米中間選挙後、トランプは「豹変」するか?ベストシナリオとワーストシナリオ
トウシル / 2018年11月6日 7時7分
米中間選挙後、トランプは「豹変」するか?ベストシナリオとワーストシナリオ
いよいよ世界が注目する重大イベント、米国の中間選挙実施へ
今日(11月6日)、米国で中間選挙が実施されます。焦点は、トランプ大統領の共和党が、上院・下院それぞれで過半数の議席を維持できるか。事実上、米国民による、トランプ大統領の信任投票となります。選挙結果は、日本時間で7日午後に判明する見込みです。
中間選挙の結果次第では、トランプ政権の政策実行力に大きな影響が出ます。共和党が予想以上に勝てば、大統領の権限は強くなり、思い通りに政策を実行しやすくなります。対抗勢力の民主党が勝てば、大統領の政策実行が難しくなります。
結果が判明する7日午後には、株式や為替が大きく動く可能性があり、注意を要します。選挙は水物で、直前の予想はよく外れますが、現状の市場コンセンサスは以下の通りです。
【1】市場が想定するメインシナリオ
上院では、共和党が過半数を維持。下院では、民主党が過半数を奪還。
【2】共和党が予想以上に勝つシナリオ
上院・下院ともに、共和党が過半数を維持。
【3】民主党が予想以上に勝つシナリオ
上院・下院ともに、民主党が過半数を奪還。
直近に実施されている各種世論調査から、メインシナリオは【1】のようになっています。最初、民主党が支持率で大きくリードしていましたが、最近になって、共和党が急速に支持率を回復。今、両者の支持率は僅差(きんさ)で拮抗(きっこう)しています。それを受けてのコンセンサスです。
ただ、今の流れを受けて、共和党がさらに優勢になっているとの見方もあります。シナリオ【2】もあり得る、との見方が少しずつ増えているところです。
2016年の米大統領選では、各種世論調査がトランプ大統領の敗北を示唆していました。ところがふたを開けてみると、結果はトランプ大統領の勝利でした。なぜ、世論調査は当たらなかったのでしょうか?
世論調査は、幅広い層に分散して実施していますが、それでも一定の偏りがあることは否めません。トランプ大統領を支持している層には、「このような世論調査に答えない人」が多かったと考えられます。今回の世論調査にもそのような偏りがあるかもしれません。
そう考えるならば、世論調査の支持率が拮抗している今は、実質的には、共和党が優勢にあると考えるべきかもしれません。
したがって、マーケットでは【1】をメインシナリオとしつつ、【2】のサプライズ(驚き)もあり得ると見ています。【3】が起こる可能性は、かなり小さいと考えられます。
選挙結果が出た後、株・為替はどう動くか?
メインシナリオ通り【1】の結果ならば、サプライズはなく、マーケットの反応は限定的でしょう。ただし、【2】または【3】の結果ならば、サプライズです。株、為替が大きく動く可能性もあります。
あくまでも市場コンセンサスですが、共和党が予想以上に勝つ【2】ならば、株高、ドル高(円安)になり、民主党が勝つ【3】ならば、株安、ドル安(円高)になると、見られています。
ただし正直、事前のコンセンサスはよく外れます。【2】でも株安になり、【3】でも株高になることは十分あり得ます。11月7日(水)の午後に判明する結果と、市場の反応については、8日(木)朝のレポートで分析します。
トランプ大統領はイベント通過後に、しばしば「豹変」。今回は?
選挙結果以上に注目されるのは、選挙後のトランプ大統領の発言です。一般的には、共和党が予想以上に勝てば、貿易戦争をさらにエスカレートさせ、共和党が負ければ、対外的な強硬策を続けにくくなると、考えられています。ただし、私は、トランプ大統領がこのイメージを裏切る可能性も想定しておいた方が良いと考えています。
たとえば、共和党が予想以上に勝ったにもかかわらず、対外的に突然、融和姿勢を打ち出すといったことがあるかもしれません。過去のやり口からは、そうした豹変(ひょうへん)がたびたび観察されています。
簡単に過去の「豹変」を振り返ります。
2016年11月:トランプ大統領による、大統領選の勝利宣言
大統領選挙期間中に、トランプ氏は「イスラム教徒の米国への入国禁止」、「メキシコとの国境に壁を建設」、「中国からの輸入品に45%の関税をかける」といった過激発言を繰り返していました。そのため株式市場では、トランプ氏が当選すると株が暴落するというコンセンサスができあがっていました。
ところが、トランプ氏の勝利宣言は美しい言葉で飾られており、株式市場にフレンドリーな内容でした。
<2016年11月のトランプ氏「勝利宣言」抜粋>
・すべての共和党、民主党の党員に対して、米国の国民として団結することを訴えたい。
・すべての国と共通のグラウンドを持ち、良好な関係を築いていきたい。
・高速道路、橋、トンネル、空港、学校、病院といった社会インフラを再建する。インフラ再建で何百万人の雇用を生み出したい。
トランプ氏の豹変を受けて、2016年11~12月には、「トランプ・ラリー」と呼ばれる株高・ドル高が進みました。
トランプ大統領の経済政策
大統領選期間の発言では、トランプ大統領は低所得者層の味方で、大企業や富裕層に厳しいイメージでした。ところが、実際にやったことはその逆でした。大規模減税では、大企業・富裕層に大いなるメリットを与えました。その財源として、低所得者向けの給付カットを行いました。
これまでの共和党大統領と異なる異端児と見られていましたが、実際はきわめて資本主義色の強い、伝統的な共和党の政策を実行してきたと言えます。米国株式市場は、トランプ大統領の「豹変」を好感して、大きく上昇しました。
EUとの通商交渉
徹底的に戦う姿勢を見せながら、ある程度、EU(欧州連合)側の譲歩を得られるメドがたつと、一転して友好的な姿勢に転じました。
日本との通商交渉
徹底的に戦う姿勢を見せておいて、突如友好的になり、また厳しい姿勢を見せるなど、ころころと態度を変えています。
北朝鮮との外交交渉
明日にも米国から先制攻撃を仕掛けるような姿勢を見せておいて、突如、米朝首脳会談に応じる豹変ぶりを見せました。
このように、トランプ大統領は、いい意味でも悪い意味でも、「豹変」を繰り返してきました。中間選挙の結果が出たあと、また豹変することはないのでしょうか?
ベストシナリオは以下の通りです。共和党が予想以上の勝利を収めた後、トランプ大統領が豹変して、「中国との交渉で融和姿勢を見せる」ことです。トランプ大統領の強いリーダーシップの元で、米中関係が改善に向かう期待が出れば、世界的な株高につながるでしょう。
ただし、ワーストシナリオも考えることはできます。共和党が敗北し、指導力を失ったトランプ大統領が「対外強硬策をさらに強める」シナリオです。可能性は低いと思いますが、想定はしておきます。
以上、結論のない話で恐縮ですが、さまざまな可能性に対し、柔軟に対応できるように、心の準備をしておく必要があると思います。
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