緊急レポート!どう見る?安倍首相イラン訪問中の「ホルムズ海峡被弾事件」

トウシル / 2019年6月14日 12時32分

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緊急レポート!どう見る?安倍首相イラン訪問中の「ホルムズ海峡被弾事件」

“ホルムズ海峡”は世界の原油輸出量のおよそ35%が通過するエネルギー流通の要衝

 昨日(2019年6月13日)午後、ホルムズ海峡付近で、日本関連の貨物船が何者かによる攻撃を受けました。夕方から、テレビやインターネットでは、船体が損傷し、炎が上がっている生々しい映像が繰り返し流れています。

 バーレーンに展開する米海軍第5艦隊が救難信号を受信し、救援活動を実施。攻撃を受けた2隻の船の乗組員は、近辺を航行中の別の船に救助されるなどして全員無事とのことでした。また、日本へのエネルギー供給については、世耕経産大臣はまったく問題は生じていない、としています。

 事件が起きたのはペルシャ湾とインド洋の間、世界屈指の「チョークポイント(choke point)」として名高い、「ホルムズ海峡」付近です。先月もサウジアラビア関連の船が魚雷で攻撃を受けるなど、付近を航行する船への妨害行為が起きています。

 以下の図のとおり、ホルムズ海峡は、世界の石油輸出量のおよそ35%がこの海峡を通過しています(筆者の推定/2017年時点)。

図1:ホルムズ海峡を通過して輸出される石油のシェア

出所:UNCTAD(国連貿易開発会議)データをもとに筆者推計

 チョークポイントとは、詰まる、狭くなるなどを意味する「チョーク(choke)」の言葉のとおり、地理的に川や海の幅が部分的に狭くなっている地点を指します。

 狭いうえ、陸や島の間を縫うような地形であることから、水深が比較的浅く、また、迂回にかかる日数や運行コストを削減できる利便性があることから、船やタンカーの往来が激しいという特徴があります。

 南北アメリカ大陸の先端を迂回せずに大西洋と太平洋を行き来できるパナマ運河、アフリカ大陸の南端を経由せずにインド洋と地中海を行き来できるスエズ運河などが代表例です。

 運河以外にも、ホルムズ海峡のように陸と陸、あるいは島と島の間で部分的に狭くなっている地点である海峡もチョークポイントといえます。

 マレー半島(マレーシア)とスマトラ島(インドネシア)の間に位置するマラッカ海峡や、インド洋側からのスエズ運河へ入る際の入り口にあたりアラビア半島の南西部に位置するバブ・エル・マンデブ海峡付近(ソマリア沖)などがその例です。

 これらのチョークポイントは,資源や食糧などの輸出入において大きなリスクになることがあります。

 ペルシャ湾周辺国でもホルムズ海峡を経由しない輸出経路を持つ国はいくつかあります。サウジは紅海側に、UAEはインド洋に面するオマーン湾側にそれぞれ輸出港があります。イラクも、北部の油田地帯で生産された石油の一部は、トルコを経由して地中海から輸出されています。必ずしも全輸出がホルムズ海峡を通るわけではありません。

 ただ、これらの事情を考慮したとしても、世界全体の3分の1強はホルムズ海峡を経由して輸出が行われていると推測されます。日本が輸入する原油の8割強がこの海峡を通過しているとの試算もあります。

 中東情勢の悪化懸念、世界的な需給ひっ迫懸念などにより、昨日昼(日本時間)に51ドル前後だったWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油価格は昨晩53ドルまで上昇しました。14日午前時点では52ドル近辺で推移しています。

安倍首相のイラン訪問中の日本関連の船への攻撃の意味は…?

 今回の事件で筆者が考える留意すべき点は、安倍首相が、米国とイランの間を取り持つことを目的の一つとしてイランを訪問している最中に起きたことです。安倍首相のまさに目の前で日本関連の船が攻撃を受けたとなると、さまざまな思惑が生じます。

 もし仮に、この攻撃がイランによるものだとすれば、イランは、米国と親密な国の元首である安倍首相を人質のような形にして、米国に対し、これ以上制裁を強めたり継続したりした場合、(米国と)同盟国にさらに危害を加える、という非常に強い警告を発したともとれます。

 もしそうだとすれば、日本はイランの外交カードになった、そしてイランは、外交関係があった日本を外交カードにしなければならないくらい米国の制裁に苦しんでいる、と言えます。

   また、アジアの国家元首の訪問時に、アジア関連の船への攻撃が行われたことを考えれば、このような事件は今後も、中東から大量に石油を輸入する日本以外のアジア諸国にも起き得ることを示唆しています。

  そしてアジアだけでなく、ホルムズ海峡を経由して石油を購入するヨーロッパやオセアニアの国にも、同様のことが起きる可能性があることが明示されたと言えます。

ホルムズ海峡が航行不可となっても、OECD石油在庫で約170日間はカバーが可能か

 米国や日本など先進国を始めとした36カ国(中国を除く)で構成されるOECD(経済協力開発機構)が持つ石油在庫の推移に注目します。

図:OECD石油商業在庫 

単位:百万バレル
出所:EIA(米エネルギー省)のデータより筆者作成

 この1年間、OECD石油在庫は緩やかな増加傾向にあります。2019年5月時点でおよそ29億バレルです。

 単純計算ですが、足元のOECD石油在庫29億バレルを、ホルムズ海峡を経由して輸出される石油の量として試算した日量1,630万バレルで割ると177日。つまり仮にホルムズ海峡が航行不可となった場合、OECD(経済協力開発機構)石油在庫で輸出の減少分をまかない続けることができます。

 また、この在庫は商業在庫であり、各国政府の備蓄は含まれていません。これらの点を考慮すれば、仮に、ホルムズ海峡が航行不可となった場合でも、ただちに私たちの生活に悪影響は出ず、順次備蓄を取り崩しながら、例えば米国などの中東以外の国からの石油の調達を進めることでしばらくは対応が可能と考えられます。

 今回のホルムズ海峡での事件と、再来週に迫ったOPEC(石油輸出国機構)総会での減産継続か否かの決定プロセスへの影響は、来週月曜日の週間コモディティレポートで考察します。

(吉田 哲)

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