投資とギャンブルの違いとは何か?
トウシル / 2017年3月22日 0時0分
投資とギャンブルの違いとは何か?
アメリカ人の金融リテラシーは決して高くない
私は10年前から毎年アメリカのFP事務所に視察に行き、アメリカ人のFPに、アメリカ人の投資に対する考え方などを聞いています。こういう話をすると、またいつもの「日本人はリスク資産を金融資産全体の15%しか保有せず、アメリカ人は約50%保有しており、アメリカ人の方が金融リテラシーが高い」という話なのかと思われるかもしれません。
ただ、私自身はアメリカ人の方が金融リテラシーが高いというのは完全なる神話だと思っております。アメリカのFPと話していても、アメリカ人が本当に長期分散投資のことを理論的に理解しているかといえば、理解している人の方が少なく、だからこそお客様に向けての投資教育コンテンツに力を入れていると言っていました。
株価から見るアメリカと日本の思想の違い
では、なぜアメリカ人は金融資産の半分を投資に回せるのでしょうか。
1つは、資本主義の中で国が発展、成長をしてきたという歴史的背景があると思います。アメリカというのはその成り立ちがヨーロッパから入植をしてきた人が建国をし、新大陸のアメリカでは封建領主の干渉を受けず、自らの勇気と努力で暮らしを立てる社会を目指しました。そして誰でも成功すれば豊かになれる、ビジネスで成功することは社会のためになるという思想が今も根強く、それがアメリカを成長させてきた強力なエンジンであることは間違いないと思います。
だからこそ、グーグル、アマゾン、フェイスブックのような会社が立ち上がり、その創業者は巨万の富を得ますが、それが社会全体にとっても良いことだと捉え、その起業家精神がある限りは、株式マーケットは上がっていくことを信じています。
図1:最高値を更新し続けるNYダウ
その思想と株価の長期的な値上がりがリンクをしています。たとえばNYダウというのは、現在もこの図1にあるように最高値を更新し続けています。
最高値を更新しているということは、NYダウを持っている人は途中で売らない限りでは、全員儲かっているということで、リスクを取った人が報われています。
一方、日本というのは残念ながらここ20年間、国としては成長をしていません。私たちが普段耳にすることが多い日経平均が1989年から最高値を更新せず、私が社会人になった20年前の日経平均も今と同じ水準でした。
図2:ボックス圏で動く日経平均
投資とギャンブルの違い
アメリカ株は最高値を更新していき、日本株は過去20年間同じ水準で推移をしているという現実から導き出せる仮説として、日本人の方が投資をギャンブルの1つだと考えがちのためだと思います。
ギャンブルというのは誰も分からない未来の事柄に対してお金をかけ、運がいい人が勝ち、悪い人が負けるというゼロサムゲームです。ルーレットで次に出るのが赤か黒かは誰にもわかりません。わかっているのは、長期的には胴元が勝ち、ギャンブラーは必ず確率的に負けるということです。
株式投資も日経平均だけを見ていると、過去20年間10,000円と20,000円の間を行ったり来たりしているので、短期で安いところで買って、高いところで売らなければ儲からないと思うのが自然だと思います。
ただ、NYダウは20年前は7,000ドルでこの20年間で3倍になっていますので、アメリカ人の大半は米国株を長期保有すれば、一定のリターンが得られると思っています。
ではなぜ株式投資は長期的にはギャンブルではないかというのを感覚的に分かって頂くために、例えを使って説明をしたいと思います。
株式に長期投資をすればリターンが得られるという感覚は、教育にお金をかければ将来の年収は上がるというのと似ていると思います。私たちは知識社会に生きていますので、知識を増やすことで、付加価値のある成果を出す可能性が高まり、知識量と年収というのは比例することを理解しています。短期的にはわかりませんが、長期的にはより高度な教育を受けた人が高い年収をもらう可能性が高まります。
それと同じで株式投資というのも、短期的にはアップダウンをするが、長期的には教育への自己投資と同じくその投資に見合ったリターンが得られると思えるかどうかです。
NYダウというのはアメリカを代表する30社で構成されていますが、初期から採用されている会社はGEのみで、残りの29社は入れ替わり、その時代での優良企業が採用されています。つまり、NYダウに投資をしたお金というのは、現時点で非常に競争優位にある企業が優秀な経営陣によって利益を生み出し、株主のお金を増やしてくれます。だからこそ、そうした会社の株式に分散投資をしていれば、長期的には上がっていくことになり、短期売買をする必要がなくなるのです。
今、みなさんがされているのが投資なのかギャンブルなのかを考え、その境界線を引いてみてはいかがでしょうか。
(中桐 啓貴)
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