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日本株の大幅安と世界に広がる政治不安。どうなる米中摩擦、米債務問題、ブレグジット・・・

トウシル / 2019年3月26日 7時42分

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日本株の大幅安と世界に広がる政治不安。どうなる米中摩擦、米債務問題、ブレグジット・・・

急落した日本株が「買い場」と判断する理由

 世界景気への不安から、25日の日経平均は前週末比650円下落して、20,977円となりました。本欄で繰り返しお伝えしているように、私は、日本株は割安で長期投資で買い場を迎えていると判断しています。世界景気は2019年に悪化し、2020年に回復すると予想しているからです。株は、景気循環よりも半年~1年先に動くので、今が2019年の景気悪化を織り込む最終局面と判断しています。

 ただし、それには、重要な前提条件が1つあります。米中貿易戦争が数か月以内にいったん、一定の「落としどころ」に落ち着くという前提です。

 他にも、世界中にいろいろなリスク材料があります。米国の債務問題も近々、話題になるかもしれません。膨張する米国債の発行上限引き上げを議会がすんなり認めないと、「ドル不安」が再燃する懸念があります。

 また、英国にリスク材料があります。確率は低いと考えていますが、英国がEU(欧州連合)から「合意なき離脱」をすると、英国および欧州の経済に大きなダメージを及ぼします。そこで、今日は、世界に広がる政治不安の行方について、コメントします。

世界の政治不安を俯瞰

政治不安のネタは尽きない

 上記は、世界の政治不安の中で、日本株に影響のありそうなものを、ざっと俯瞰したものです。3つに色分けしています。政治不安の根底にあるものの違いから、色分けしました。

 まず、中国、北朝鮮、ロシアの問題。ひと言で言うと、「独裁のリスク」と言えると思います。社会主義国では、原則として、国が絶大な権力を有します。権力が中央政府に集中し、独裁的な指導者が暴走するリスクと隣り合わせです。

 次に、米国、欧州、日本の問題。こちらは、民主主義国に共通の不安を抱えています。「ポピュリズム(大衆迎合主義)が蔓延するリスク」です。自国経済に悪影響を及ぼすことがわかっていても、ポピュリズムの波に飲まれて、経済的に非合理な政策が選択されるリスクが高まっています。近年は、米国・欧州で、反グローバル・反資本主義の政策が選択され、グローバル経済・株式市場に悪影響を及ぼすリスクが出ているのです。

 中東の地政学リスクは、性格が異なるので、別の分類としました。

日本と世界にもっとも大きく影響する、米中貿易・ハイテク戦争の行方

 私は、米中の覇権争いは、20世紀の米ソ冷戦に匹敵する長い対立になると考えています。それでも目先は、米中ともにいったん何らかの手打ちを探る展開になると予想しています。世界的に景気が悪化してきたことが、いったん休戦し、対立を緩和させる方向に働くと思います。

 米中貿易戦争・ハイテク戦争の影響を受けて、足元、急速に世界景気が悪化してきました。そのため、米国ではトランプ米大統領に対する批判が再燃する気配もあります。また中国でも、習近平国家主席への批判が高まるリスクもあります。こうした環境変化を受けて、トランプ大統領、習近平国家主席ともに、いったん貿易戦争でなんらかの合意を目指すと思います。

 米中貿易戦争・ハイテク戦争の余波で、中国では設備投資に急ブレーキがかかっていますが、米中がいったん休戦となれば、再び、設備投資が盛り返すと思います。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、ロボット、5G(第5世代移動体通信)などへの投資が2020年にかけて復活すると予想しています。

 米中交渉が実際にどうなるか、今後しっかり行方を見つめていく必要があります。

米国の債務上限引き上げの問題

 財政赤字が続く米国では、定期的に米国債の発行上限を引き上げないと、財政をまかなえません。それには、議会の承認が必要です。

 ところが、政府与党の力が弱いと、議会が債務上限の引き上げをすんなり認めない可能性があります。債務上限の引き上げ期限が近づいても、議会の承認がおりない場合は、米国債の償還財源がなくなるリスクが騒がれます。また予算が枯渇して、一時的に政府機関が閉鎖になることもあります。

 昨年11月の中間選挙で、トランプ大統領の共和党は、下院で過半数を失いました。上院では共和党が過半数を維持しましたが、下院で野党・民主党が支配する「ねじれ議会」となったわけです。この状態で、次の債務上限引き上げ期限が近づくと、いつもの見慣れた光景ですが、上限引き上げが議会ですんなり通らず、不安が高まるリスクがあります。

 折しも今、FRB(米連邦準備制度理事会)は、急速にハト派転換し、ドル金利が低下し、ドル安(円高)が進むリスクが出ているところです。ここに、米債務問題が重なると、さらに円高が進むリスクがあります。

英政府は何も決められない?ブレグジットの行方は?

 ポピュリズムの蔓延で、反グローバル・反資本主義の政策が平気で行われる時代になりつつあります。今、その流れに最も翻弄されているのが、英国です。2016年6月の国民投票で、EUからの離脱方針を決めたものの、国内の強硬離脱派と、穏健離脱派・EU残留派で意見が合わず、EUとの離脱条件で合意が得られません。

 メイ英首相がEUと合意した離脱案は、2度に渡り英国議会で否決されました。ただし、「合意なき離脱」になると、英国もEUも大きなダメージを受けるので、英議会は、3月29日に予定されていたEU離脱を、6月末まで延期する方針を決めました。

 ところが、6月末までの離脱延期をEUが認めませんでした。英国を除くEU首脳27カ国は21日に、延期期間を短縮する決定をしました。具体的には、以下の通りです。

【1】メイ英首相とEUがまとめた離脱合意案を英議会が承認するならば、5月22日までの離脱延期を認める。

【2】合意案を英議会が承認しないならば、4月12日までの短期延期しか認めない。

 メイ首相がEUとまとめた合意案が、英議会で承認される可能性は、ほぼありません。となると、上記の【2】になる可能性が高いと言えます。EUは【2】になった場合、英国に2つの選択肢を与えています。それが、以下の【3】【4】です。

【3】英国が5月23~26日に控えているEU議会選挙に参加しないなら、「合意なき離脱」となる。

【4】英国がEU議会選挙に参加するなら、EUとの離脱方針を抜本的に見直すための時間を英国に与える。つまり、英国がEU離脱を「長期延期」することを認める。

 この内容から、英国が4月12日に「合意なき離脱」になるリスクが出たと解釈する向きもあります。私は【3】ではなく、【4】が選択される可能性がきわめて高いと考えています。メイ英首相は、5月のEU議会選挙への英国の参加はあり得ないとしてきましたが、合意なき離脱を避けるために、参加を認めざるを得なくなると思います。そうなると次は、英国でEU離脱の抜本的見直し作業が始まります。メイ首相の退陣・総選挙、またはEU離脱の是非を問う国民投票のやり直しなどが、選択肢に入ってきます。

 世界景気の悪化を受けて、英国民の意見も、変わってきています。ホンダが英国生産から撤退を発表したこと、トヨタが合意なき離脱なら英生産から撤退する方針を示したことも影響しています。ロンドンに欧州のメインオフィスを構える金融機関が、メインオフィスを他のEU加盟国に移す検討を始めていることも伝えられています。英議会が、離脱合意案を可決できないのは、強硬離脱派が「EUの支配が残る」と反対していることだけでなく、離脱を撤回すべきと考える議員が増えていることも影響しています。

 私は、英国が離脱方針の抜本的見直しに着手し、最終的に、離脱自体を撤回する可能性も、少しだけ出てきたと考えています。

 

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(窪田 真之)

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