原油相場、反転上昇はなぜ?米中貿易戦争中でも世界の石油消費は増加

トウシル / 2019年1月21日 16時47分

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原油相場、反転上昇はなぜ?米中貿易戦争中でも世界の石油消費は増加

 昨年末に一時42ドル台まで下落したWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油相場でしたが、1月21日時点で54ドル台まで回復してきました。

 価格は強弱、さまざまな材料を織り込みながら推移していますが、今回のレポートでは、先週公表された各種統計から、今後の原油相場を考える上で重要と考えるデータや決定事項について解説します。

参考:WTI原油先物(期近、日足、終値) 

単位:ドル/バレル
出所:CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のデータを基に作成

 

世界の石油需給バランスは、4カ月ぶりに供給不足に転じ、原油相場をサポート

 昨年10月から12月まで原油相場は大きく下落しました。その背景には世界の石油需給バランスが供給過剰だったことが挙げられます。

 供給過剰の状態は、2014年後半から2016年初頭まで起きた原油価格の急落・低迷時、いわゆる「逆オイル・ショック」の主因と言われるなど、原油においては下落要因となります(供給不足は上昇要因)。

 供給過剰、または供給不足の状態が連続して数カ月間続いた場合、原油の需給バランスに「トレンドが生じている」ことになり、そのような場合、それに追随するように、原油相場にトレンドが発生することがあります。

 2018年12月は、わずかですが「供給不足」になりました。供給不足は4カ月ぶりです。それ以前の3カ月間(9月~11月)は連続して過去2年間の最高水準の供給過剰であり、それを反映して原油相場も大きく下落しました。

図1:世界の石油需給バランス 

単位:百万バレル/日量
出所:EIA(米エネルギー省)のデータを基に作成

 

世界の石油消費量は増加し、歴史的水準を更新中

 需給バランスは「供給量-消費量」で計算します。供給と消費、両方の要素を持っているわけです。

 図2は供給量の推移、図3は石油の消費量の推移です。

図2:世界の石油供給量 

単位:百万バレル/日量
出所: EIAのデータを基に作成

 

図3:世界の石油消費量 

単位:百万バレル/日量
出所:EIAのデータを基に作成

 

 上記を見ると、2018年12月は前月に比べて供給の減少と同時に消費の増加が起き、その結果、供給不足になったと言えます。

供給面はOPECの原油生産量、消費面は米中の石油消費量に注目

 供給面でのトピックは、2018年12月のOPEC(石油輸出国機構)原油生産量が大幅に減少した点です。

図4:OPECの原油生産量 

単位:千バレル/日量
出所:OPECのデータより作成

 

 12月のOPECの生産量は、12月の総会で決定した2019年1月から6月まで行う減産における生産量の上限とほぼ同じ水準です。減産開始前から積極的に生産量を減少させ、減産に取り組もうとしているように見えます。

 一方、消費面でのトピックは、米中貿易戦争の激化で懸念される、米国と中国の石油消費量の推移です。

図5:米国と中国の石油消費量  

単位:百万バレル/日量
出所: EIAのデータを基に作成

 

 米中貿易戦争が激化した2018年後半、消費量世界No.1の米国は高止まりし、No.2の中国は特に年末に消費量が拡大。世界全体の消費量を押し上げることに貢献しました。

 米中貿易戦争激化による世界の石油消費量が減少する懸念ありますが、今のところ米国も中国も、そして世界全体で見ても減少は見られません。

 この堅調な消費量の中、OPECの生産減少が加わり、「供給不足」が生じていると考えられます。

引き続き米国の原油生産量の増加、OPECの減産の行方に注意

 OPECの原油生産量は12月、前月比で減少と先述しましたが、図6のように、米国の原油生産量は増加しました。2019年1月時点のEIAの見通しによれば、米国の原油生産量の増加傾向は来年2020年末まで続くとされています。

図6:米国の原油生産量 

単位:百万バレル/日量
出所:EIAのデータを基に作成

 

 逆オイルショック時に100ドル台だった原油価格は30ドル前半まで(終値ベース)、およそ70%の下落となりましたが、それによって減少したことが大きく報じられた米国の原油生産量は実際には12%程度の減少にとどまりました。

 原油相場の動きと数カ月間の時間差がある米国の原油生産量は、2018年10月から12月までの原油相場の下落を受け、今後減少する可能性はありますが、急減することはないと筆者は考えています。引き続き、米国の原油生産量の増加が、OPECの減産効果を下げ続ける展開が続く可能性があります。

 そして、これまで詳細が決まっていなかった次回、第176回OPEC総会とOPEC・非OPEC閣僚会議の日程が、先週半ばに発表されました。第176回OPEC総会は4月17日(水)、OPEC・非OPEC閣僚会議は翌4月18日(木)で、前回同様、ともにOPECの本部(ウィーン)で開催されることとなりました。ここでOPECの減産について話し合われる予定です。
2018年12月の前回の会合で、次回の会合を2019年4月に開催するとしていましたが、これがようやく決定したわけです。

図7:OPEC減産の今後について

出所:OPECの情報を基に作成

 通常、OPECは年に2回、総会を開催しています。

 年に2回というのは、5月もしくは6月の年央、11月もしくは12月の年末、ということです。これらの「定時」以外の総会は「臨時」ということになります。

 12月の総会で、4月に総会を行うことを決定しましたが、これは臨時で行うという意味であり、その1カ月もしくは2カ月後の5月もしくは6月に、定時総会が行われることが想定されていたわけです。すでに現段階で臨時総会が予定されているということは、4月の臨時総会で伏線を張り、5月もしくは6月の定時総会で重要事項を決定するプロセスが進行していると推測できます。

 7月以降も減産をするのか、2017年1月から2年半続けた減産を終了するのか、どちらかは分かりません。しかし、このようなワンクッションを設けたプロセスは、市場への負のインパクトを軽減することを目的としている可能性があります。その意味では、減産終了を決定するためのプロセスがすでに進行している可能性は否定できません。

 米国の原油生産量の増加でOPECの減産効果が下がる懸念、そしてOPEC減産終了の懸念がある中で、原油価格が動いている点について、留意が必要だと考えています。

(吉田 哲)

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