インド市場の優勢に注目!インド株式ETFや関連銘柄は?
トウシル / 2019年5月23日 7時55分
インド市場の優勢に注目!インド株式ETFや関連銘柄は?
モディ政権継続期待でインド株式指数は最高値を更新
今週は、米中貿易摩擦の激化や長期化不安が株価の上値を抑える展開となっています。こうしたなか、史上最高値を更新し堅調を維持するインド市場に注目したいと思います。
図表1は、インド株式を象徴するSENSEX指数、TOPIX(日本株式)、上海総合指数(中国株式)の推移を比較したものです(2016年初=100)。インド株式は、昨年の8月に続いて、今年に入っては4月に史上最高値を更新。その後は、6週間続いた下院総選挙(4/11 -5/17:有権者は約9億人とされる)の結果を巡る不透明感を主因に一服商状となりました。今週初から徐々に選挙の出口調査結果が明らかとなり、ナレンドラ・モディ現首相が率いるBJP(インド人民党)を中心とした与党連合が議席の過半数を獲得する可能性が高まったことで、5月20日にSENSEX指数は再び高値を更新しました。
貿易摩擦の激化、中国の景気減速不安、業績見通しを巡る懸念を払しょくできない東京市場を横目に、グローバル投資家がインドの政治的安定性、構造改革、高い経済成長率に対する期待を取り戻したことが背景とみられます。インド株式も、昨年秋以降においては世界株式下落の影響を免れませんでしたが、経済成長の柱(はしら)が個人消費を中心とする内需となっており、米トランプ政権が仕掛ける貿易戦争による影響が比較的限られているとの見方も支えとなっています。
図表1:インドの株価平均は再び最高値を更新
インドの成長期待が高まっている理由を知る
インドの経済成長については、2018年に続いて2019年、2020年、2021年も実質GDP成長率(前年比)が+7%台を維持する見通しで、先進国はもちろん他主要新興国の成長率を凌いでいくと見込まれています(図表2:民間エコノミスト予想の平均)。
インドの成長率見通しは、中国を上回っており、「アジアの成長を牽引する国は自由民主主義で資本主義経済のインド」との印象を経済界や内外投資家に与えています。また、成長のけん引役が個人消費、投資、農業など「内需」が中心であることにも注目です。
2014年に首相となったモディ氏による「高額紙幣の使用停止」(脱税のまん延を防ぐ目的で実施)など構造改革がもたらした「痛み」で、17年から18年にかけて成長率はやや鈍化しましたが、改革効果が幅広い分野に広まり国内需要が回復。今後は貧困率の低下と1人当りGDP(国民総生産/約2,036ドル/IMFの2018年予想)の底上げが「5年の任期延長」を得た新モディ政権の課題とされます。
図表2:インドの成長率予想は主要国でトップを維持
インド経済の長期的な成長エンジンは「総人口の増勢」と言われています。図表3が示すとおり、国連の人口調査・予想によると、インドの総人口は約13.4億人で、現在は(中国に次ぐ)世界第2位ですが、2025年前後には14億人台で中国を上回り、2030年には15億人に達する見込みです。加えて、総人口における「生産年齢人口(15 歳以上65 歳未満)」の比率は2040 年まで上昇し続ける見通しです。
長期的な投資戦略を考えるにあたっては、高い経済成長が見込めるインド株式や「インドでの事業や投資で収益を拡大できそうな企業」(インド関連株)を検討したいと思います。
図表3:インドの総人口は増加を続ける見通し
インドに投資するには?ETFと関連銘柄に注目
総人口が増加していることに加え、1人当りGDP(所得)も増加を続けると考えられており、内需(インフラ、自動車・家電などの耐久消費財、食料・日用品などの消費財、サービス需要)が拡大しています。モディ首相は2014年に就任以降、「モディノミクス」と呼ばれる規制緩和や税制改革を推進。外資系企業の誘致を介して技術移転や資本流入を促進しています。
「メイク・イン・インディア」(国内製造業の活性化、雇用創出、輸出拡大)と呼ばれる政策に加え、「デジタル・インディア」(情報通信網の整備や行政手続きのデジタル化)、「クリーン・インディア」(清潔なトイレの全国的整備など)も推進しています。
こうした改革は、インドへの直接投資(企業進出)や間接投資(証券投資)の投資魅力を高めやすいと考えられます。インドでは英語ができるビジネスマンやエンジニアが多く、政治体制が自由民主主義、経済が資本主義であることも日米欧を中心とするグローバル企業や外国人投資家に安心感があるとされます。
とはいえ、インド市場への投資にあたっては、新興国市場にありがちな個別銘柄リスクや比較的高い取引コストの「壁」があることは否めません。そこで本稿では、具体的な投資アイデアとして、インド株式に分散投資できる東証上場ETF(1678)を図表4でご紹介します。同ETFは、楽天証券が「手数料0円ETF(無手数料)」の対象にしている84本の東証上場ETFのうちの1本です。
また、日本企業のなかで、インドで事業機会を拡大させている企業もあります。図表5では、インドで活躍している(あるいは今後インドで活躍が期待できそうな)「インド関連銘柄」を時価総額の降順で一覧にしました。
図表4:インド株式に連動を目指す東証上場ETF
図表5:国内の主な「インド関連銘柄」
主なインド関連銘柄(時価総額の降順)<参考情報> | ||||
---|---|---|---|---|
コード | 銘柄名 | 年初来 騰落率 |
予想 PER |
インド進出の概略 |
9984 | ソフトバンクグループ | 38.1 | 9.0 | 現地新興EC企業に出資。太陽光発電事業に投資。 |
9983 | ファーストリテイリング | 17.2 | 40.5 | 中国での成功に続き、2019年秋にインド初出店。 |
6758 | ソニー | 0.8 | 12.5 | バンガロールにソフトウエア開発拠点を設立。 |
6367 | ダイキン工業 | 18.3 | 19.7 | インドのエアコン市場で首位を誇っている。 |
6501 | 日立製作所 | 22.8 | 8.0 | 高速鉄道やデジタル分野で積極進出している。 |
7269 | スズキ | -8.2 | 10.4 | マルチ・スズキはインドの自動車市場で首位。 |
8113 | ユニ・チャーム | -4.5 | 31.3 | 「赤ちゃん大国」で紙おむつなどの拡販目指す。 |
7銘柄の算術平均 | 12.1 | 18.8 | ||
*単位 年初来騰落率:% 予想PER:今期/倍 *上記は参考情報であり、特定の銘柄を推奨するものではありません *上記の銘柄はインドだけで事業を展開しているわけではありません *予想PERはBloomberg集計による市場予想平均 出所:Bloombergのデータより楽天証券経済研究所作成(5月23日) |
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(香川 睦)
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