石原順が薦める投資書籍
トウシル / 2019年5月2日 5時0分
石原順が薦める投資書籍
今週はレポートもゴールデンウイーク進行ということで、筆者がインスパイアされた投資関連書籍を紹介したい。『世界一簡単なアルゴリズムトレードの構築方法 あなたに合った戦略を見つけるために(ウィザードブックシリーズ)』著者:ペリー・J.カウフマン
この本はペリー・カウフマンが著した“A Guide to Creating A Successful Algorithmic Trading Strategy”というベストセラーの邦訳である。この本はタイトル通り、世界一簡単なアルゴリズム取引の入門書だ。
簡単だが、どうやって、運用をデザインすればいいかという本質的なことがたくさん書いてある。
数式がほとんど出てこないので、数学がわからなくても理解できる内容となっている。
ポジションサイズの計算方法では、
株式トレーダーの場合、まず全投資額をあなたがトレードする銘柄数で割る。
ポジションのサイズを計算するには、たとえば投資額が1,000万円で、トレードする銘柄数が10であれば、それぞれの投資額は100万円になる。(1,000万円÷10=100万円)
そして、100万円をその株価で割るとポジションサイズが算出できる。
といった具合だ。
先物の取引では、20日ATR(アベレージトゥルーレンジ)を使ったポジションサイズの決め方を紹介している。エクセルでの具体的な計算方法も書いてあり、本当にわかりやすい。
売買手法が良いか悪いかを判断するのに、カウフマンはインフォメーションレシオという指標を使っている。
シャープレシオは、
シャープレシオ=(年次リターンー無リスクリターン)÷年次リスク
だが、この計算式から無リスクリーターンを除き、年次リスクを年次リターンで割ったものがインフォメーションレシオである。
ドル/円(日足)とペリー・J.カウフマンのインディケーター
カウフマンは述べている。
「政府はいつでも、パーティーには遅れてやってくる。彼らが起こった問題に対処しなければ、同じことが再び起こる可能性がある。一方、彼らは安全を過信し、大きな危機がふたたび発生することはないと思ってします。もちろんそんなことはない。次の危機はまったく違った形で起こり、同じ規模で発生する可能性があるのである。同じように、1つのイベントのリスクをなくし、それによって将来的なリスクを避けることはできない。それでは解決にならない。重要なのは真のリスクを理解し、きちんと管理することである。リスクが大きすぎるのであれば、ポジションを小さくせよ。」
今のマーケットに対する警鐘に聞こえる。リスクは死なない。いつも生きているのである。相場は防御だ。
「多くの著者が曖昧にするような点を、カウフマンは非常に分かりやすく説明している。トレードを成功に導くための重要な要素に焦点を当てた本書は、アルゴリズムトレードを始めたばかりのトレーダーにとっても、経験のあるトレーダーにとっても、必携書であろう。勝率を高め、詳細に注意を払い、メカニズムを複雑にしすぎるな……。カウフマンのガイドラインに従えば、成功すること請け合いだ。ありがとう、ペリー」――スタンリー・ダッシュ(公認テクニカルアナリスト、TradeStationのApplied Technical Analysisのバイスプレジデント)
「私はカウフマンを25年前から知っているが、彼と話をしたことはなく、著書を読んだこともないが、彼からは何か価値のあるものを感じる。本書も例外ではない。本書はコンパクトながらも、『有言実行』の人物からの、そしてアルゴリズムトレードの必要性を説く人物からの実用的な情報が詰まった本だ。まずはここから始めてみてはどうだろうか」――ロバート・パルド(パルド・キャピタルの社長、『トレーディングシステムの開発と検証と最適化』『アルゴリズムトレーディング入門』[いずれもパンローリング]の著者)
『PRINCIPLES(プリンシプルズ) 人生と仕事の原則』著者:レイ・ダリオ
世界最大のヘッジファンドを運用し、史上最高のファンドマネージャーと言われるレイ・ダリオの投資哲学書「PRINCIPLES(プリンシプルズ)」の日本語版が発売され、ベストセラーになっているようだ。
相場や人生を突きつめて考えてみたい方は、ゴールデンウイークという余暇を利用して読んでみるのもいいだろう。レイ・ダリオは筆者のレポートでも度々取り上げているが、史上最高のファンドマネージャーと呼ばれている。1975年にブリッジウォーター・アソシエイツを2LDKのアパートで始めた。40年以上をかけて同社を世界最大のヘッジファンドに育てた人である。
ブリッジウォーター・アソシエイツという会社は、秘密結社めいた部分があり、その実態は謎と言われてきたが、意思決定、目標設定、人間関係、失敗との向き合い方、意見の対立の乗り越え方などが取り上げられているこの「PRINCIPLES(プリンシプルズ)」を読めば、おぼろげながらダリオが何を考えているかが浮かび上がってくるだろう。
以下の本も併せて読みたい。
『40兆円の男たち 神になった天才マネジャーたちの素顔と投資法』著者:マニート・アフジャ
『マーケットの魔術師(システムトレーダー編)』著者:アート・コリンズ
この本は、以下の14人のトレーダーのインタビュー集。私が影響を受けたのは、ロバート・パルドとラリー・ウィリアムズ。
ロバート・パルド (Robert Pardo)
