今後も雇用がペースダウンするなら、それは米経済の不吉な予兆か?
トウシル / 2019年4月3日 10時50分
![今後も雇用がペースダウンするなら、それは米経済の不吉な予兆か?](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/toushiru/toushiru_20314_0-small.jpg)
今後も雇用がペースダウンするなら、それは米経済の不吉な予兆か?
3月米雇用統計 詳細レポート
4月5日に発表される3月の米雇用統計は、非農業部門雇用者数が+17.8万人(前回+2.0万人)の予想。失業率は3.8%(前回3.8%)、平均労働賃金は前月比+0.2%(前回+0.4%)、前年比+3.4%(前回+3.4%)との予想になっています。
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2月雇用統計のレビュー
2月の米雇用統計は、NFP(非農業部門雇用者数)がわずか2.0万人の増加にとどまり、事前予想の+18.5万人を大幅に下回りました。単月の落込み幅としては2004年以来最悪。その一方で失業率は3.8%まで下がり、過去50年間で最も低い水準を維持しました。平均労働賃金は前月比0.4%に上昇。前年比も0.4%上昇となって10年ぶりの大幅な伸びを記録しました。
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3月雇用統計の予想
では2月の雇用統計はどうでしょうか? 2月はNFPが+18.5万人の予想。やや少なめの印象を受けますが、1月も事前予想の16.0万人に対して結果は30.4万人の大幅増でした。予想が低いぶんだけアップサイド・サプライズが大きいともいえます。ただし前回は米政府機関の一部閉鎖が理由で集計が間に合わなかったようなので、修正値のブレにも注意が必要です。失業率は4.0%から3.9%に低下の予想。
貿易戦争という不安要因はあるものの、雇用が減っているといった兆候は今のところ見えません。実は米国ではその逆が心配されています。
雇用者の増加ペースは今後鈍化する?
米国が深刻な人手不足に悩んでいることは、前回の雇用統計詳細レポートでもお伝えしましたが、それなのに2月の雇用統計の雇用者数増加はわずか2万人という、リーマンショックの時でも経験しなかったような急激なペースダウンとなりました。ただし、これは米政府機関の閉鎖や悪天候など一時的要因との見方で、今回は17.8万人増加まで回復するとの予想です。
とはいえ、米国の雇用がこれまでのようなペースで増加する時代は終わったのかもしれません。それは何を意味するのか?米国では働きたい人はもう全員仕事を見つけてしまった、いわゆる「完全雇用」状態になったのか、それとも経済が重大なターニングポイントを迎えたのでしょうか。
もし前者だとすれば、企業が人材を取り合うことになって、賃金は今後上昇していくと考えらえます。実際、平均労働賃金は、前月比+0.2%、前年同月比+3.4%と堅調な予想になっています。
しかし、賃金上昇がインフレ上昇につながるかといえば、そのような傾向は見られません。だからFRB(米連邦準備制度理事会)はこれ以上の利上げは必要なしとの判断に至ったわけです。今後は、平均労働賃金が伸びる以上のペースで雇用者増加が減ることになるでしょう。
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雇用伸び悩みは米国経済がピークを迎えたサイン?
しかし、もし原因が後者、すなわち米国経済の減速だとすれば、問題はより深刻です。FRBは利上げ休止だけではすまず、緩和政策復活の必要に迫られる可能性もあります。市場ではすでにFRBが年内に1%の「利下げ」をするのとの見方も出ています。
しかし、この考えはやや悲観すぎるかもしれません。米国の景気拡大は、今年7月には120カ月を超えて戦後最大を更新することはほぼ確実といわれています。雇用者増加が1回落ち込んだとはいえ、トレンドとしての労働市場は依然として堅調、米指標にも大きな不安は見当たりません。
ただし、前回の景気拡大期では、それに続いて過去最悪のリセッションに陥ったという事実があります。世界経済にとっては、こちらのリスクが気になります。
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(荒地 潤)
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