退職金、いくらもらえるか知ってる?「老後に2,000万円」のカギ、退職金と企業年金を把握する方法
トウシル / 2019年7月3日 11時59分
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退職金、いくらもらえるか知ってる?「老後に2,000万円」のカギ、退職金と企業年金を把握する方法
「退職金・企業年金」の額を知っている人は3人に2人
「老後に2,000万円」という言葉が、それだけで話のつかみとして使えるほどに国民の共通キーワードとなるとは2カ月前に誰が予想したでしょうか。「人生100年」というキーワードとともに、これからの老後資産形成を考えていくにあたって共通認識が増えたのであればそれは良いことです。
しかし、誤解があって不満や怒りがまだ残っているようなら「老後に2,000万円」の認識の広がりはもったいないことだと思います。これはむしろ、「教えてくれないお金の常識」がオープンになったと考えるべきだからです。
「退職金とプラスアルファの資産形成をして引退しよう」というのは本来、多くの人が目指していることですが、具体的な必要金額はよく分からないままでした。特に退職金や企業年金への無理解と無関心は深刻です。
あなたの「老後に2,000万円」に退職金・企業年金はカウントしていいのに、その金額を知らない人が多すぎるからです。
金融庁の報告書でも、フィデリティ退職・投資教育研究所のアンケート調査結果を紹介していますが、なんと「2人に1人は退職直前まで退職金額を知らない」というデータがあるほどです。
データはなかなか衝撃的です。退職時点まで金額を知らなかった人が31%、退職前半年くらいまで金額を知らなかったが20%ですから、2人に1人が該当します。これに1年以内に知った人(12%)を足すと、59歳になるまでほぼ3人に2人は自分の退職金額を知らなかったというのです(59歳というのは60歳定年とした場合)。
このような状況で、老後のための資産形成が計画的に成り立つはずがありません。「老後に必要な額の目標」もなければ、「そのうち退職金・企業年金に期待できる金額」も知らずに、どうしてiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)やNISA(ニーサ:少額投資非課税制度)を計画的に利用できるでしょうか。
しかし「退職金額なんてどこで調べたらいいのか分からないよ」という人も多いと思います。そこで、退職金・企業年金の専門家の顔も密かに持っている私が、「退職金・企業年金の調べ方」についてアドバイスしてみたいと思います。
退職金・企業年金の見込み水準を把握する方法はあるのか
まず、退職金制度は実施義務がないので「あなたの会社がやっているか、やっていないか」は会社で確認するしかありません。統計的には80%の会社に退職金制度があり、中堅企業から大企業になれば実施率90%以上になります。
採用にあたっては退職金制度あり、とどこかに書かれていると思いますし、制度がある場合は、必ず規定が必要になり、社内で開示されることになっています。多くの場合、イントラネットにファイルが保存されているはずです。まずはこれを確認してみてください。
退職金については退職金規程が、企業年金が設置されている場合は企業年金規約が設けられ、ファイリングされているはずです。しかしこの規定、計算式や自分の数字がわかりにくいのがほとんどです。
ざっくりでもいいので、水準をチェックする代案はいくつかあります。
(1)モデル退職金額を調べる
社内資料や労働組合の配付資料などに「モデル退職金額」が書かれていたら、これをひとつの目安とします。あくまでモデルなので、80~90%くらいのつもりで考えておいたほうがいいですが、検討の大きなヒントになります。
(2)「見える化」されている金額を確認する
「ポイント制退職金」「キャッシュバランスプラン(確定給付企業年金の制度設計のひとつ)」「企業型の確定拠出年金」が採用されている場合、これらは「今の持ち分額が見える化」されている制度です。確定拠出年金は、自分のIDでログインすれば、昨日付の時価残高が確認できますし、それ以外の制度は年に一度程度、持ち分のポイント等が通知されます。ただし「今現在」なので、「今から定年まで」に獲得する金額は反映されていませんのでその分を割り増しして見込むことになります。
