米中対立激化…このままではリーマン級のショックが起こる?
トウシル / 2019年5月20日 7時42分
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米中対立激化…このままではリーマン級のショックが起こる?
米中の対立深まる。日経平均の上値は重い
先週の日経平均株価は1週間で94円下落し、2万1,250円となりました。先週は、米中対立がどんどんエスカレートし、世界経済を破壊してしまう不安から、日経平均が一時2万751円まで売られました。ただし、米中協議は継続しており、「いずれ何らかの落としどころを見つけて合意する」期待も根強くあることから、その後、買い戻されました。それでも、先行きが読めなくなったことから、上値の重い展開が続いています。
ここでいつものように、2018年1月以降、日経平均を動かしてきた要因を振り返ります。
日経平均週足:2018年1月4日~2019年5月17日
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/9/e/-/img_9e43673e70e4180f142e8db2ee08fbe298198.png)
2018年は、「世界まるごと好景気」から始まりました。景気・企業業績は好調でしたが、貿易戦争激化と米金利上昇の不安が、日経平均の上値を抑えていました。2018年2月と10月に、米金利上昇をきっかけとした世界株安があり、日経平均も急落しました(緑の矢印で表示)。
2018年12月以降、世界株安がさらに進み日経平均は一段安となりましたが、このときは株安の理由が変わりました。中国景気が変調をきたし、つれて世界的な景気悪化が懸念されるようになりました。そのため、米金利上昇不安はなくなりました。
世界景気悪化と、貿易戦争激化の不安が、2018年12月と2019年5月の世界株安および日経平均急落の要因となりました(赤の矢印で表示)。
ファーウェイ社への禁輸は米中双方にダメージ大きい
先週、米中対立はさらに先鋭化しました。トランプ米政権が15日、中国の通信機器最大手ファーウェイ社への製品供給を事実上禁じる制裁措置に踏み切ったからです。
米商務省は、制裁対象のイランと不正に取引したとして、ファーウェイ向けの輸出を実質禁止する措置をとりました。さらに、トランプ米大統領は、米国企業によるファーウェイ製品の調達を禁じる大統領令に署名しました。これで米国企業は、ファーウェイ社へ製品を売ることも、ファーウェイ社製品を買うこともできなくなります。ファーウェイへの禁輸措置は、一定の条件のもとで、米国以外の国の企業にも適用されます。日本企業にも、ダメージが及ぶ可能性があります。
ファーウェイ社は、世界から半導体、電子部品など約7兆円の調達をしています。それが禁止されると、ファーウェイ社の生産に甚大な影響が及ぶ可能性があります。同時に、ファーウェイに製品を供給していた米国、欧州、日本などの企業にも、ダメージが大きくなる可能性があります。
先週の、上海総合株価指数は、ファーウェイ社への禁輸措置発動を嫌気して、下落が続きました。
日経平均・NYダウ・上海総合株価指数の動き比較:2017年末~2019年5月17日
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/6/a/-/img_6a7fbfaa22b5b807262042ae95bbf01658089.png)
貿易・ハイテク戦争は、米中両国の消費者を巻き込む展開に
トランプ政権は10日、中国からの輸入品2,000億ドル(約22兆円)にかけている関税を10%から25%に引き上げました。さらに、今後、関税をかけていない3,000億ドル(約33兆円)にも、25%の関税をかけると表明しています。中国も、アメリカからの輸入品に報復関税をかけると表明しています。
本当にそこまでやってしまうと、米国の消費者に大きな影響が及びます。米国はこれまで、中国から輸入する消費財への関税賦課はなるべく避けてきましたが、最後に残った3,000億ドル相当の輸入品は、携帯電話など消費財が多くなっています。ここに25%の関税をかけるということは、米国の消費者にとって、中国からの輸入品にかかる消費税が25%引き上げられるのと同じ効果があります。
中国でも、米国から輸入する農産物の関税を引き上げれば、食品の価格が上昇するため、中国人民の生活に影響します。
いつまでも制裁・報復続けていると、米国も中国も経済がダメージを受け、2008年のリーマンショック級のショックが起こると不安を語る人もいます。
リーマン級ショックは起こらないと考える4つの理由
私は、米中対立がエスカレートしてリーマンショックのような景気後退を生じる可能性は低いと考えています。それには、4つの理由があります。
【1】米中交渉が一定の落としどころに落ち着くと予想
トランプ大統領は、来年、大統領選挙を控えています。したがって、深刻な景気後退を招くまで対立を引っ張るわけにはいかないと考えられます。一方、中国も景気悪化で、ゆとりがなくなってきています。習近平国家主席に対する、中国国内での批判も徐々に高まっています。米中とも本音では何らかの形で交渉合意に持って行きたいと思っているはずです。
抜本的な解決策はないが、目先、部分的にでも何らかの形で合意を形成すると予想しています。
【2】資源安メリットが世界景気を押し上げる効果が継続
2015年に、原油をはじめとした世界中の資源価格が急落しました。その恩恵が日米欧アジア経済にメリットを及ぼしています。資源安メリットのプラス効果がまだ続いていると考えています。
【3】AI、IoT、5G、ロボットの拡大続く
IT化サービス化社会の進化は止まりません。今、米中ハイテク戦争の影響で、やや人為的に進行が抑えられていますが、米中ハイテク戦争が一服すれば、再び、AI(人口知能)、IoT(モノのインターネット化)、5G(第5世代移動体通信)、ロボットが世界的に拡大する流れが続くと考えています。
【4】金融危機になる懸念は小さい
2008年のリーマンショックは、世界的な景気後退と金融危機が同時に起こったため、深刻なショックとなりました。1998年の世界景気後退(中南米・アジア・ロシア危機)も、景気悪化と金融危機が同時に起こったため、深刻なショックとなりました。
一方、金融危機を伴わない景気後退(たとえば2001年のITバブル崩壊による景気後退)は、大きなショックとはならず、比較的、短期で回復に向かっています。2019年の世界的な景気悪化は、金融危機をともなわない短期的な悪化になると予想しています。
したがって、短期的なショックで日経平均が下がる局面は、長期的に日本株の買い場と考えています。
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