中国銀行セクター
トウシル / 2019年5月17日 10時0分
中国銀行セクター
4月の金融指標は予想から下振れ、短期の調整圧力も景気てこ入れ効果に期待
中国人民銀行(中央銀行)が9日発表した金融統計を見ると、国内金融機関の4月の人民元貸出増加額は前年同月比13.6%減の1兆200億元と、BOCIの予想(1兆3,000億元)および市場コンセンサス予想(1兆2,000億元)をいずれも下回った。企業向けの通常融資(短期および中長期貸出)の落ち込みが背景。3月に予想外に急増した新規融資が、4月には“正常化”する形となった。1-3月の国内景気の安定化を受けた金融政策の微調整も、4月の数字に影響したとみられている。
実体経済の流動性を示す独自指標、「社会融資総量」(TSF)は、4月に1兆3,600億元と前年同月比で4,161億元縮小。これも市場予想(1兆6,300億元)を下回った。米中通商摩擦は再び激化しているが、BOCIは国内経済が明らかに失速しない限り、TSFが再び加速する可能性は低いとの見方。19年1-3月には再び債務が積み上がり、レバレッジ(過剰債務)解消に向けた政府の18年の努力がほぼ水泡に帰した現状を指摘している。それでも金融政策面では、対象領域を限定した一段の緩和余地が残るとの見方だ。
人民銀が4月にMLF(中期貸出制度)やリバースレポ(売り戻し条件付き債券購入)、TMLF(標的型中期貸出制度)を通じて資金を供給した効果で市中の流動性は予想を上回った。4月半ばに上昇した銀行間金利は人民銀の動きを受けて低下。全国の民間融資の総合金利指数は5月3日時点で15.83%と3月末を0.03ポイント上回る水準だった。
H株銀行銘柄は4月前半に値上がりした後、下げに転じた。相場全体のボラティリティが高まる中、「港股通(サウスバウンド・ストックコネクト:本土からの対香港株投資)」を通じた銀行銘柄の投資は、4月も引き続きロング主体だった。
銀行セクターに関する最近のニュースは以下の通り。大手行の19年1-3月期決算では純金利マージンがやや悪化。不良債権発生率などの指標においては引き続き、分類方法の厳格化が影響した。中国銀行保険監督管理委員会(CBIRC)は4月末、銀行のリスク資産分類に関する暫定方法を通達。90日以上の延滞債権をすべて不良債権に分類することなどを義務付けた。人民銀行は5月6日、中小行およそ1,000行を対象とした預金準備率引き下げを発表した。15日付で8%に引き下げる。
BOCIは銀行銘柄の現在株価の19年予想PBR(株価純資産倍率)が平均0.63倍にとどまる点に触れ、セクター全体への強気見通しを維持した。米中協議を巡る波乱や金融緩和余地の縮小が短期的な調整圧力につながるが、積極財政策や各種改革のプラス効果が数四半期にわたって続くと予想。対象を限定した一段の緩和措置も見込めるとした。また、19年の銀行資産の健全化期待や利益見通しの明確さを指摘。短期的には中信銀行(00998)、中国光大銀行(06818)、中国農業銀行(01288)など、バリュエーション面の安全マージンが大きく、ファンダメンタルズが改善傾向にある銘柄を選好した。
(Bank of China int.)
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