上場株式の「隠れ財産」を個人投資家が有効活用する方法
トウシル / 2017年8月25日 8時0分
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上場株式の「隠れ財産」を個人投資家が有効活用する方法
前回は、個人投資家だからこそ意味を持つ、上場株式に含まれた「隠れ財産」の存在についてお話ししました。今回は、これを具体的にどのように活用していくことができるか、考えてみたいと思います。
遺産分割協議で有利に事を進めることができるかも?
前回、相続した上場株式の取得費は亡くなった方(被相続人)のものを引き継ぐということ、そして相続した株を売却して実現した含み損は、自身の株式投資による利益と相殺できることをお伝えしました。
この点を踏まえ、株式投資をしている個人投資家だからこそ可能な、有効活用の方法を考えてみましょう。
まず、遺産分割協議の話し合いについてです。相続財産は、遺言書がなければ「遺産分割協議」という話し合いをもって、どの相続人がどの財産を引き継ぐかを決めていきます。つまり、遺産分割協議とは、駆け引きも必要な交渉事なのです。
そこで、たとえば含み損のある上場株式を駆け引きの材料に使うことができれば、協議を有利に運ぶことができるかもしれません。
ポイントは、相手方にもこちらにもメリットがある提案をすること
具体的にはこのようなケースです。相続人が子ども2人(AさんとBさん)、相続財産は預貯金が2,000万円、上場株式が2,000万円です。そして、被相続人の上場株式の取得費は3,000万円でした。つまり上場株式に1,000万円の含み損がある状態です。節税効果でいえばおよそ200万円となります。
Aさんは株式投資をしている個人投資家、Bさんは投資らしい投資はしておらず、今後もするつもりはありません。
近年は各相続人の権利意識が強くなってきており、すべてを法定相続分(民法で定められた取り分の割合のこと)に応じて平等に遺産分割することが増えています。したがって、Aさんのほうから何も提案しなければ、預貯金も上場株式も2分の1ずつ相続するという結論になりがちです。
でも、上のケースでは、おそらくBさんは同じ金額なら、上場株式ではなく預貯金でもらいたいと思っているはずです。
そこで、Aさんの方から、「私が上場株式2,000万円を相続するから、君(Bさん)は預貯金2,000万円を相続していいよ」と提案してみるのです。実際には、「私は投資をしていて含み損が出ている株をもらえるとうれしいんだよね、君が投資をあんまりしてないなら、金額は同じだし株のほうを私にくれない?」と正直に話したいところ。おそらく、多くの場合で、この提案に乗ってくるのではないかと思います。
提案してみてダメならそれまでの話です。積極的に、株式投資をしていない相手方にとって有利な条件かつ、株式投資をしているこちらにとっても有利な条件を提示することがポイントです。
相続が起きたら個人投資家がまず調べておきたいことは?
上記のような提案ができるかどうかは、亡くなった方(被相続人)が上場株式を持っているかどうか、そして持っている場合はその株式について含み損をかかえているかどうかにかかっています。
通常、相続が発生すると証券会社から残高証明書を取り寄せます。しかしこれには相続発生時の株数が載っているだけで、亡くなった方がいくらで株を取得したかはわかりません。
そこで、証券会社に対して過去の取引記録(「顧客勘定元帳」などの名称)を依頼します。また、亡くなった方が、特定口座にて上場株式を保有していた場合は、過去の取引報告書などをみれば取得費が書いてあるかもしれません。
なお、亡くなった方の保有する上場株式に多額の含み益があったような場合は、逆に上場株式を後日売却した際に所得税・住民税の負担が生じます。遺産分割協議の際、将来の税負担という「隠れ負債」も加味してどの財産をどのくらい取得するかを話し合うようにしましょう。
損失の繰り越しの確定申告は忘れずに!
含み損のある上場株式を相続したら、それで終わりではありません。あくまでも含み損が残っているだけですから、これを上場株式にかかる他の利益と相殺しなければまったくプラスの効果が現れないのです。
もし、含み損のある上場株式を売却した際に、その年中に他の上場株式の利益とすべて相殺できるのであれば、何も問題ありません。しかし、実現した含み損と、他の利益を相殺しきれず、損失が残ってしまった場合は、必ず確定申告をして損失を翌年以降に繰り越しておいてください。
源泉徴収ありの特定口座では、何もこちらで手続きせずとも納税関係の処理は済んでいるため、損失の確定申告をつい忘れがちです。源泉徴収ありの特定口座であっても、損失の確定申告は自動的にはしてくれません。自分自身で申告の手続きをする必要がありますので、十分に注意してください。
含み損のある上場株式を贈与してもらうのも有効
ここまでの説明は、相続が発生したときの話でしたが、実は贈与の場合でも同じ扱いになります。つまり、贈与により受け取った上場株式の取得費は、株をあげた人(贈与者)のものを引き継ぐことになっているのです。
ですから、たとえば時価500万円・取得費1,000万円の上場株式の贈与を受けた場合、取得費-時価×20.315%=およそ100万円の節税効果が別途期待できることになります。
ただし、はじめからこの節税効果を期待して贈与を受けるのは問題です。贈与と、その株を売却するという行為が一連であるとみなされないように注意してください。どうせ贈与でもらうのなら、節税効果が見込まれる財産をもらう、というのも1つの手だと思います。
(足立 武志)
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