米0.25%利上げ:期待ほどハトでないパウエル会見嫌気し、NYダウ下落
トウシル / 2018年12月20日 7時49分
米0.25%利上げ:期待ほどハトでないパウエル会見嫌気し、NYダウ下落
FRBが0.25%利上げ実施。FOMC声明文とパウエル会見を嫌気し、NYダウ下落
19日(日本時間では20日午前4時)、米国の金融政策を決めるFOMC(連邦公開市場委員会)の結果が発表されました。米国の中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)は、0.25%の利上げを実施。具体的には、2.00-2.25%であったFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導水準を、2.25-2.50%に引き上げました。
米政策金利(FF金利)の推移:2000年12月~2018年12月
0.25%の利上げ実施を市場はほぼ確実視していたので、サプライズ(驚き)はまったくありませんでした。
ただし、利上げ後に発表されたFOMC声明文とパウエル議長発言が、「ややタカ派」(利上げに積極的)ととられたことから、NYダウは前日比、351ドル安の2万3,323ドルと下落しました。FOMC声明文とパウエル発言は、前回の利上げ時(9月)と比べると、ややハト派(利上げに消極的)な内容でした。ただし、市場の一部には、利上げ打ち止め感が出る期待もありましたので、市場の期待と比べると、「ややタカ派」だったと言えます。
NYダウは利上げ発表前に、「利上げ後に打ち止め感が出る」との期待から、一時前日比382ドル高の2万4,057ドルまで上昇していました。ところが利上げ発表後、FOMC声明文の内容・パウエル会見の内容が伝わると、下げに転じました。
FOMCメンバーのFF金利予測(中央値)は、来年2回の利上げを見込む
今回発表されたFOMCメンバーによる先行きのFF金利予測(中央値)によると、2019年末のFF金利誘導水準は、2.75―3.00%(中心は2.875%)でした。2019年に2回利上げを見込んでいることになります。また同予測では、2020年にさらに1回の利上げを見込んでいます。
FOMCメンバー(16人)による今後のFF金利予測(中央値)
今年は3・6・9・12月と、4回の利上げを行いました。来年さらに2回の利上げを見込んでいるわけですから、FF金利予測を見る限り、利上げ打ち止めが近いとは判断できません。
トランプ大統領がFRBの利上げを批判していること、米国株が下落していることから、株式市場では、「来年の利上げ回数は、0回または1回」という思惑が出ていました。FF金利予測は、前回(9月)の時よりも0.25%下がったものの、市場の期待と比べると「タカ派」と言えます。
FOMC声明文:市場期待ほど「ハト派」でなかった
利上げの実施自体は市場予想通りでサプライズありません。市場の注目点は、FOMC声明文とパウエルFRB議長の発言が、タカ派的(利上げに積極的)か、ハト派的(利上げに消極的)かにありました。
FOMC声明文は9月と比べると、「ややハト派」でしたが、市場の期待に比べると、「ややタカ派」だったと言えます。米経済の現状について「労働市場は引き続き力強さを増し、経済活動は力強く拡大した」と認識しているのは、前回とまったく同じです。米経済は好調で、「FF金利をさらに若干、段階的に引き上げることが妥当」としています。
前回は、「今後もゆるやかな利上げが続く」としていましたので、「若干」が加わった分、「ややハト派」になったと言えます。ただし、市場では今後の利上げに対する言及がなくなるとの期待もありましたので、市場の期待と比べると「ややタカ派」だったと言えます。
パウエル議長会見:景気の先行き懸念を含む割に、期待ほど「ハト派」でなかった
パウエル議長の発言は、市場の期待と比べてややタカ派と捉えられました。景気動向について「数カ月前の予想に比べて軟化を示唆する動きが出てきた」と述べ、海外経済の減速、株式市場の下落を警戒的に見ていると話しました。とはいえ、基本的な見方を変えたわけでないことを強調し、中立水準に向けて利上げを続けるべきであると話しました。
景気減速のリスクを認識しながら、利上げを続けるスタンスを示したことになり、それが株式市場で嫌気されたわけです。
米インフレ率は落ち着き、来年以降、利上げ打ち止め感が出る可能性も
一方、米国のインフレが加速する懸念は特にありません。金融当局が重視しているコア・インフレ率は、ターゲットの2%前後に留まっています。平均賃金の伸びが高まっていますが、現時点で米インフレ率が加速する兆しはありません。
米平均賃金上昇率と、インフレ率(消費者物価コア指数・前年比)の推移:2011年1月~2018年11月
原油が急落したことから、世界的にインフレが抑えられる期待もあります。インフレ加速の兆しがないにもかかわらず、FRBが利上げを続けるスタンスを示しているのは、やや引き締めにかたより過ぎていると、私は考えています。
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(窪田 真之)
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