円安は追い風、ただし中国景気が逆風か
トウシル / 2018年11月13日 7時51分
![円安は追い風、ただし中国景気が逆風か](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_17807_0-small.jpg)
円安は追い風、ただし中国景気が逆風か
円安が進んだわりには、企業業績の伸びに勢いがない
9月中間決算の発表が終盤に入っています。これまでの発表を総括すると、円安が進んだわりには物足りない決算と言えます。上半期が好調でも下半期に強気になれず、通期の業績予想を上方修正しない企業が多くなっています。中国景気が減速している影響が日本の企業業績にも影響を及ぼしつつあります。
東証1部3月期決算、主要841社の連結純利益(前期比変化率):2016年3月期~2019年3月期(予想)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/1/-/img_b16db0bddffc516fe6d29d9f632d453779531.jpg)
過去、私が日本の輸出企業から聞いた話を総括すると、業績に影響を及ぼす重要なマクロ要因が3点あります。重要な順に言うと、
(1)米国景気
(2)中国景気
(3)為替
です。今上期(2018年9月期)の投資環境を見ると、(1)米景気好調、(3)円安進行が追い風の一方、(2)の中国景気の減速が逆風となっています。
ドル円では円安が進んでいるが、他の通貨に対しては円高が進行
今年の日本の企業業績にとって、対ドルで円安が進んでいることは追い風です。以下の通り、今年は、3月に一時的に円高が進んでいました。そのため、今期(2019年3月期)の業績予想をたてる際、日本の輸出企業は1ドル105円など、円高を前提に予想をたてていました。
ドル/円 為替レートの動き:2018年1月1日~11月12日
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/9/5/-/img_95d76d722af36d955a86f053e9f7434d34350.jpg)
ところがその後円安が進んだため、為替は以下の通り、今期業績予想を上方修正する要因となりました。
ドル/円平均為替レートの推移:2017年3月期~2019年3月期(2018年11月12日まで)
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/d/-/img_bd352d5eb724e40ddc724284017bcfe332089.jpg)
過去3年を振り返ると、ドル/円為替レートは、1ドル=108~111円で安定しています。一時的な円高・円安を除けば、為替が日本の企業業績に与える影響は小さくなっています。
今期の為替は対ドルでは円安が進んでいますが、他の通貨(人民元・ユーロ・その他新興国通貨)に対しては円高が進んでいます。ドルが独歩高になっているためです。ドル以外の通貨に対して円高が進んでいることは、日本の企業業績にマイナスとなっています。
今期の連結純利益(会社予想)の上・下方修正額が大きい企業
上半期が好調でも、下半期に不安を持つ企業が増えています。その結果、円安が進んだわりには、通期(2019年3月期)業績予想を上方修正する企業が少なくなっています。以下に上・下方修正額の大きい企業を挙げます。
今期(2019年3月期)の連結純利益(会社予想)の上方修正額が大きい14社:11月9日時点
NO | コード | 銘柄名 | 上方修正額 |
---|---|---|---|
1 | 6758 | ソニー | 2,250 |
2 | 7203 | トヨタ自動車 | 1,800 |
3 | 5020 | JXTGホールディングス | 1,200 |
4 | 7267 | 本田技研工業 | 1,050 |
5 | 4502 | 武田薬品工業 | 505 |
6 | 8001 | 伊藤忠商事 | 500 |
7 | 8058 | 三菱商事 | 400 |
8 | 5019 | 出光興産 | 370 |
9 | 6981 | 村田製作所 | 300 |
10 | 8031 | 三井物産 | 300 |
11 | 4188 | 三菱ケミカルホールディングス | 290 |
12 | 1951 | 協和エクシオ | 232 |
13 | 3407 | 旭化成 | 200 |
14 | 6857 | アドバンテスト | 182 |
単位:億円
出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成
上方修正を素直に評価できるのは、ソニー・武田薬・村田製作所・三菱商事・三井物産・アドバンテストなどです。一時的要因によって、上方修正となっている企業は評価できません。
自動車(トヨタ・ホンダ)の上方修正額は大きいが、円安が進んだわりには物足りないと言えます。米国での販売苦戦が影響しています。トヨタの販売車種構成が改善していること、ホンダの新興国での二輪車販売が好調であることは評価できます。それでも今後、貿易戦争でダメージを受ける可能性があることも考慮すると、自動車株は、積極的に買いにくい環境が続きます。
石油精製(JXTG・出光)も、上方修正の上位に出ていますが、評価はできません。これは、今期の原油価格が予想以上に上昇した効果によるもので、一時的要因です。保有する原油在庫に評価益が発生します。原油価格は、足元大きく下がっており、これは下半期の利益の押し下げ要因となります。
今期(2019年3月期)の連結純利益(会社予想)の下方修正額が大きい14社:11月9日時点
NO | コード | 銘柄名 | 下方修正額 |
---|---|---|---|
1 | 6366 | 千代田化工建設 | ▲ 1,115 |
2 | 7270 | SUBARU | ▲ 530 |
3 | 5938 | LIXILグループ | ▲ 485 |
4 | 7003 | 三井E&S | ▲ 470 |
5 | 9101 | 日本郵船 | ▲ 350 |
6 | 8035 | 東京エレクトロン | ▲ 330 |
7 | 7733 | オリンパス | ▲ 330 |
8 | 7261 | マツダ | ▲ 300 |
9 | 9831 | ヤマダ電機 | ▲ 295 |
10 | 9107 | 川崎汽船 | ▲ 270 |
11 | 9502 | 中部電力 | ▲ 250 |
12 | 9437 | NTTドコモ | ▲ 250 |
13 | 8848 | レオパレス21 | ▲ 200 |
14 | 7242 | KYB | ▲ 189 |
単位:億円
出所:各社決算短信より楽天証券経済研究所が作成
下方修正を発表した企業には、構造的に利益が悪化している企業が含まれます。海外プラント事業の採算悪化から、千代田化工建設は予想以上に大きな下方修正となりました。海運(日本郵船・川崎汽船)も、構造的な不振が続いています。
SUBARU・レオパレス21・KYBなど、不祥事に関与した企業も、収益が悪化しています。
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