【永久保存版】後編:株価データで振り返る平成の30年・騰落率ランキング
トウシル / 2018年12月14日 14時30分
【永久保存版】後編:株価データで振り返る平成の30年・騰落率ランキング
株価データで振り返る平成の30年:後編は、10年ごとに値上がり率、値下がり率を見る騰落率ランキングです。
騰落率ランキング:平成元~10年
平成元(1989)年~10(1998)年・東証1部値上がり率ランキング
平成元(1989)年から平成10(1998)年の10年間は、株式市場にとって、いばらの10年。日経平均株価は、平成元年の3万8,915円から平成10年の1万3,842円へ、ほぼ3分の1になった期間です。悪地合いの環境下にあって、10年で2倍になった銘柄すら11銘柄しかなかったわけですが…目立つのは電子部品株や半導体株の健闘です。
これについて当時を知る市場関係者は「携帯電話の進化や液晶テレビの登場など、新しいハードの誕生がその基幹部品を作る日本メーカーの評価につながった。それまでの電子部品や半導体株は、ハードの付随的な存在だった。ただ、そうした日本製の部品なしではハードも作れない。そうした理解が進み、日本のハイテク株の地位が引き上がった10年になったと言える」と振り返っていました。
平成元(1989)年~10(1998)年・東証1部値下がり率ランキング
値下がりランキングの顔ぶれについて、これを見た市場関係者からは「キーワードは『後処理』だね」と指摘されました。
平成に入ってからの数年は、金融業界は不良債権処理に苦しめられ、株式市場でも仕手系銘柄の後処理、証券業界もバブルの後処理に追われました。
値下がりトップ20の大半が、何らかの後処理で説明がつく銘柄。
なお、値下がりトップの新生銀行は、旧日本長期信用銀行。1998年10月に経営破綻し、政府に一時国有化されました。四捨五入した騰落率が▲100%になっているのはそのためです。
騰落率ランキング:平成10~20年
平成10(1998)年~20(2008)年・東証1部値上がり率ランキング
平成元年→10年の値下がり率トップ銘柄である新生銀行が、平成10年→20年は値上がり率トップに。2004年2月に東証1部に再上場を果たしたことで異常値になっています。
この特殊要因を除けば、この10年を象徴するのが2位のヤフーでしょう。ある市場関係者は「平成10年といえばITバブルの萌芽期。そのシンボルが1997年11月に上場したヤフーだった」と振り返ります。
当時を知らない私にとって理解に苦しむ話ですが、1株単位の銘柄も多かった当時(平成30年の今年100株単位に完全統一されています)、最低単位が1株単位だったヤフーの株価は「1株=1億円」なる世界が現実にあったそうで…。
ヤフーの株価は、2000年のITバブル時に「1億6,790万円」という史上最高値をつけました。これ、仮に100株単位だったとしても、1株「1,679,000円」と表示されるわけですもんね。ありえへんの世界(笑)…。
ちなみに今の最大の値がさ株は、1株「57,860円」のキーエンスです。
その1株=1億6,790万円なる値段をつけたヤフーも、その後に何度も株式分割をしました。100株単位になったこともあり、分割を考慮した当時の最高値は1株819.8円に計算し直せます。そう考えると、ヤフー株(12月10日終値317円)というのは、下がったとはいっても、ピーク時から6割下げた程度と言えるのかもしれませんね。
その他では、厚生労働省主導でジェネリック医薬品の普及が進められたことで関連の製薬メーカーがランクイン(4位の日医工、17位の沢井製薬)。
また、平成11(1999)年に東証1部に昇格したファーストリテイリングが3位、ゼンショーHDやヤマダ電機などがテンバガーを達成しており、リーマン・ショックの逆風下で「小売りの勝ち組」が気を吐いたようです。
平成10(1998)年~20(2008)年・東証1部値下がり率ランキング
値下がり率ランキングに入る銘柄に関しては「不祥事や著しく業績が悪化した銘柄が多いという印象」と、ある市場関係者は口にしていました。例えば、5位のアイフルが象徴的でしょう。上場廃止になっているため、このランキングには含まれていませんが、ノンバンク最大手の武富士が2010年9月に経営破綻。貸金業法の改正(総量規制)の影響が直撃しました。「どうする、アイフル~」のCM、よく流れてましたよね、当時…。
騰落率ランキング:平成20~30年
平成20(2008)年~30(2018)年・東証1部値上がり率ランキング
やっと、見慣れた銘柄が多くなりましたね。最近10年の値上がり率トップ20になります。この10年は、リーマン・ショックのどん底からの10年。はい上がった銘柄、新しいビジネスモデルで新産業の先駆者になった銘柄が多くみられます。
東証1部銘柄の値上がり率トップは、ジンズなんですね(意外では?)。安売りメガネでシェアを伸ばし、2006年8月に今のジャスダックに上場。ただ、リーマン・ショックのあおりを受け、平成20年がジンズにとって経営のどん底でした。そこから立て直せたきっかけが、業界の常識を壊したこと。2009年にレンズの追加料金無料という価格体系を導入したことが転機になったと言われています。
それにしても、この10年の値上がり率上位群はよく上がってます。しかも、GMO-PGやモノタロウ、カチタスなど、今なおアナリストが高く評価する銘柄も多い。こちらについて、ある市場関係者からは「よく上がっているけど、こんなに上がった後だから。これからの株価は…って思う部分はあるね」と冷静な指摘をいただきました。
平成20(2008)年~30(2018)年・東証1部値下がり率ランキング
不祥事や業績の著しい悪化といった個別要因が、これまで見てきた10年間では値下がりの背景でした。ただ、最近10年間は完全に違いますね。セクターでかなり強い特徴が出ています。
例えば、2011年3月の東日本大震災後(原発問題)に電力株神話が崩壊したこと、日銀のマイナス金利導入による地銀株の全面安が止まらないこと、構造改革の遅れによる海運株の安値更新―など。この10年でディフェンシブ株の定義が変化し、業績や配当が安定していることより、ボラティリティが低いことが重視されるようになりました(「最小分散」という概念が機関投資家の間で大流行)。
まとめ:株価データで一挙に振り返る平成の30年
いかがでしたか。平成の株式市場のヒストリーを駆け足で(雑なだけ?)振り返りました。
改めて感じたのは、平成の入り口(平成元年)で未曾有の資産運用バブルが起きていたため、その後始末に時間を要した時代だったのではないかということ。これは、平成ラストの今にも通じます。
平成の終盤を彩ったのは、間違いなくアベノミクス相場(2013年~)。2013年に、外国人が年間15兆円という過去最大の買越額を記録しました。ここにきて株価が低迷しているのも、この後始末に苦しんでいるためと言えるのはないでしょうか。
平成の次の新しい時代に、あまり遺恨を残さないように…これを願うばかりです。まずは、官製相場からできるだけ早く卒業したいところです。
(岡村 友哉)
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