ、ポンド/円やユーロ/円はこのBrexit交渉やイタリア財政問題に翻弄(ほんろう)されている動きとなっています。政府高官から楽観的な発言が出れば、ユーロ高、ポンド高に、悲観的な発言が出れば、ユーロ安、ポンド安という動きとなっています。

 週明けには、今度は2つの要因とも先行き懸念が高まり、売り材料に転じました。ユーロ/円やポンド/円の下落とともに、ドル/円は円高となり、113円台前半の動きとなっています。しかし、このように欧州要因に引っ掻き回されて円高に動く局面もあるかもしれませんが、今は金利動向が重要な要因として働いているため、米長期金利が高止まりしている間はドル安の下押しは限定的となるかもしれません。

 

ドル/円の年間値幅はようやく10円に近づく

 ドル/円の今年の年間値幅は、114円台半ばに上昇したことによってようやく最低ラインの10円に近づきました。しかし、米長期金利の3%台上昇を受けてもこの程度。ドル/円が一段高となるためには、さらに長期金利上昇の必要があります。米長期金利の上昇の背景は、好調な米景気とジワリジワリ上昇する物価があります。

 今年は残すところ3カ月を切り、世界の投資家は、今年の利食いを考えると同時に来年の戦略を立てる準備に入ろうとしています。その際、経済要因として最も注目されるのが来年の米国の景気動向です。好調さを持続すれば、長期金利は上昇し、ドル高も持続する可能性があります。

 

IMF経済見通しは下方修正。世界経済は冷え込むか

 このコラムで何回か紹介したIMF(国際通貨基金)の経済見通しが10月9日に公表されました(下表)。これは、各国の政府や中央銀行の予測ではなく、IMFという中立的な国際機関の予測として最も注目されていて、年4回、3カ月ごとに経済見通しを改訂しています。

 今回10月時点の見通しでは、貿易戦争の影響を加味した見通しを立て、前回発表の7月時点よりも、2018年、2019年の世界の成長率をいずれも3.7%と、0.2%下方修正しました。下方修正自体は、約2年ぶりのことです。

 下方修正の背景には、米中の貿易摩擦が激しさを増し、これまで世界経済を主導してきた「世界貿易が伸び悩むと判断した」と説明。世界の貿易量の伸びは2018年が0.6%減少の4.2%増、2019年が0.5%減少の4.0%増へと引き下げています。

 また、貿易戦争の当事者である米国と中国については、関税報復合戦によって両国の2019年の成長率をそれぞれ0.2%下方修正しています。

 参考までに4月時点の予測も並べると、ユーロ圏の2018年の成長率は、4月時点から2.4→2.2→2.0%と3カ月ごとに下方修正していることが分かります。そして2019年は、今回は下方修正していませんが、2018年の成長率からさらに減速していることが分かります(2.0→1.9%)。

IMF 世界経済見通し(2018年10月)            

注:( )内は7月時点からの修正幅     

 米国の2019年の成長率見通しは、0.2%下方修正して2.5%との予測となっていますが、この数字は、9月にFRB(米連邦準備制度理事会)が予測した2019年の予測2.5%と同じ水準となっています。しかし、FRBは貿易戦争の影響を「考慮していない」と説明しています。

 IMFの方が強気な見方のようですが、IMFはさらに貿易戦争の影響を5段階分けて試算。これによると、世界経済は最大で0.8%悪化すると分析しています。米国は最大で1.0%の悪化、中国は1.6%の悪化と驚くべき数字を出しています。9月に影響の概要を発表したときよりも中国への影響度合いを大きく見ているのです。日本も最大で0.7%下振れすると分析しています。 

IMFによる米中貿易戦争の影響分析(2018年10月)

 

 このような分析を見ていると、IMFは世界経済の下振れリスクをかなり警告していることが分かります。また、貿易戦争の影響が世界経済にどの程度与えるのかは、5段階のシナリオを考えるほど不透明だと分かります。

 米中間選挙の結果によっては、さらなる不透明感が強まるかもしれません。このような状況の中では企業の設備投資も金融への投資も時間とともに慎重にならざるを得ないのではないでしょうか。好調な米景気や米長期金利の上昇はこのまま右肩上がりで持続するのでしょうか。

 先週の米株下落、今週の上海株下落は、米長期金利の上昇を嫌気しただけでなく、投資家の気迷いや慎重姿勢を先取りしている動きなのかもしれません。

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(ハッサク)

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