発生確率50%?2019年マーケットを揺さぶるサプライズ10大予測
トウシル / 2019年1月23日 15時26分
発生確率50%?2019年マーケットを揺さぶるサプライズ10大予測
世界注目の2019年10大サプライズ予測とは?
前回は、政治リスク分析の専門家によるグローバル・リスクを中心とした「世界10大リスク」のお話をしました。今回は、経済・金融の専門家による「世界10大予想」の中から、このコラム毎年恒例のバイロン・ウィーン氏「サプライズ10大予想」をご紹介します。
年末年初になると、エコノミストや銀行・証券会社から経済や金融の予想が出てきます。中でも米ウォール街で注目されているのが、ウォール街のご意見番、米投資会社ブラックストーン社のバイロン・ウィーン氏による「サプライズ10大予想」です。今年で1986年以来34回目となる年始恒例の予想です。同氏は「サプライズ」の定義として、「平均的な投資家が発生確率を3分の1程度とみているイベントを、私が50%以上で起こると信じている出来事」と説明しています。
2018年予想・答え合わせ
昨年2018年の同氏の予想では「米成長率が3%を超え、4%に迫る経済成長によってS&P500種株価指数は年末に株高となり、3,000に上昇」と強気の予想でした。
しかし、経済成長は4%を超える局面もありましたが、S&P500は秋に3,000に迫る動きがあったものの、その後利上げの影響を受けて年末に向け2,500近辺に下落しました。
また「FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは年4回、物価は3%を超え、米10年債利回りは4%」との予想は、利上げ回数は的中しましたが、物価や金利はその水準までは及びませんでした。
ドルについては、ドル高を予想し「ユーロ/ドルは1.10、ドル/円は120円へ」と予想しました。ドル高は的中し、ユーロも1.12台まで下落したものの、ドル/円は114円台半ばまでしかドル高は進みませんでした。
予想の大部分は当たらないことが多いのですが、ウォール街のご意見番がどのように考えているのかを知ることはシナリオを想定する際に役に立ちます。自分の相場観と照らし合わせて、サプライズかそうでないか見極めることもできるのです。
毎年強気の予想ですが、さて、今年はどのような予想を立てているのでしょうか。
バイロン・ウィーン氏による「2019年サプライズ10大予想」
1 | 世界経済が弱まり、FRBが利上げを停止。インフレは抑制され、10年債利回りは3.5%に達せず |
2 | S&P 500は15%の上昇 |
3 | 2021年より前に景気後退は起きない。消費者・政府の支出により景気拡大が続く |
4 | 米国、他の株式市場が回復し、金は1,000ドルまで下落 |
5 | 新興国市場の企業収益見通しが改善し、投資家の関心が強まる。上海指数は25%上昇し、新興国市場の上昇を主導 |
6 | 3月29日を過ぎても英議会はEU(欧州連合)との離脱協定を承認しないが、メイ英首相は続投。2回目の国民投票が実施され、英国のEU残留が決まる |
7 | 年間を通して、ドルは2018年末の水準で安定。FRBはバランスシート縮小を停止し、ドル安要因に。金融政策の軟化と企業の資金需要の欠如から、米国への資本流入が鈍化 |
8 | モラー米特別検察官の捜査によりトランプ米大統領の側近が起訴されるが、大統領が直接関与した証拠は見つからない。しかし、大統領が最も信頼するアドバイザーたちが去り、ホワイトハウスの政権運営能力が疑問視される |
9 | 民主党多数の下院は、特に通商政策において期待を上回る成果を上げる。オバマ・ケアや移民政策の重要部分は維持され、2020年のインフラ支出実施が発表される |
10 | 米市場では引き続きグロース株が主導する。テクノロジーとバイオの企業収益改善が続き、米株式市場をけん引 |
これらの予想を景気と金融市場の観点を踏まえると、次のようになります。
・FRBは利上げを停止し、インフレは3.5%未満に
・米国株は利上げ停止を好感し、15%の上昇。上海株も25%上昇し、新興国市場を主導
・米景気は拡大が続き、景気後退は2021年以降
・ドルは2018年末の水準で安定
