楽天DI2018年11月:「NISA」「つみたてNISA」どう使っている?
トウシル / 2018年12月7日 15時11分
楽天DI2018年11月:「NISA」「つみたてNISA」どう使っている?
はじめに
今回のアンケート調査は11月26日(月)~11月28日(水)の期間で行われました。
2018年11月末の日経平均株価終値は2万2,351円となり、月間ベースで上昇に転じて取引を終えました。前月末終値(2万1,920円)からの上げ幅は431円です。
改めて11月の国内株式市場を振り返ってみると、日経平均の値動きは、上旬の上昇から中旬の下落。そして下旬の上昇と、上げ下げを繰り返す格好となり、いまひとつ方向感が定まらない展開でした。
月初は、月末に開催されたG20(20カ国・地域)首脳会議のタイミングに合わせて米中首脳会談が予定されたため、貿易戦争緩和への期待が高まって、株価は戻り基調をたどっていました。ただ、その後は会談への期待が一服したことや、アップル株を中心とする米国のハイテク・IT銘柄が軟調な推移となったことで米国株市場が下落。日本株もツレ安となる場面が目立つようになりました。そして、月末にかけては、再び貿易戦争緩和への期待や米国金利引き上げの打ち止め感などが相場を支え、持ち直しました。
今回のアンケートは、2,900名を超える方からの回答を頂きました。日経平均の見通しDIは、11月の株式市場が前月の急落相場から落ち着きを見せていたこともあり、強気には転じてはいないものの、前回調査よりは改善傾向を示す結果となりました。為替の見通しについても同様に、年末相場に向けて小休止の印象となっています。
今月の質問「NISA・つみたてNISA」
楽天証券経済研究所 ファンドアナリスト 篠田 尚子
NISA(ニーサ:少額投資非課税制度)とは、毎年一定金額内の範囲で金融商品に投資し、利益が出た場合、通常20.315%かかる税金が非課税になるという口座です。
NISAには、2014年から始まった従来型の「一般NISA」と、2018年から新たに始まった「つみたてNISA」の2種類があります。両者の大きな違いは、非課税となる期間、年間上限額、そして、対象商品の3点です。
一般NISA…年間120万円×5年間で、計600万円の上限額が設けられている。主な対象商品は、株式と投資信託。
つみたてNISA…年間40万円×20年間と、長期にわたって制度を利用でき、最大上限額は800万円。ただし、対象商品は、金融庁が定めた要件を満たす投資信託に限定されていて、株式は対象外。
[今月の質問1] 2018年にNISA、つみたてNISAをしましたか。
2018年にNISA、つみたてNISAをしましたかとの問いに、NISAをしていると回答された割合は52.2%、つみたてNISAをしていると回答された割合は27.8%で、両者を合計すると8割の回答者がNISA制度を既に利用されていることが分かります。
[今月の質問2] NISA口座はどこで開設しましたか。
NISA口座はどこで開設しましたかとの問いには、実に8割弱の回答者がネット証券会社を選択しています。ネット証券でNISA口座を開設した理由について、「ポイント投資ができる」「iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)をはじめたついでに」などのコメントをいただきました。
一般NISAとつみたてNISAは、ともに20歳以上で日本に住民票がある方なら誰でも口座を開設できます。ただし、両制度を併用することはできず、年ごとにいずれかを選択する必要があります。また、開設可能な口座は、1つの金融機関にて1人1口座と決められています。
そこで、一般NISAとつみたてNISA、それぞれを選んだ1番の理由についてお聞きしたところ、
[今月の質問3] NISAをしている方にお伺いします。NISAを選んだ一番の理由を教えてください。
[今月の質問4] つみたてNISAをしている方にお伺いします。つみたてNISAを選んだ一番の理由を教えてください。
一般NISAは、つみたてNISAができる前からNISAをしているが41.6%、つみたてNISAは、非課税となる期間が長いが70.8%で、最も多い回答でした。2番目に多かった回答は、いずれも投資対象商品に関する内容でした。一般NISAは、「IPO銘柄の売買が可能」「非課税なので株式投資の練習の場として利用している」など、株式投資経験がある方からのコメントを多くいただきました。
