対メキシコ関税回避・米利下げ期待高まる:日本株は「買い場」の判断を継続
トウシル / 2019年6月10日 7時46分
対メキシコ関税回避・米利下げ期待高まる:日本株は「買い場」の判断を継続
先週は、NYダウが5日連続高で4.7%上昇
先週の日経平均は1週間で283円上昇し、2万884円となりました。先週は、NYダウが5日連続高で合計1,168ドル(4.7%)上昇したことが追い風となり、日経平均も買い戻されました。
日経平均・NYダウ・上海総合株価指数の年初来の動き比較:2018年末~2019年6月7日
先週のNYダウ上昇(1週間で+4.7%)につながった2つの強材料
1.米利下げ期待
2.対メキシコ関税発動が回避されるとの期待
ただし、米中貿易戦争が激化、中国景気が悪化する不安は継続しています。先週の上海総合株価指数は、1週間で2.4%下落しました。
米景気減速で、米利下げ期待が高まる
米景気の減速懸念が強まる中、6月4日(火)パウエルFRB議長が「景気拡大を維持するため、われわれは適切な行動を取る」と発言したことを受けて、米国金融市場で利下げ期待が高まりました。NYダウは利下げ期待を好感して上昇しました。
実際、7日(金)に発表された5月の米雇用統計で、注目度の高い非農業部門の雇用者数は7万5,000人増(前月比)と、事前の市場予想(18万人増)を大幅に下回りました。景気好調と言われる20万人増も大きく下回っており、米景気に減速の兆しがあると見なされました。
米5月雇用統計:非農業部門雇用者増加数(前月比):2018年1月~19年5月
米景気は足元、短期的に減速しつつあると考えられます。ただし、完全失業率は3.6%と約49年ぶりの低水準にあり、米景気は少々減速しても「堅調」には変わりないとの見方があります。
米5月雇用統計:完全失業率の推移:2014年1月~19年5月
つまり、米景気は「利下げが期待できる程度に」減速しているが、「景気後退が不安視されるほど」悪化しているわけではないと考えられます。つまり、米国株にとって都合が良い「適温経済」にあると考えられます。
対メキシコ関税発動を回避
トランプ大統領は7日、10日に予定していたメキシコに対する関税(全輸入品に5%)の発動を、「無期限」で見送ると発表しました。関税発動の理由として、メキシコが米国への不法移民流入の防止策を取っていないことを挙げていました。今回、不法移民対策でメキシコと合意したことを理由に、関税発動を回避します。
トランプ大統領は、移民対策で合意できなければ、対メキシコ関税を6月10日5%→7月1日10%→8月1日15%→9月1日20%→10月1日25%と、段階的に25%まで引き上げるとしていました。
そうなると、米国経済もメキシコも重大なダメージを受ける可能性がありました。特に、米国や日本の自動車産業へのダメージが大きくなるところでした。メキシコで自動車を生産し米国に輸出するビジネスモデルが幅広く定着していたからです。
メキシコは、中米諸国からメキシコを経由して不法移民が米国に流入するのを防ぐために、グアテマラとの国境に治安部隊を配置して監視する案を示しました。トランプ大統領はこれを評価し、関税引き上げを撤回。米―メキシコ貿易戦争の激化はなんとか避けられる公算となりました。
今週の日経平均は反発へ。ただ、本格的な上昇トレンドに入る条件はまだ整っていない
対メキシコ関税をぎりぎりで回避したことを好感して、今週の日経平均は反発が続くと考えています。
ただし、日本株が本格的な上昇トレンドに入るための条件はまだ整っていません。以下、2つの不安が残っています。
1. 米中貿易戦争・ハイテク戦争が激化する不安
2. 米利下げがあった時に円高(ドル安)が進む不安
メキシコとの交渉術を見る限り、中国との交渉でも、トランプ大統領はなんらかの「落としどころ」を用意していると考えられます。米中貿易戦争がエスカレートして、米景気後退を招くことになるのは、避けるたいはずです。ただし、中国との対立・覇権争いは、メキシコとの対立以上に根が深く、簡単には解決に向かわないと考えられます。
いずれにしろ、日本株は、長期投資で「買い場」を迎えていると判断しています。日経平均は、以下のチャートをご覧いただくとわかる通り、近年、景気の転換点で「二番天井」「二番底」をつけてトレンド転換するパターンを繰り返しています。
日経平均株価の推移:2015年1月5日~19年6月7日
日経平均は、貿易戦争への不安などから二番底を模索しつつありますが、ここは長期投資で良い買い場と判断しています。
その理由は、3つあります。
【1】日本株が配当利回り・PER(株価収益率)などの株価指標から見て割安であること
【2】日本企業の財務・収益基盤が堅固になってきたこと
【3】世界景気は2019年に悪化・20年に回復と予想していること
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(窪田 真之)
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