・FRBはバランスシート縮小を停止し、ドル安要因となり、米国への資本流入が鈍化
今年も米国経済や株について強気の見方のようです。しかし、例年と比べるとサプライズ度合いは低く、強気のエコノミストとあまり変わらない予想です。強いて上げれば、上海株の25%上昇がサプライズです。
また、ドルの水準が昨年末の水準で安定するという予想もサプライズです。利上げを停止し、資産縮小も停止するのであれば、かなりドル安になるのではないかと予想されるのですが…。
留意すべき4つのリスクシナリオ
ウィーン氏は10大予想以外にも、それほど重要ではないもの、実現可能性が高くないものとして、さらに4項目を挙げています。
1 | 地政学的緊張が高まる。イランと北朝鮮は火種であり続けるが、米国大統領選挙が近づく中で実際の戦争には発展せず、トランプ大統領の強弁がいくつかの外交課題で成果を上げる |
2 | 切羽詰まった中国がインフラ政策で経済を刺激し、実質成長率6.5%を達成するが、債務問題を世界が懸念し、人民元に悪影響が及ぶ |
3 | 中国が「世界の自由貿易のリーダーになる」と宣言。世界における中国の影響力が増し、米国はさらに孤立する |
4 | イタリアの反抗、ドイツの鈍化、Brexit(ブレグジット:英国のEU離脱)に対応し、ECB(欧州中央銀行)が量的緩和を再開 |
実現可能性が高くないものとして、人民元の悪影響、米国のさらなる孤立、ECBの量的緩和を挙げていますが、相場シナリオを想定する際にはリスクシナリオとして留意しておく必要がある項目です。
また、10大リストの中のBrexitに関する合意なき離脱や2回目の国民投票なども、サプライズではなく、リスクシナリオとして留意しておく必要がありそうです。
このように、注目されている予想を参考にすることによって、自分の予想と照らし合わせ、どの程度サプライズなのか、どの程度リスクがあるのか、自分の予想を吟味するための材料として活用することができます。そしてリスクが発生した場合に為替はどのように動くのか、事前にシミュレーションをしておくことは、「いざというとき」に慌てずにすむため、重要です。
(ハッサク)
この記事に関連するニュース
-
1ドル=160円の円安ドル高は遠のく、米利下げ期待と為替介入警戒感の高まりで
トウシル / 2024年7月17日 16時0分
-
米国株は上昇し続ける?米景気が次に後退局面に入るのはいつ?(窪田真之)
トウシル / 2024年7月9日 8時0分
-
相場展望7月8日号 米国株: 米早期利下げ観測で、株価指数は最高値も、市場変化に留意 日本株: 投資家心理は強気続くが、過熱感と夏枯れに留意
財経新聞 / 2024年7月8日 10時20分
-
「1ドル=160円超え」で円安進行も、ドル円は緩やかに上昇すると想定 ~マーケットの振り返りと見通し【解説:三井住友DSアセットマネジメント・チーフリサーチストラテジスト】
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年7月2日 16時20分
-
「もしトラ」、為替介入、欧州選挙などリスク満載!それでも日本株は見直し買いで上昇!?
トウシル / 2024年7月1日 13時35分
ランキング
-
1イタリア人が営む「老舗ラーメン店」の人生ドラマ 西武柳沢「一八亭」ジャンニさんと愛妻のこれまで
東洋経済オンライン / 2024年7月22日 11時30分
-
2なぜユニクロは「着なくなった服」を集めるのか…「服屋として何ができるのか」柳井正氏がたどり着いた答え
プレジデントオンライン / 2024年7月22日 9時15分
-
3円安は終わり?円高反転4つの理由。どうなる日経平均?
トウシル / 2024年7月22日 8時0分
-
4ウィンドウズ障害、影響続き世界全体で2600便欠航…損害は1600億円を超えるとの見方も
読売新聞 / 2024年7月22日 11時16分
-
5「土用の丑の日」物価高でも…あの手この手の“うなぎ商戦” 大手スーパーの目玉は「超特大」
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月22日 19時59分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください