トランプ大統領、米中通商協議を楽観視。日本株は下げ幅縮小。弱点は、大統領選向けの支持率と株価
トウシル / 2019年5月14日 15時31分
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トランプ大統領、米中通商協議を楽観視。日本株は下げ幅縮小。弱点は、大統領選向けの支持率と株価
米国が5月10日付で中国製品への制裁関税を10%から25%に引き上げたことで、中国が6月1日付の報復関税適用を宣言。これに対し、米国は13日に追加関税案を公表して応戦し、米中貿易戦争は新しい段階に入った。
6月28~29日に大阪で開催されるG20(先進20カ国・地域)首脳会議に合わせてトランプ米大統領と習近平中国国家主席の会談がセットされる見込みで、今後も両大国による駆け引きが続きそうだ。一方、対中交渉をリードして支持率を高めるトランプ氏。「弱点」への対処が首尾よく進めば、対中攻勢を一段と強めていくことになりそうだ。
13日のダウ急落で口先介入?トランプ大統領「非常にうまくいく気がする」
5月14日朝の東京市場は全面安でスタート。日経平均株価は前日比439円83銭安の2万715円45銭まで急落したが、その後は同日午前の取引終了までに底値から最大300円超の急速な下げ幅縮小を見せた。米中貿易摩擦激化となれば高確率で値下がりする村田製作所(6981)や信越化学工業(4063)、コマツ(6301)などの大型銘柄が朝方のマイナス圏から次々とプラス圏に浮上していった。
底値で買いを呼んだ材料はトランプ氏の発言。ホワイトハウスで13日開催された夕食会で、米中通商協議について「成功だったかどうか3~4週間で明らかにする」「非常にうまくいく気がする」と述べたことが通信社電として伝わった。市場参加者は半信半疑ながら、トランプ氏の発言を米中摩擦が早期解決に向かうサインと受け止めたのだ。
トランプ氏がこうした楽観的な見方を示したのは、株式市場への口先介入が目的だろう。13日のNYダウ平均株価が617.38ドル安と急落したのを見て、あわてて助け舟を出した格好だ。
トランプ氏の支持率は、米世論調査会社ギャラップが4月17~30日に実施した調査で46%と過去最高を記録。貿易戦争でも、中国が米国への報復措置として打ち出した関税適用額は600億ドルと、米国が10日付で導入した2,000億円ドルの半分にも満たず、交渉は明らかにトランプ氏優位で展開されている。
大統領の支持率は「ダウ」が決める!?経済が好調だからできた、貿易戦争への挑発
ただ、無敵に見えるトランプ氏に唯一の弱点があるとすれば、株価だ。米国では家計資産に占める株式や投資信託の比率が高く、「大統領支持率はダウが決める」と言われるほど。中国との駆け引きを有利に進めても、株価が下がってしまえば有権者の不評を買い、大統領の支持基盤が揺らいでしまう。今後も株価が急落するたびに、株式市場への「口先介入」が繰り返される可能性が高い。
来年11月の大統領選でトランプ氏が再選されるには、あと1年半ほど高支持率を維持しておく必要がある。再出馬断念に追い込まれれば、米中交渉に投じたこれまでの労力は水の泡。米国内でトランプ氏は「混乱を招いた大統領」のらく印を押され、交渉は中国の逆転勝利に終わることになる。来年11月の再出馬断念を中国が狙っていることをトランプ氏は熟知しているからこそ、交渉には必ず具体的な期限を付けている。
話は戻るが米国が10日付で実施した制裁関税引き上げは5月6日付けで発表された。これより前の3日には4月の雇用統計が公表され、失業率は3.6%と49年ぶりの水準に低下し、新規雇用者数は市場予想の1.5倍に相当する26.3万人増となるポジティブサプライズだった。経済指標が米国景気の順調な拡大を示し、株式市場が多少のネガティブ・サプライズに耐えられることを確認した上で、中国に揺さぶりをかけたのだ。
FRBに利下げを迫るトランプ大統領。FRB理事次第の相場に?
となると、トランプ氏が次に攻勢を強めるのは株価対策の完了後だろう。
トランプ氏はFRB(米連邦準備制度理事会)に対して1%の政策金利引き下げを執拗に要求している。先のFOMC(米連邦公開市場委員会)でFRBは現行金利維持を決めたが、米国の金利先物市場はすでに年内の利下げ開始を織り込みつつあり、FRBがトランプ氏の利下げ圧力に屈するのは時間の問題とみられる。
トランプ氏は保守色の強い経済評論家のスティーブン・ムーア氏ら知人の実業家を空席となっているFRB理事に送り込もうとしたが、身内の共和党内からも反発されて断念した経緯がある。トランプ氏は現在、非公式経済アドバイザーを務めるジュディ・シェルトン氏を推している。シェルトン氏はEBRD(欧州復興開発銀行)の米国代表としての実務経験もあり、ムーア氏のような激しいバッシングは避けられる見通しだ。
シェルトン氏のFRB理事就任が固まれば、金利引き下げを先取りして米国株が上昇した時が、トランプ氏が対中攻勢をさらに強めるタイミングとなりそうだ。
(トウシル編集チーム)
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