ドル/円は下げ止まったのか!?日米貿易交渉の行方に要注意
トウシル / 2019年1月24日 16時34分
ドル/円は下げ止まったのか!?日米貿易交渉の行方に要注意
ドル/円相場のトレンド分析
現在、ドル/円の日足は14日のADXと26日の標準偏差ボラティリティがともにピークアウトしており、典型的な<ランダム相場>であり、<調整局面>である。順張り派の投資家にとっては、調整局面ではすることがない。取引に何らの優位性もないからである。
ドル/円(日足)標準偏差ボラティリティトレードモデル
筆者の独断と偏見でいえば、トレンドの有無を判定するという相場認識のテクニカル・ツール(道具)で最も優れているのは、「標準偏差ボラティリティ」と「ADX」という指標である。
相場に方向性が出てくると、標準偏差ボラティリティは上昇する。標準偏差ボラティリティが低い位置から上昇する場合は、相場が保ち合いを離れ、強い方向性をもつシグナルとなる。相場に大きなトレンドが発生する可能性のある局面は、標準偏差ボラティリティが上昇し、ボリンジャーバンドの±1シグマをブレイクしたときだ。
一方、標準偏差ボラティリティがピークアウト(天井をつけ下落)すると、トレンド期とはやや逆方向にバイアスがかかった「横ばいレンジ内での乱高下相場」となりやすい。
相場でチャンスになりやすいのは、標準偏差ボラティリティやADXが低い位置から上がっていく局面で、これを相場用語では「保ち合い放れ」・「レンジ・ブレイク」・「ボラティリティ・ブレイクアウト」などと呼んでいる。
エリオット波動の波動カウント
ドル/円の昨年9月からの波動カウントを見てみよう。フラッシュクラッシュで大底を付けて、このあと円安が進んで行きそうに感じやすい…。しかし、筆者の波動カウントでは、昨年の9月から10月に始まった円高波動は、今、戻りの(4)をやっていて、そのあとは昨秋から始まった円高波動の最後の(5)の波が残っているように思える。筆者が円相場は戻り売りだと言っているのは、それが一つの要因である。
ドル/円(日足)昨年9月からの波動カウントと移動平均リボン(1~3カ月の市場参加者のコスト)
円相場は下げがもう1波残っているように見える…
フィボナッチのリトレースメントと価格帯別出来高
ドル/円は1月3日のフラッシュクラッシュ相場の安値104円から1月23日には109円99銭までリバウンドした。直近の下げ幅の61.8%に近いところまでの戻りである。しかし、ドル/円の週足の価格帯別出来高をみると、ここから上は上値が重くなりそうだ。
ドル/円(日足)フィボナッチのリトレースメント
ドル/円(週足)価格帯別出来高
シカゴ円通貨先物取引の投機筋のポジション
シカゴIMMの円通貨先物取引の投機筋のポジションをみると、昨年12月以降大幅な円高に見舞われたにも関わらず、投機筋の円売りポジションは歴史的高水準にとどまっている。円売りの回転が効いているなら問題はないが、円売りポジションを抱えた投機筋は評価損を抱えて我慢している状態だ。こういう環境ではドル/円相場の上値では戻り売りが出てくるだろう。
シカゴIMM 投機筋の円のポジション(1月21日現在 CFTC発表)
<ファイナンシャル・アストロロジー>チャート
下の見慣れないチャートは、満月・新月・月食・日食・MOON DECLINATIONをプロットしたチャートで、シカゴ筋に人気のアストロロジーチャートである。チャート下段のMOON DECLINATIONとMAオシレーターとストキャスティクスの同時反転が相場の転換点になりやすい。
NYダウ(日足)
ナスダック(日足)
ドル/円(日足)
ドル/円の逆張りシグナル
以下のチャートは昨年11月3日に大阪で開催された「投資戦略フェア2018大阪」の楽天証券提供の講演で参加者に配布した楽天MT4版“逆張り取引のサンプルモデル”である。この逆張り売買モデルをみると、昨日1月23日に売りシグナルが点灯している。
ドル/円(日足)逆張りシグナル
逆張りは相場に逆らってポジションをとる売買手法であり、ストップロスを置かないと大きな損失を被る可能性がある。それらに十分留意したうえで、使っていただきたい。逆張り取引は、あらかじめストップ注文を置いておくか、最悪でも「間違ったと思ったら直ちに損切りすること」が重要である。
どのリスクポイントで自分は撤退するのかを把握しておかなければならないが、この問題を解決するために、筆者は相場のチャートにストップロスラインとトレーリングストップラインを2本引いている。これでとりあえず相場から撤退するポイントは把握できる。
ドル/円(日足)ストップロスラインとトレーリングストップロスライン
日米貿易戦争の行方
市場参加者は米中貿易戦争に目を奪われているが、米中貿易戦争より、日米貿易戦争(自動車と畜産農業品のバータ)のほうがドル/円相場にとっては深刻な問題であろう。
日米の貿易交渉が1月下旬から始まる見通しだったが、米政府機関の一部閉鎖で米国内の手続きが遅れているため、交渉開始は今春以降になるとの観測も出ている。日米の貿易交渉の後ずれで、円高を狙っていた投機筋もちょっと思案しているようだ。日本がTAG(米物品貿易協定)と呼び、米国がUSJTA(米日貿易協定)と呼ぶ貿易交渉は、うまくいくはずがない。
日本の貿易黒字のほとんどが自動車であり、現在の日米貿易戦争は80年代をなぞるような動きだが、その結末は保護主義的な車の輸入数量規制に行き着く。しかし、それで日米の貿易不均衡が解消するわけもなく、最後はドルの切り下げ(円高)で調整するというのが米国の常とう手段である。日本発の貿易摩擦という円高材料を市場はほとんど織り込んでいないのではないだろうか?
ドル/円(月足)と60カ月エンベロープ(60カ月移動平均線かい離率)
為替の歴史は政治の歴史。為替相場は米国の都合で動いてきた…
(石原 順)
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