「先物トレーダーはだれでも、基本的な目標として、最小のリスクで最大の金額を稼ぐことを目指すべきです」
チャーリー・ライト (Charlie Wright)
「研究の中で私たちが見つけた面白い事実は、結局指標は大事でないということです」
ラリー・ウィリアムズ (Larry Williams)
「富を作りだすのは、システムではなくマネーマネジメントです」
ルイス・ルカッチ (Louis Lukac)
「第一日目からこれまで、私たちが開発してきたのは全部メカニカルなものでした」
キース・フィッチェン (Keith Fitschen)
「断言できることですが、将来、分析したとおりにトレードできるという統計的信頼性を得るためには、開発サンプル中に何千ものトレードが含まれていなくてはならないのです」
ウェイン・グリフィス (Wayne Griffith)
「システム開発者ならだれでも、システムで対処しきれない状況のあることを認めるでしょう」
トム・デマーク (Tom DeMark)
「一七人のプログラマーを使って四~五年検証した結果、分かったことは、基本的な四~五種類のシステムの成績が一番だということでした」
マイク・ディーバー (Mike Dever)
「このことはどんなに強調しても十分ということはありません。ずっと先まで生き延びようと思ったら、ひとつのストラテジーやひとつの市場だけでポートフォリオを組むものではないのです」
ボー・サンマン (Bo Thunman)
「電話でいきなり、『もしもし、必ず儲かるシステムの名前を教えてほしいんだけど』と切り出されたことが数え切れないくらいありました」
ビル・ダン (Bill Dunn)
「私は手の込んだことをしなくても、チャートを見ただけで分かったのです。『ランダムなんかじゃない』ってね」
トム・ウィリス (Tom Willis)
「システムにかかわったときに、一番大きな課題となるのは、それを信頼することです」
ジョン・ヒル (John Hill)
「私が学んだのは、仕掛けは非常に難しくして、手仕舞いは簡単にできるようにするのが良いということです」
マレー・ルジェーロ (Murray Ruggiero)
「隣接的な数値という条件が嫌だというのでは問題が生じます。なぜなら、可能性としては、やはりどうしても隣接するパラメーター集合による結果が返ってくることになるからです」
ゲーリー・ハースト博士 (Dr Gary Hirst)
「『どんな市場でも、どんな時点でも通用する』と言えるようなものは存在しないのです」
「相場をどう認識するか?」という手段の一つとして、現在ではテクニカル分析の手法を理解することは不可欠である。筆者は30年超の期間、相場の世界に身を置いているが、システマティックなアプローチとシステマティックな損切りを使わないと、事業として相場で長期的に利益を上げることは難しいというのが実感である。
『市場心理とトレード ビッグデータによるセンチメント分析』著者:リチャード・L・ピーターソン
リチャード・L・ピーターソンはいわゆるビックデータを使ったアルゴリズム取引の専門家である。彼はウォール街最高の精神科医と呼ばれ、心の解明がトレード上達の近道!だとしてビッグデータによるセンチメント分析をおこなっている。彼の分析はロイターでも配信されている。
●ニュースやうわさやソーシャルメディアが市場価格にどのような影響を与えるかを予想する
●価格がいつトレンドを形成し、いつその方向が変わり、いつ急に動きが反転する可能性が高いのかを見極める
●バリュー投資とモメンタム投資のリターンを改善する
●商品や通貨や投機バブルなどの独特な価格パターンを利用する
●世界的な経済活動の変化を予想する
●投資の世界で群衆が最もよく犯す間違いを克服する
というのが本書の内容だが、市場心理を利用してトレードポイントを見つける方法を筆者もレポートで紹介したことがある。
恐怖と欲望指数は相場の底を教えてくれる!?
をぜひ読んでいただきたい。
CNNのFear&Greed Index (恐怖と欲望指数) は、投資家心理の7つの指標を分析し、市場の欲望と恐怖の度合いを示した指数である。
アルゴリズム系のファンドの中には、CNNのFear&Greed Index (恐怖と欲望指数) を相場の押し目買いポイントとして使っているところが多い。恐怖と欲望指数は先の観えない相場の道標となってくれるだろう。
「マーケットでも、ポーカーでも、エッジを持っていなければ、プレーをすべきではない。マーケットにおけるエッジは、3つの要素――情報・分析・人間の行動――から得ることができる。ただ、最初の2つは、世界が変化し続けるなかで、手に入れるのも難しいし、それを更新し続けるのはさらに難しい。一方、人間の性質である恐怖と強欲のサイクルは不変であり、持続可能な競争力を与えてくれる分かりやすい基盤となってくれる。しかし、これまではこの無尽蔵に近い潜在利益の源泉に関する総合的な指針がなかった。本書は、資本市場での人間の行動に関する世界的な研究者であるリチャード・ピーターソン博士が書いたこの分野の卓越した本である。真剣な投資家は全員、この素晴らしい本を読むべきだし、そうすれば将来にわたってその配当を受けることができるだろう」――ビル・ミラー(LMM LLCの会長兼CEO)
(石原 順)
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