一方、つみたてNISAは、「初めてであまりわからないため」「手持ちの資産が少なくても、毎月少額から積み立てられるため」など、制度の趣旨に沿った、投資初心者の方からのコメントが目立ちました。
「一般NISAとつみたてNISA、どちらを選ぶべきか」という点については、手元に貯金があり、すぐに120万円分を投資に回せるという方以外は、「つみたてNISA」でコツコツと投資信託の積み立てをした方が非課税枠を無駄にしないで済みます。
というのも、NISAは制度上、非課税枠の「繰り越し」と「再利用」ができないからです。一般NISA、つみたてNISAともに、非課税額を満額使用しなかった場合でも、未使用分を翌年に繰り越すことはできません。例えば、年間の非課税額の上限が120万円の一般NISAで、12月末までに100万円分しか投資信託や株式を購入しなかった場合、残りの20万円は放棄することになります。翌年に繰り越すこともできません。
また、保有する投資信託や株式を途中で売却することは自由ですが、売却相当分が復活するわけではないので、枠の再利用もできません。
反対に、年間120万円の非課税枠を使い切れそうな方、または、いずれ株式投資にチャレンジしてみたいという方は「一般NISA」を選ぶと良いでしょう。
日経平均の見通し
楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之
見通しの改善傾向も警戒感は拭えず
今回調査における日経平均の見通しDIの結果ですが、1カ月先DIはマイナス0.44、3カ月先DIがマイナス5.18となりました。前回調査の値がそれぞれマイナス28.20とマイナス4.55でしたので、1カ月先が大きく改善する一方で、3カ月先については微妙に悪化しています。
全体としては、「目先は多少の安心感はあるものの、先行きについてはまだ楽観できない」という心理が垣間見える結果と言えます。実際に、回答の内訳の円グラフでは、中立派が多数を占める中、強気派と弱気派が鍔迫り合い(つばぜりあい)をしているようにも見えます。
今回のアンケート実施期間中(11月26~28日)の日経平均は株価を戻す動きを見せていましたが、株価上昇の背景にあるのは、直近の株価下落によって値頃感が出てきたことに加えて、「米中首脳会談で貿易戦争問題に何かしらの進展があるのではないか」、「FRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策スタンスが市場に優しい方向に傾くのではないか(利上げの打ち止め感)」という、二つの期待感が挙げられます。
今年最後となる12月相場は、その注目イベントである米中首脳会談を終えて迎えたわけですが、月初1日の日経平均は前日比で200円を超す上昇となりました。ひとまず会談の結果を好感する初期反応で、年末相場に向けて幸先の良いスタートだったといえます。
会談の具体的な内容についてはトウシルでも発表していますが、少なくとも、交渉が破談して貿易戦争が激化してしまうのを回避できたことと、来年1月に予定されていた2,000億ドル相当分の中国製品に対する関税率の引き上げを90日間猶予して時間を稼いだことが評価されたと考えられます。
とはいえ、今回の会談の結果は、米中関係が改善に向けて大きく進展したわけではない点には注意が必要です。確かに、いくつかの分野については協議が開始される見込みであるほか、中国側による関税引き下げなどは早い段階で実施されそうです。しかし、すでに発動されている中国製品への追加関税は現状のままですし、「中国側がどこまで譲歩できるか、それに対して米国側がどこまで妥協するか」という構図は残されたままです。
今後も、90日間の猶予の間に、要人発言や思惑などが絡んでムードの好転と悪化が繰り返される可能性があり、今回会談の結果を好感する買いの賞味期限が思ったよりも短くなるかもしれません。
また、米国の金利引き上げペースの鈍化についても、利上げに対する視点が、「過熱する米国景気を抑制する利上げ」から、「世界景気を懸念する故の利上げ見送り」に変わってきているため、今までの「適温相場」のときのように株価が上昇しない展開もあり得ます。
そのため、今回のDIの結果は1カ月先の大幅改善よりも、3カ月先の微妙な悪化の方が実は重要なのかもしれません。
為替DI:円高見通しが減る、12月は円安を期待?
楽天証券FXディーリング部 荒地 潤
楽天DIとは、ドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円それぞれの、今後1カ月の相場見通しを指数化したものです。DIがプラスのときは「円の先安」見通し、マイナスのときは「円の先高」見通しを意味します。プラス幅(マイナス幅)が大きいほど、円安(円高)見通しが強まっていることを示しています。[図-1]
「12月のドル/円は円安、円高のどちらへ動くと思いますか?」という質問に対して、10月末の水準(113.55円)によりも、12月は「円安になる」と答えた投資家は全体の約33%を占めました。反対に「円高になる」は最も少ない約27%、残りの約40%は「動かない(わからない)」という回答でした。10月末に比べると円高派が9.9ポイントも減ったのが今回の特徴です。[図-2]
円安見通しから円高見通しを引いたDIは5.92で、1カ月で15ポイント以上プラスに振れました(前回▲9.50)。個人投資家の円高見通しが和らいだことが明らかです。
FRBのパウエル議長は、10月の講演では、「米経済の見通しは極めてポジティブ」と発言。金融政策に関しては「まだ中立的な金利水準には遠い(したがって利上げ余地はまだ十分にある)」との見解を示しました。そしてドル/円は、1年ぶり以上の高値となる114.55円まで上昇しました。
ところが今月になってドル高への安心感が揺らぎはじめたのです。そしてパウエル議長が11月に行った講演では、FRBの現在の政策金利は、中立水準よりかなり下、から「わずかに下回るレベル」と10月の見解を修正したことで、これは利上げ休止のサインではないかと皆が浮足立ちました。
パウエル議長の発言は、意図せずマーケットに過剰な期待感を抱かせてしまったことの反省であって、米経済の成長見通しを後退させたわけではない、という解釈に落ち着きました。しかし、クラリダFRB副議長は「米国の金融政策は世界経済の動きを考慮していく必要がある」とも指摘しています。グローバルで景気が減速する中で、米国だけが利上げを続けることはないのです。
FRBは、来年も四半期に1回、計4回利上げするというのが現在のメインシナリオになっています。ただし、強い米景気に見合った金利を当てはめるというより、すでに過熱状態となっている経済がはじけてしまわないように利上げする、というのがFRBの見解。その辺のニュアンスにマーケットとの間で微妙な温度差があるように感じます。
いずれにしても、米国が永遠に利上げを続けるわけではありません。サイクルとしてはすでに終了に近付いているのではないでしょうか。パウエル議長は、今後の利上げは「経済データ次第」と述べています。
今後、投資してみたい金融商品・今後、投資してみたい国(地域)
楽天証券経済研究所 コモディティアナリスト 吉田 哲
今回は、毎月実施している設問「今後、投資してみたい金融商品」で、「国内株式」「外国株式」と回答したお客さまの割合に注目しました。
図:「今後、投資してみたい金融商品」で「国内株式」(上)と「外国株式」(下)と回答したお客さまの割合
2018年11月のアンケート調査では、設問「今後投資してみたい金融商品」において、アンケート回答者全体の58.94%の方が「国内株式」を、31.2%の方が「外国株式」を選択しました(当該設問は複数回答可で、選択肢は他に投資信託、国債、金などがあります)。
これまでの経緯から、国内株式を投資してみたい金融商品と選択する人の割合が増加するのは、災害からの復興などをきっかけとした“消費拡大”、輸入物価の値下がりに貢献する “円安”、そしてアベノミクスなどの“政策的なサポートによる株高”が顕著になるタイミングと言えます。
ただ、ここ数カ月は下落後、横ばいで推移しており、2018年11月は58.9%と、過去最低となった2018年10月の57.4%に匹敵する水準となりました。米中貿易戦争の激化懸念が国内株式への投資に対する温度感を低下させているとみられます。
一方、「外国株式」ですが、回答者の割合こそ国内株式の半分程度ですが、2016年後半から上昇傾向にあります。この2016年後半はトランプ米大統領が大統領選挙で当選したタイミングであることから、トランプ氏の当選とその後の振る舞いが、外国株式を今後投資してみたい金融商品とする人の割合に影響した可能性があります。
“決められる大統領”と“決められない首相”という構図が、顕著に投資してみたい金融商品のアンケートの結果に表れているのかもしれません。
「国内株式」に今後投資してみたい金融商品とする人の割合は、今後反発に向かうのか、反発に転じるのであれば何がきっかけでどのようなタイミングなのか、引き続き注目していきたいと思います。
この記事執筆者の連載
ファンドアナリスト 篠田 尚子 最新記事「投資信託って何がいいの?初心者でもわかる投資のイロハ」
シニアマーケットアナリスト 土信田 雅之 「テクニカル風林火山」
FXディーリング部 荒地 潤 「毎ヨミ!為替Walker」
コモディティアナリスト 吉田 哲 「週刊コモディティマーケット」
(楽天証券経済研究所)
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