J-REIT【4】上旬と下旬で傾向が違う!市場傾向の真実
トウシル / 2019年6月21日 5時8分
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J-REIT【4】上旬と下旬で傾向が違う!市場傾向の真実
経済・投資に関する話題の内容を、証券マンの筆者独自の視点で、掘り下げていくこの連載。今回は「J-REIT」(ジェイ・リート:国内の上場不動産投資信託)の値動きの特徴をお伝えします。
前回までの記事
【1】J-REITの主な特徴:J-REITが成長している理由は?長期投資に向いているワケ
【2】J-REITの不動産タイプ別の特徴:オフィス、施設…どこに注目する?
【3】J-REITの値動きの特徴:今は買いどき?売りどき?
「真実」なんておおげさですが、J-REIT市場にはちょっと面白い特徴があります。もちろん、過去データのため今後の保証はできませんが、今後も続くようなら上手に運用できるかもしれません。
1カ月の前半に売られることが多く、後半は買いが多い
J-REITは2003年から「1カ月の前半に売られることが多く、後半は買いが多い」
傾向があります。
J-REIT指数 2003年3月末から2019年5月末まで、上旬と下旬の値動きの合計、年別
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/e/-/img_be75fbdb939147001122eb20197b52ca17096.png)
注:上旬は前月末終値から15日終値まで。15が休日の場合は以降最初の営業日終値まで。
下旬は上旬の最終営業日終値から月末終値まで。月末が休日の場合には月中の最終営業日の終値まで。
2003年は4月から9か月分、2019年は5月まで5か月分
データ作成は単純です。J-REIT指数は2003年3月31日が1,000ポイントです。同4月15日は1,026.30ポイントなので、【+26.30】が2003年4月上旬のデータです。同じように同4月30日は1,079.29ポイントですので、4月15日の数字を引いた【+52.99】が2003年4月下旬のデータです。これを2019年「5月31日の1,916.92ポイント」まで作成して、年別にまとめると上記の表になります。
見ての通り、下旬はすべてがプラス。リーマンショック、チャイナショック、東日本大震災、欧州債務危機とありましたが、すべてプラスなのです。
一方の上旬は、4勝13敗です。下旬の合計4,213.86から上旬の合計3,296.94を引き算すると、916.92となります。スタートが1,000ポイントなので、これに足すと2019年5月31日、1,916.92ポイントと一致します。ということは、J-REIT指数がスタートしたときに投資をした後、ずっと持っていたら、1,916ポイント。毎月下旬だけに投資をしてたら4,213.86ポイントの分、利益が出たということ。
実際には、途中でもらえる配当に違いがあるため、単純比較はできないのですが、今までの傾向はとれると思います。
ちなみに、月次の上昇・下落の回数を集計したら、以下の通りとなりました。
2003年3月から2019年5月まで、全194カ月分のデータ
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/e/d/-/img_edea2c12eeb3f2b7d17c9da7073c1d222359.png)
J-REITには投資信託の影響が
実は、この現象にはある程度の根拠があります。
国内でJ-REITの取引シェアが高いといわれる投資信託。J-REITは利回りが高いこともあり、毎月分配型が多く設定されています。「毎月分配される額」と「それはいつ支払われるか」が気になるところです。
まずは、「毎月分配される額」ですが、ファンドの検索サイトで「J-REIT」を検索したら、89銘柄出てきました。金額は約2.4兆円。ざっと利回りを4%とすると約1,000億円が年間配当額になります。1カ月だと約80億円。
次に「それはいつ支払われるか」ですが、出てきた89銘柄を金額が大きい順に並べて、上位20ファンドに注目しました。これだけで2兆円を超えており、金額ベースで85%を占めます。その20ファンドの決算日がこちらです。
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/1/d/-/img_1de899d75038c0b33024ff191167c5b815209.png)
なんと、全体の8割は12日から20日の「中旬」に集中しています。筆者の推測ですが、おそらく分配金を支払うために、ファンドマネージャーは、決算日の直前にある程度の「売り」を出すのだと思います。これが15日前後にJ-REITの「売り」が出るひとつの要因だと考えられます。
ちなみに、参考ですが、J-REITではなく、日本で設定されているグローバルリートのうち、残高が500億円以上の14銘柄の分布は以下の通りです。
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/2/9/-/img_2964722c59ab1aaec9dc1da1ee3a8b2c13287.png)
もうひとつ、考えられる根拠があります。日本では「お化粧買い」と呼ばれるマーケット用語があります。これは「機関投資家が運用しているファンドなどの評価をよく見せるために、月末や決算期末に運用対象となっている株式などに買い注文を入れること」を意味します。月末は高くなりそうですよね。
さらに付け加えると、サラリーマンの給料日って、25日が多いと思います。年金は15日ですね。ということは、月の後半に資金が入ってくるわけで、ファンドに個人の資金が流入するのは下旬が多くなりそうです。
…そうですね。「ファンドの決算日」はともかく、「お化粧買い」はJ-REITでなくて、普通株でも同じ条件です。最後に、日経平均で上記と同じような計算をした結果を参考データとして記載します。
日経平均株価指数 2003年3月末から2019年5月末まで、上旬と下旬の値動きの合計、年別
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/b/6/-/img_b68088883bd68e977508d211394e334f18909.png)
2003年3月から2019年5月まで、全194カ月分のデータ
![](https://media.rakuten-sec.net/mwimgs/3/a/-/img_3a66c5f4ff01cbfb98578699972c15e73479.png)
「上昇」と「下落」を比較すると、「回数」はほぼ同じですが、「通算」は圧倒的に下旬がプラスとなりました。
ただし、J-REITと違うところは、足元、2017年以降はそれまでよりもその傾向が弱くなっています。また、それ以前でも、2011年や2013年は上旬の方がかなり成績良好です。今年も今のところ、上旬の勝ちですね。J-REITほどの「下旬」パワーはないようです。
(覆面ファンドマネージャー)
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