<投資の始め方>新入社員の5人に1人!? 企業型確定拠出年金の加入者が増加中!
トウシル / 2019年4月23日 8時23分
<投資の始め方>新入社員の5人に1人!? 企業型確定拠出年金の加入者が増加中!
企業型確定拠出年金の利用者は、2019年春に700万人超えの可能性が。新卒の5人に1人が対象か
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)が100万人を突破(2018年末時点)しました。つみたてNISAの100万人突破(2018年8月時点)も度々ニュースになりますが、実はこれ以上に利用者があるのが、「企業型確定拠出年金制度」です。
厚生労働省の公表資料によれば、2018年末時点での加入者は690万1千人(※1)です。これに対して民間の会社員、つまり厚生年金を適用されている正社員の数が3,822万人(※2)いますので、割合にして18%がカバーされていることになります(民間の厚生年金被保険者数は2017年3月末)。
なんと民間企業の会社員は6人に1人以上、もう少しで5人に1人が加入する割合で企業型確定拠出年金の口座を持っているのです。確定拠出年金制度の採用は4月の年度初めからということが多いのですが、おおよそ今年の春に700万人を突破する可能性も見えてきました。それはつまり新卒社会人のおよそ5人に1人は「入社していきなり、投資可能な口座を開設する」ということでもあります。
今回はそんな新卒の方と、昨年の入社でなんとなく確定拠出年金を運用している人たちに向けて、基本的な投資のやり方をアドバイスします。
データ出所:
(※1)DC加入者数
(※2)厚生年金被保険者数 P7[年金制度の仕組み図]
会社の投資教育は、90分の詰め込みが多い
企業型確定拠出年金の場合、会社は新入社員など新規加入者にむけて、制度に関する説明会を行います。会社の諸制度の説明会の中に含まれているようです。会社の福利厚生制度の説明や、有給休暇などのルールを説明する場に、確定拠出年金の説明会もあると考えてみてください。
説明会において厚生労働省のガイドラインでは
- 確定拠出年金制度の概要
- 金融商品の基本的知識
- 資産運用にかかる基本的理論
- ライフプランと老後資産形成
について触れることを求めています。そのうえで、
- 規約で採用されている金融商品の解説
が行われます。
本格的に説明をすると3時間は欲しいところですが、人事研修で確定拠出年金だけに3時間も割くわけにはいきません。一般的に60~90分の駆け足研修となるようです。
あなたの会社がもし確定拠出年金だったら「加入」を
会社の退職金制度として考えると「加入しない」のもおかしな気がしますが、確定拠出年金制度は加入が強制される場合と、選択制になっている場合があります。もし加入しない場合は毎月の掛金(会社が負担する分)について現金払いで給与や賞与に上乗せして精算給付されます。
これだけ聞くと「給料も増えるのでは?」と思いますが、実際には所得税・住民税、社会保険料などが引かれるため、手取りは70~80%くらいにダウンします。確定拠出年金に加入すれば、そうした引き算はなしに全額が口座に入金されます。
「現金でもらって、好きなところで運用をしよう」と思っても、運用利回り的には「スタート時点でマイナス20~30%」になってしまうというわけです。あなたの老後の資産形成を考えても「加入する」を選択するとより安心でしょう。
運用商品選びで悩むならバランス型ファンド(株式投資比率が高いもの)を1点買えば十分
投資教育をした場合でも、新卒社会人が「なるほど、私は分散投資をこのようなポートフォリオで組みますね」とシミュレーションを行いながら、1%刻みで調整できるリテラシーのレベルになれるわけではありません。
講師は「長期投資で考えよう」、「分散投資を行いましょう」といった基本的な説明はできますが相場観などを述べることは許されておらず(法律上禁止されている)、アセットクラスごとの期待リターンやリスク、相関係数を、数値で提供することもあまりできないからです(簡単なYes-No式のチャートで5パターンくらいの分散例示をすることが多い)。また、講師は「この○○投資信託がいいですよ。△△投資信託はダメ」と具体的な銘柄について言及できません(これも法律上禁止されています)。
これは金融機関の職員が講師となった場合、我田引水(がでんいんすい)の講義とならない様な「よい規制」でもある一方で、受講者側にとっては「で、どうすればいいの?」と最後にモヤモヤ終わってしまう欠点もあります。そこで、会社や金融機関の講師が言えないところをズバリ言いましょう。
1)投資商品の一覧表を探し「バランス型ファンド」をみつける
2)複数本あるならインデックス運用のタイプであること、信託報酬(運用管理費用)が安いほうを選ぶ
3)一般には「××バランス型ファンド(株式投資比率25、50、75)」とか「□□バランス型ファンド(安定型、安定成長型、成長型)」のように3種類が並んでいるが、一番株式投資比率が高いものを選ぶ
4)毎月の掛金の運用指図はそのバランス型ファンド「100%」と書く
です。
新入社員が、いきなり「外国株」「外国株」「国内債券」「外国債券」のインデックスファンドを4本選択し、かつ資産配分割合を検討することは現実的ではありません。また定期的なメンテナンスも実行困難でしょう。であれば、バランス型ファンドを1本だけ購入し、定期的なリバランス(リスク資産の値上がり値下がりに応じてリスクを調整するしくみ)はバランス型ファンドの運用方針にお任せしたほうがよいでしょうし、バランス型ファンドで国内外に分散投資を行うことをおすすめします。
ただし債券比率があまりにも高いバランス型ファンドを持つと、本人はリスクを取ったつもりが株価上昇時にはあまり利回りが得られないので、株式投資比率は一番高いものを選ぶといいでしょう。
こういう本音ベースのアドバイスは絶対に会社の人も金融機関の講師も言えませんから、参考にしてみてください(会社の先輩も金融機関の講師も、あなたの運用結果を保証できないので、言えないのは仕方がない。もちろん私も結果は保証しませんので、自己責任で最終決断をしてください)。
入社したら運用のことより仕事のことに集中でいい
最後にひとつ、確定拠出年金「以外」のアドバイスをします。確定拠出年金が自己責任とはいえ、実は新入社員は毎日運用に明け暮れる必要はありません。最初の資産配分で投資信託を組み入れたなら、そのまま一年くらい放置してもいいでしょう。
新卒社会人の掛金はだいたい月数千円が多いです。極端な話、2,000円の運用で必死になり何度も売買しても、たいした運用益を手にするわけではありません。投資信託の売買で月に何度もトレードしても、1日の基準価額は変わりませんので、あまりうまくいかない可能性があります。
むしろあなたが優先するべきは、あなたの本業となる仕事でビジネススキルを磨くことです。仕事に直結する専門知識が最も必要であり、それを貪欲に吸収するべきです。また、最速でチェックしたいのは資格給の有無です。国家資格などが業務に直結する仕事の場合、その資格取得が給与アップや昇格につながることがあります。
資格取得について補助金などがあり、テキスト代や受験費用がもらえるなら大チャンスですし、合格するとお祝い金がもらえる場合もあり、将来の昇格にも役立つことでしょう。
確定拠出年金の運用がどんなに上手くいったところで、あなたの生涯賃金以上を稼ぎ出すことはありません。一番の優先順位は「仕事」であることは忘れないようにしてください。そのうえで、定期的に年に一度くらいは運用状況をチェックしてみてください。
(山崎 俊輔)
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