「老後資金2,000万円必要」をきっかけに、家計と人生のPDCAを回す
トウシル / 2019年6月18日 15時0分
「老後資金2,000万円必要」をきっかけに、家計と人生のPDCAを回す
今回、金融庁が示した人生100年時代の方針「老後自助資金2,000万円必要」は、多くの人に衝撃を与えました。これによって、節約や資産運用の重要性に目を向けることにつながるなら良いなと思う半面、無理な節約を始める人や、パニックのままリスクの高い手段で資産運用に走る人が増えるのではないかと不安にも感じます。
日本では、金融教育を受ける機会がほとんどありません。社会に出て、今回のように「自助努力が必要」と急に突きつけられても、今から何をしていいか分からない方も多いでしょう。
では、人生100年時代を難なく過ごすにはどうするべきか。
一人ひとりのハッピーはさまざまですが、全ての人に共通の対処法「100歳までの家計シミュレーション分析」によって、人生100年時代を乗り切ることができるのです。その方法について紹介したいと思います。
家計から考える人生の収支
家計というのは「収入-支出」で成り立っています。実にシンプルです。
一生涯の収入(現役世代の所得と老後の年金の合算額)から一生涯の支出を引き算し、マイナスにならなければ、お金に困らず生涯を終えることができます。逆にマイナスになってしまえば、家計は破綻します。
人生100年時代と言われるようになり、金融庁が報告書を発表する事態になった今、何が変わったのでしょうか。
分かりやすくするため、収入面と支出面をザックリ比較します。
収入面
→ 収入はあまり変わっていません。
→ 老後の年金はわずかに減少、もしくは現状維持の傾向です。
支出面
↑ 長生きする分だけ老後の必要資金は大きく増えます。
↑ 円安のリスクやインフレのリスクがあります(物価上昇)。
収入面は増えずに、支出面だけが増加傾向にあります。
「現実を見て、早めに対策を」が今回の金融庁の発表の主旨でしょう。
実際、2,000万円必要なのか
しかし、私は必ずしも「2,000万円必要」とは思いません。
なぜなら、支出には個人差があり、その差が大きすぎるのです。
個人の年金受給額によるものの、2,000万円も必要ないどころか、年金だけでやりくりできる方もいるかもしれません。逆に、生活レベルによっては2,000万円でも全く足りず、5,000万円、7,000万円必要になる方もいるでしょう。
「一般的に、老後までにいくら用意したらいいですか」
こうした質問はセミナーなどでもよく受けますが、「個人差が大きいので、個別にシミュレーションしてみなければ分かりません」と、筆者はいつも正確に回答しています。
どのような老後生活を過ごすかによって必要金額は大きく異なるため、個別具体的にシミュレーションしてみない限り、大ざっぱには言えないのです。
では「2,000万円必要」と発表された今、私たちは何から手を付けるべきなのでしょうか。
家計のPDCAを回す
上手に「人生100年時代」を生き抜くためには、自分のお金を、きちんと自分でコントロールする必要があります。
まず始めにすべきことは、無理な節約や、大きなリターンを目的にしたリスクの高い資産運用ではありません。しかも、目的や目標が全くないまま、とりあえず節約を始めたところで根本的な解決にならず、長続きもしないでしょう。
まず必ず行うべきは、自分の将来にわたる収入、支出の100歳までのシミュレーション分析です。
そして、シミュレーションから明らかになった資金の不足を解消するため、節約や資産運用などの対策を講じます。これを行いながら、定期的にチェック、更新、軌道修正することが必要です。
正に、キャッシュフローをベースとした家計のPDCA(計画・実行・検証・改善)を回すのです。その手順をまとめます。
家計のPDCA手順
P(計画):自分の現在の立ち位置、将来の予測をきっちり立てるためにキャッシュフロー(お金の出入り)シミュレーションを作成。分析して課題を明確にする
D(実行):課題に合わせて、無理なく継続可能な節約、資産運用など対策を行う
C(検証):定期的な点検
A(改善):定期的な改良
いかがでしょうか。難しく見えるかもしれませんが、自分のお金流れ全体の動きをきちんと把握して定期的に見直していくことが最も重要なのです。
人生100年時代は自己責任時代
人生100年時代を生きる私たちは、今後ますます自分で考えて行動しなければならなくなることが予想されます。
例えば、これまでも子供の教育方針や住宅環境など、あらゆる場面で自身の選択を迫られる場面は多かったと思います。その一つ一つの判断は人生を左右してきたはずです。今後はさらに、その判断によって歩む人生の質が変わってしまうかもしれません。
だからこそ、将来、子供たちがお金で困らないように、なるべく早く金融教育を受けさせられるよう、働きかけも必要なのかもしれません。
そして、すでに社会に出て、家計を管理する立場になっている大人も、遅くはありません。
資産運用であれこれ悩むより前に、まずは現状から将来までのキャッシュフローシミュレーションをきちんと行うのです。それは自分の人生に向き合う作業でもあります。
そうすることで初めて、本当に自分に合った資産運用の手法が見えてくるはずです。具体的な運用手段の選択はそれからでも十分に間に合います。
『自己責任時代には、まずはきちんとしたお金の管理を』
これが、人生100年時代を上手に生き抜くための最初の一歩となるのです。
髙塚大弘
株式会社フィナンシャルクリエイト
(トウシル編集チーム)
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