断ち切れるか?強気を抑え込む「踏み台」と「ハードル」の微妙な関係
トウシル / 2018年10月23日 9時4分
断ち切れるか?強気を抑え込む「踏み台」と「ハードル」の微妙な関係
先週の日経平均ですが、週末19日(金)の終値は2万2,532円でした。前週末終値(2万2,694円)からは162円安、週足ベースでは3週連続の下落です。
早速、足元の相場環境をチェックしていきたいと思いますが、今回はいつもとは違って、週足チャートから確認します。
■(図1)日経平均(週足)の動き(2018年10月19日取引終了時点)
先週は国内外の企業決算をはじめ、株価下落のきっかけとなった米国金利の動向などが注目されたほか、訪日外国人客数や米FOMC議事録、中国GDPといった経済イベントも多く控えていました。さらに、サウジアラビア記者がトルコのサウジ総領事館で行方不明となった事件や、イタリアの財政懸念なども市場の関心事となりました。そんな中で日経平均は162円安で終えたわけですが、これを「警戒すべき材料が多かった割には無難に乗り切った」と前向きに捉えて大丈夫なのかが気になるところです。
そこで、上の図1を見ると、先週のローソク足はいわゆる「十字線」に近い陽線でした。十字線は、実体(箱の部分)が短く、ヒゲ(上下に伸びた線)が長くなっている形で、一般的には迷いを示す線とされています。やはり、先ほどの警戒材料の多さの影響を受けていると思われます。
とはいえ、ヒゲに視点を向けると、下ヒゲ、つまり安値は2万2,212円で、直近安値(9月7日の2万2,172円)を上回っているほか、上ヒゲは52週移動平均線、26週移動平均線、13週移動平均線を上抜けしています。ヒゲは「揺らいだ気持ち」を表しますが、下方向は直近安値が維持され、上方向への意欲も垣間見えていることが分かります。そして、実体も52週移動平均線水準をキープしていることから、相場の下振れ警戒は残るものの、印象自体は悪くありません。
そのため、きっかけがあれば株価は戻しやすい状況と言えそうです。
次に、日足チャートで先週の値動きを細かく見て行きます。
■(図2)日経平均(日足)の動き(2018年10月19日取引終了時点)
先週の値動きは、週初の15日(月)に200日移動平均線を下方向に乖離(かいり)する陰線で始まったものの、翌16日(火)にはすかさず回復、そして17日(水)は「窓」空けで上昇して、75日移動平均線をも上抜けし、この日の高値は2万2,959円と2万3,000円台に手が届きそうなところまで上値を伸ばしました。
ただし、18日(木)はこの75日移動平均線を維持できず、週末の19日(金)は再び「窓」を空けての下落スタート、200日移動平均線も下抜けて取引が始まりましたが、その後は切り返し、結局終値では200日移動平均線乗せまで値を戻しています。
2万3,000円台を試みる場面があったこと、そして、それがダメだったとしても、サポートして意識される移動平均線が機能している点は明るい材料と言えます。
しかしながら、陽線と陰線が入り乱れて株価の上げ下げが荒っぽくなっていることや、窓空けも多くなっている点はネガティブ材料です。株価の水準が一晩で飛んでしまうなど、値動きが不安定なため、押し目買いを入れようと思っても、正直手掛けづらい面があります。
とりわけ窓空けが厄介です。実際に、上の図2を見ても多くの窓が存在していることがわかります。先週の値動きを全体として捉えると、実は「Wボトム」の形成が期待できる格好になっているのですが、まず、ネックラインとなる先週の高値(2万2,959円)を超えるには窓埋めをしなければならず、そして、仮にネックラインを超えることができたとしても、25日移動平均線までにさらに大きな窓が控えています。
10月に入ってからの急落は落ち着きを見せはじめ、次の展開に向けた「踏み台」作りが進展しているように見える一方、窓空けが多いことによって継続的な市場心理の変化がつかみにくく、肝心の株価の戻りについては、やや「ハードル」が高くなっていて、微妙な関係と言えます。
今後はこの微妙な関係を断ち切れるかが焦点になりますが、しばらく継続するのであれば、下の図3のように、HLバンドと25日移動平均線の空間が想定レンジになると考えられます。
■(図3)日経平均(日足)のHLバンド(2018年10月19日取引終了時点)
今週の相場は、先週のイベント通過による一服感ムードで迎えますが、引き続き、日米企業の決算への反応が中心の展開となりそうです。とりわけ、米国ではこれまでの相場のけん引役だったハイテク企業の決算が今週発表されます。
具体的には、アマゾンやアルファベット(グーグル)、マイクロソフトなどが挙げられますが、これらの銘柄は先週、決算発表を前に売られる場面が目立っていましたので、好調な決算が発表されれば、株価は素直に上昇しやすいと思われます。
もちろん、米中関係や、中国経済、サウジ情勢、欧州動向、米金利動向などの懸念材料は健在ですが、前回と同様、本格化した日米企業の決算動向が良い流れを作れるかがカギになりそうです。
(土信田 雅之)
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