令和スタートから1カ月。あのコモディティ銘柄が大幅上昇中!
トウシル / 2019年6月3日 14時0分
令和スタートから1カ月。あのコモディティ銘柄が大幅上昇中!
新元号「令和」が2019年5月1日にスタートして早くも1カ月。超大型連休があったこともあり、日本市場の令和初日の営業日は5月8日(火)で、月末の5月31日(金)までの営業日数は19日でした(米国市場の5月の営業日数は24日)。
この1カ月間、各市場、各銘柄はどのような値動きだったのでしょうか。ここで、さまざまな意味で「激動」だった、それぞれの市場の値動きを振り返ってみます。
景気に敏感な原油、金属は、株と同様マイナス圏に
令和スタートから1カ月間、振り返ってみれば、貿易戦争が激化していることを報じるニュースを見ない日はありませんでした。
4月まで鎮静化の兆しが見られていた米国と中国の貿易戦争において、激化が目立ちました。再び関税合戦が始まったこと、米国が中国個別企業製品の不買運動を始めたこと、その報復で中国が米国に対してレアアースの「不売」を示唆といったことなどが続いています。
加えて先週、米国がメキシコからの輸入品目の関税を引き上げるなどの動きがありました。この1カ月間、貿易戦争の範囲が米国、中国からメキシコにも拡大したと言えます。
令和スタートからの1カ月間は、激化の一途をたどった貿易戦争の流れを受け、景気の先行指標である主要な株価指数や、景気動向に敏感なコモディティ銘柄の下落が目立ちました。
ただ、一方で、景気の動向よりも、作付けの進捗や、作柄の状況が強く材料視される穀物銘柄では、株価指数や景気動向に敏感なコモディティ銘柄とは一線を画する動きになりました。
1カ月間の主要な株価指数やコモディティ銘柄の騰落率は以下のとおりです。
図1:令和初月の各種市場の騰落率(2019年5月1日時点と、5月31日時点の比較)
この間、主要な株価指数であるNYダウ平均株価は、貿易戦争の激化を受けて下落しました。また、貿易戦争の激化による消費減少懸念や米国内の供給増加圧力によって、原油相場は大幅下落となりました。
一方、金はやや上昇、そしてトウモロコシは大幅上昇となりました。貿易戦争が激化して景気が減速すれば、トウモロコシの主要な用途であり、食肉文化を支える重要な役割を担っている「家畜のエサ」の消費が減少する懸念はあります。しかし、価格が突出して上昇している様子から、現在のトウモロコシ相場には、貿易戦争のマイナス要素を打ち消すだけのプラス要素があることが分かります。このプラス要素は、なんなのでしょうか。
作付け、発芽の遅れが深刻な穀物は3銘柄そろって大幅上昇中
令和初月、貿易戦争が激化する中、トウモロコシ相場が大きく上昇しました。
以下は、トウモロコシと主要の農産物の価格推移です。
図2:穀物相場の値動き(2019年5月)
トウモロコシ、大豆、小麦、3つの穀物銘柄は、いずれも5月半ばより騰勢を強めています。要因は、それぞれの先物市場で最も取引量が多いトウモロコシで、今年の生産量が大幅に減少することを示唆するデータが出始めたためです。
以前「2月の大雪と肉食人口増で、2019年のトウモロコシ相場に異変!?」でレポートしましたが、毎年5月は主要生産国の米国でトウモロコシの作付けが行われ、発芽する時期に当たります。
5月下旬は、例年であれば作付け進捗率(※)は90%以上終えています。発芽率は60%程度で推移しています。
※3月末に公表した作付け意向面積に対し、実際に作付けが行われた面積の割合。
しかし、2019年は天候不順の影響で、5月下旬の作付け進捗率は58%、発芽率は32%とともに例年の半分程度の進捗となっています。このままいけば、今年秋の収穫量は想定の半分程度になってしまう可能性が出てきます。
図3:米国産トウモロコシの作付け進捗率と発芽率
このように足元のトウモロコシ価格の上昇は、天候不順のため、作付けと発芽が極端に悪い状況となり、今年の生産量が想定を大きく下回る可能性が生じたことが要因になっているとみられます。
そして今週から、トウモロコシの生育状況のデータの公表が始まります。これは、作付け進捗、発芽率に加えて、発芽して生育しているトウモロコシの状況を5段階で評価するものです。この重要なデータについては、次週以降の本レポートで詳述します。
一方の大豆は、米中貿易戦争で関税引き上げ対象となっている具体的な品目で、中国による米国産大豆の輸入減少、米国の在庫増加が顕著になっていますが、トウモロコシ価格の上昇を受けて価格が上昇していると考えられます。
投機筋の流入が目立つコーヒー価格の5月上昇率は、15%超え
そして今、穀物に加えてコーヒーの価格も上昇しています。2019年5月はおよそ16%の上昇です。
図4:コーヒー先物の価格推移
以下は米国のコーヒー先物市場の投機筋の買い越し幅(買い枚数 - 売り枚数)の推移です。マイナス圏が縮小していることが分かります。5月上旬、底堅く推移していたコーヒー価格が、投機筋の流入によって反発色を強めたと考えられます。
図5:コーヒー先物の投機筋の買い越し幅
以前のレポート「チャートが描いた『鬼の角』。綿花相場を動かしたゴーストを暴く」で述べた、一部の穀物銘柄の上昇をきっかけとして他の農産物銘柄が物色されて価格が上昇する「農産品の連鎖的同時上昇」が起きている可能性があります。
令和初月となった2019年5月は、米中貿易戦争の激化によって景気に敏感な株価指数や一部のコモディティ銘柄の下落が目立ちました。しかし、天候や生育サイクルが主要な変動要因である農産物においては、その限りではなく、むしろ独自要因で大きく上昇しました。
特にコーヒーは、以前のレポート「底値を維持する5つのコモディティ銘柄。リーマン・ショック後の安値がサポート!」で書いたとおり、歴史的な安値水準にあった銘柄の一つです。
今後の動向に注目したいと思います。
(吉田 哲)
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