(3)人事部の友人かOBに聞いてみる
社内に人事部の友人がいる場合、あるいはOBに話しやすい先輩がいた場合、直接質問してしまうという手もあります。人事部としては個人の金額は言えませんが、会社としてのモデル水準がどれくらいか目安を教えてくれることでしょう。OBの先輩は具体的な金額は教えてくれないでしょうが、百万円単位くらいでイメージを伝えてくれるはずです。
(4)直球で質問をしてみる
退職金制度は労働条件のひとつなので、質問していけないことはありません。質問をしたら「あいつは辞めるつもりか」と勘ぐられそうで聞けないという人もいますが、そういうことはほとんどありません。特に確定給付企業年金の事務局がある場合は、相談窓口を設けていることが多く、また相談内容を会社に開示しないのが一般的です。堂々と、ズバリ質問してみてもいいでしょう。
ちなみに退職金・企業年金の水準についてですが、企業ごとに千差万別というのが正直なところです。先ほどのフィデリティ退職・投資教育研究所の調査では、平均値を1,500万円としています。
大企業や公務員の場合、2,000万円に達することも珍しくありませんが、中小、中堅企業の場合500~1,000万円ということもしばしばです。平均を気にするより、自分の会社のモデルを確認することを優先してください。
退職金をもらえない働き方、退職金が減ってしまう働き方
退職金をもらえない働き方
ちなみに契約によって退職金をもらえない人もいます。契約社員や嘱託社員については契約書次第です。正社員に退職金を支給するとしていても、あなたは対象外になっているかもしれませんので契約書を確認してください。アルバイト・パートも退職金適用外とするのが一般的です(なお「同一労働同一賃金」の考え方にもとづき、正社員以外にも退職金を支給すべきと言う判決が出始めており、将来は変化があるかもしれません)。
派遣社員も、登録している派遣会社次第ですが、多くは退職金を設定していないと思われます。
フリーランスや個人事業主は、退職金が欲しいなら自分で退職金を積み立てていかなければなりません。iDeCo(年81.6万円)、小規模企業共済(年84万円)をできるだけ使ってください。いずれも全額所得控除なので、使うほど確定申告時の所得が下がり納税額も減らせます。
退職金が減ってしまう働き方
まず、産休や育休あるいはその他の休職期間がある場合、退職金の上積みはその期間は反映しないのが一般的です。退職金や企業年金の計算ルールにもよりますが、時短勤務なども影響を受けることがあります。その点では子育てをした女性の退職金は男性より少なくなりがちです。
また、転職をした人は、退職金を途中で一度もらってしまっているので、モデルより少なくなることに留意する必要があります。40歳から転職したのなら、22歳~60歳の勤続年数のほぼ半分くらいしか働けないので退職金額も下がります。ただし退職金額は年収に比例するのが一般的なので、40~60歳に得られる退職金の権利は、22~40歳で獲得する権利より多くなります。つまり半分より多い金額は期待できます。
自己都合で辞めた場合、基本的に退職金は減額されます。また懲戒解雇は不支給とするのが一般的です(※)。
※確定拠出年金のみ、勤続3年以上なら減額は1円もされない
もちろん、管理職になったり昇格昇給した人とそうでない人では、賃金だけでなく退職金にも影響が出ます。
退職金を知った上で、iDeCoやNISAを積み上げていこう
改めて、読み直してみると、なかなか他で得られない情報かもしれません。しかし「老後に2,000万円」のスタートラインに立つためには重要で役立つ情報ではないでしょうか。
本来であれば退職金・企業年金の情報発信は会社の役割なのですが、「退職金のことなど気にせず働け」という古い企業文化が残っているのか、なかなか改善されない現状があります。
自分から情報を取りに行かないと「老後で2,000万円」のうちいくらが準備済みなのかが分かりませんし、またもっと貯めていこうという計画を立てることもできません。ぜひ退職金・企業年金の概要を把握した上で、老後の資産形成をスタートしてみてください。
(山崎 俊輔)
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