「波乱の9月相場!トランプタンブル(トランプの転落相場)相場が始まったのか?」
トウシル / 2017年8月24日 18時0分
「波乱の9月相場!トランプタンブル(トランプの転落相場)相場が始まったのか?」
スティーブン・バノンの首席戦略官解任と<トランプタンブル>(トランプの転落相場)
ラリー・ウィリアムズは年初の年間予測レポート「フォーキャスト2017」で、「2017年の米国株式市場は<トランプタンブル>(トランプの転落相場)になる」と予測した。トランプ政治の理論的支柱でトランプのポピュリズムを推進してきたスティーブン・バノン(影の大統領)は4月5日に国家安全保障委員会(NSC)から外されて干されていたが、8月18日に首席戦略官も辞任することになった。
トランプやバノンが旗を振ってきた軍産複合体潰しの「アメリカを覇権国から建国の理念に基づいて普通の国に戻す」という戦略は頓挫し、トランプ政権は既得権者や軍産複合体の傀儡になる可能性もあるだろう。トランプ政権が不安定化することで、経済政策や債務上限問題への不安も聞かれる。2017年の後半相場はトランプの転落相場となりそうだ。
バノンが解任されてから、いっせいに軍産複合体の巻き返しが始まっている。しかし、アフガンへの米兵4000人の追加をあっさり認めるだろうと思われていたトランプは過去の米政権を批判し、「兵の人数や作戦計画については明かさない」と発言するなど、抵抗する姿勢をみせている。
また8月23日には、「米国とメキシコの国境に壁を建設する予算を議会が承認しなければ、政府機関の閉鎖も辞さないとの決意を表明した。NAFTA(北米自由貿易協定)破棄の可能性に言及するなど、貧困層の白人の支持を集めてポピュリズムを推進するバノンの戦略は、バノンが辞めてもトランプに引き継がれている。バノンの辞任でトランプ政権は軍産複合体の傀儡になりそうな報道が多いが、トランプの孤立主義・反軍産複合体姿勢はそう簡単に変わるものではないようだ。
現在、運用者の間で最大の焦点となっているのはジャクソンホールではなく、9月のFOMC(連邦公開市場委員会)と債務上限引き上げ問題(9月29日がリミット)である。2018年度予算でも共和党内で対立がみられ、債務上限引き上げ失敗による「政府機関の閉鎖も辞さない」とトランプが述べていることから、9月の米議会の審議が不安視されている。
ラリー・ウィリアムズが年初に発行した年間予測レポート「フォーキャスト2017」で取り上げられた<7の年のサイクル>は、「過去110年間のデータに基づいており、信頼性の高い結果となっている」という。下のチャートをみると相場はここから黄昏の時間帯に入っていく。
NYダウの「末尾7の年」の平均サイクル
世界最大のヘッジファンドブリッジウォーター・アソシエーツが弱気に転換
「トランプ政権の発足当初は経済政策や景気に楽観的だったレイ・ダリオ氏は一転、社会の分断、政局の混乱が激化していると指摘。投資リスクの高まりを警戒している」(世界最大ヘッジファンド、弱気に転換 政治混乱でリスク」8月22日 日経新聞)と報道されているように、2008年秋のリーマン・ショックを予見した世界最大のヘッジファンドブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオが弱気に転換した。
レイ・ダリオはLinkedIn(リンクトイン)への投稿で、「社会は協調よりも戦いの可能性が強くなっている。その度合いはポピュリズム(大衆迎合主義)が世界を席巻した1937年当時と似ている」と述べている。グローバルマクロの帝王レイ・ダリオの弱気転換で、ファンド運用者は警戒を強めている。
1930年代と2007~2016年の米実質GDP成長率
「過去10年間の赤字支出10兆ドルでもたらされた経済成長は、GDPから測定して米国史上最悪だった、驚くなかれ、過去10年間の米国経済は、あの大恐慌期よりも成長が鈍化しているのだ」(マイケル・スナイダー)
NYダウ(日足) 1936年から1938年の推移とロバート・プレクターの波動カウント
ラリー・ウィリアムズの日・米株式市場予測
8月10日のレポートでラリー・ウィリアムズの8月7日時点の日経平均の予測を紹介したが、日経平均は予想通り下げてきた。8月19日現在の見通しでは下げのターゲットと期間を述べているが、有料レポートのため、そこまでは言及することはできない。結論は、すう勢的な日経平均の下げはまだ続くとの見通しである。
8月14日のレポートで紹介したラリー・ウィリアムズの8月7日時点の日経平均予測
8月21日時点のラリー・ウィリアムズの日経平均予測
日経平均は、(筆者が相場の転換ポイントを探るのに使っている)ATRチャネルでいいところまで下げて一度リバウンドしたが、現在、日足相場で売りトレンドが発生しており売りなおされる展開となっている。
日経平均CFD(日足)とATRチャネル
日経平均CFD(日足)
筆者は現在売りトレンドが発生しているS&P500の先物を売っているが、ラリー・ウィリアムズの最新予測を見てみよう。
S&P500CFD(日足)
NYダウCFD(日足)とATRチャネル
NYダウCFD(日足)
米国株の現在の下落方向の調整は、ラリーのレポートのフォロワーにとっては何の違和感もない。米国株は「売り」の時間帯である可能性が高いことがわかるだろう。
8月19日時点のラリー・ウィリアムズのS&P500先物予測
ドル/円は108円を割りこまない限りは調整相場
先週のレポートに書いたが、ドル/円は108円を割りこまない限りは調整相場が続くだろう。108円を切ってくると、日足と週足の両方で円高トレンドが発生する可能性が出てくるが、それまでは酔っぱらいの足取りのような相場が続くのではないだろうか?
ドル/円(日足) 次のトレンド待ち
ドル/円(週足) ドル/円は108円を維持している限りはレンジ調整相場か…
大きな相場の転換点が到来している!?
「世界最大のヘッジファンド、ブリッジウォーター・アソシエーツのレイ・ダリオ会長は中央銀行が景気刺激措置を繰り出す時代は終わるとの見方を示した。世界経済は新たな段階に向かい、中銀がこれまで同様に金融市場を支えることはなくなるだろうと予想した。ダリオ氏は6日のリポートに政策の方向が逆転しつつあると記し、中銀による景気刺激ペースは鈍化していくとの見通しを示した。投資家としては今のところ踊り続ければいいが、宴会会場の出口に近づき、先行きをよく読むことだと強調した」(「中銀が刺激策繰り出す時代は終わる、宴会会場出口に近づけ-ダリオ氏」7月7日ブルームバーグ)
新たな南北戦争がはじまっている米国は完全に社会が分断されてしまっている。2017年の後半相場は、<トランプタンブル>(トランプの転落相場)に注意すべきだろう。
(石原 順)
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