ホルムズ海峡緊急レポート続報!OPECは減産を継続するのか?

トウシル / 2019年6月17日 15時0分

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ホルムズ海峡緊急レポート続報!OPECは減産を継続するのか?

 広く報じられているとおり、先週13日、ペルシャ湾とインド洋の間にあるホルムズ海峡付近で日本船籍を含むタンカー砲撃事件が発生しました。

 本事件については以前の「緊急レポート!どう見る?安倍首相イラン訪問中の『ホルムズ海峡被弾事件』」をご参照ください。

 この事件発覚直後、原油相場は反発しましたが、ほどなく下落しました。この値動きは中東情勢だけが原油相場の変動要因でないことを改めて印象づけたと言えます。

 今回のレポートでは、ホルムズ海峡事件の他、先週公表された複数の原油関連の重要なデータを踏まえた上で、今月末で終了するOPECプラス(石油輸出国機構=OPECと、非加盟国で構成される組織)の減産に関して、産油国会合(6月25~26日予定)でどのような決定がなされるのかを考察します。

図: WTI原油先物(※)の値動き(期近、日足、終値) 

単位:ドル/バレル
出所:CME(シカゴ・カーマンタイル取引所)のデータをもとに筆者作成
※WTI=ウエスト・テキサス・インターミディエート

ホルムズ海峡事件、重要データの公表など、トピックが重なった先週を振り返る

 ホルムズ海峡砲撃事件は多数のメディアで報じられています。日本を始めとしたアジアの石油消費大国は、中東から多くの石油を輸入しているため、エネルギー供給が脅かされるのではないか? という不安心理が高まりやすくなっています。

 現状、今回の事件が原油相場を押し上げる大きな要因になっていないのは、冒頭で述べたように中東情勢だけが原油相場の変動要因ではないためです。

 現在の原油相場は、来週に迫った大イベントに関わるさまざまなデータを材料視していると考えられます。以下は先週(6月9日週)に起きた主な出来事と発表データの概要です。

図:6月9日の週に起きた出来事・発表された統計

出所:各種データ元より筆者作成

 世界の石油在庫、米国の原油在庫が増加していること、米国の原油生産量と減産に参加しているOPEC(石油輸出国機構)11カ国の原油生産量が増加したことが明らかになっています。これらは供給圧力となり、原油相場には下落圧力として作用しているとみられます。

 逆に、ホルムズ海峡事件による中東からの供給減少懸念、OPECのうち減産に参加していない3カ国の原油生産量が減少したこと、OPECプラスの5月の減産順守率が高水準となったことは上昇要因として作用しているとみられます。

 特に先週公表された各種データは、来週(6月25~26日)の産油国の会合を控え、OPECプラスの減産が継続するか否かを左右する重要な材料になるとみられます。

OPECプラスは、減産を続けるかやめるか、来週の総会で決定しなければならない

 6月25日(火)に第176回OPEC定時総会、翌26日(水)に第6回OPEC・非OPEC閣僚会議が予定されています。また、スケジュールは公表されていませんが、これまでの経緯から6月に開催される予定のOPEC総会に決議事項を勧告する機能を有するJMMC(共同減産監視委員会)が、OPEC総会前日の24日(月)に開催される可能性があります。

 これら3つの会合を経て、2017年1月から始まり、6月末で終了する予定の協調減産が、続くのか終わるのかが決まるとみられます。以下は、決定事項のシミュレーションです。

図:OPECプラスの会合(6月25~26日)で協議される協調減産の行方について

出所:筆者作成

 仮にOPECプラスが減産を続けることを決定した場合は「現行維持」か「減産緩和」か、やめることを決定した場合には「段階修了」か「延長なし」か、いずれかを選択することになるとみられます(「減産強化」は可能性が低いと考え、上図に含まず)。

 今週から来週初めにかけて、会合前の減産継続を示唆する要人の発言や会合での減産継続決定(減産緩和であったとしても)は原油価格の上昇要因に、会合前の減産終了を示唆する発言や会合での減産終了決定(段階終了であったとしても)は下落要因になると考えられます。

昨2018年6月のOPEC総会同様、限定的な増産を可能にした減産継続で決定する!?

 上記4つの選択肢の中で、どれが最も可能性が高いのでしょうか? 6月9日の週に起きた出来事や発表されたデータを参照すると、筆者は「減産緩和」であると考えています。

図:6月9日の週に起きた出来事・発表された統計から推測されるOPEC総会での決定事項 

出所:筆者作成

 上記の流れで、昨2018年6月の総会と同様、限定的な増産実施を含んだ「減産継続」となった場合、原油相場も昨年同様、目先、上昇することが予想されます。

 ただし、以下のように、減産順守率が下落した時、同時に米国の原油在庫が増加した場合、原油相場が下落しやすい傾向がある点に注意が必要です。

図:米国の原油在庫(左軸)の原油価格(右軸)推移

出所:EIA(米エネルギー省)、OPECおよびCMEのデータをもとに筆者作成

 昨2018年6月のOPEC総会で、減産緩和(減産は継続するが、減産順守率が100%を下回らない範囲で増産ができるようにすること)が決定されました。当該総会の前月(2018年5月)の減産順守率は147%であったため、100%を上回った47%分にあたるおよそ日量85万バレルを増産できるようになりました。

図:減産順守率の推移(OPECプラス合計)

出所:OPECのデータをもとに筆者作成

 上図のとおり、2018年は6月の総会前をピークとして年末にかけて減産順守率が低下しました(2018年11月は98%、12月は91%と、2019年1月からの現行の減産実施のためにサウジやロシアが “駆け込み増産”を行ったため、100%を下回る減産非順守となった)。

 減産順守率が下落している=減産の効果が弱まっているとき、週次ベースで公表される米国の原油在庫が予想を上回って増加した、あるいは前週を上回ったなどとなると、原油市場はその在庫の増加を嫌気して下落する場合があります。

 特に、今年5月から6月にかけて、米国の原油在庫が増加した場合に原油相場が下落するケースが目立っています。仮に来週の総会で減産緩和が合意となり、減産順守率が下落すると、もともと今年は米国の原油在庫の増減が意識されやすい状況にあるため、若干の在庫の増加でも原油相場が短期的に下落する可能性があります。

 今回は、ホルムズ海峡の事件に加え、先週公表されたさまざまなデータを参照し、来週のOPEC総会の決定事項を考察しました。中東情勢という目立つ材料だけでなく、各種データ、そして特にこの1週間は、OPEC総会を控え、関連する要人の発言に注意が必要だと思います。

 

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(吉田 哲)

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