今さらながら「PBR」について改めて考えてみる(その2)
トウシル / 2017年3月16日 0時0分
今さらながら「PBR」について改めて考えてみる(その2)
前回は、割安なはずの「低PBR銘柄がなぜ上がらないのか」にスポットを当ててみました。今回はその逆、割高なはずの「高PBR銘柄の株価はなぜ上昇するのか」について考えてみたいと思います。
マーケットの矛盾?PBR10倍超えでも上昇を続けている銘柄が多数存在する事実
高PBR銘柄のランキングを検索すると、3月10日(金)現在で、PBRが20倍以上の銘柄が27あります。PBR10倍以上でみると96銘柄、PBR5倍以上は283銘柄あります。
株式投資の教科書では、「PBRが高い=割高」という説明がなされていますが、実際は、PBRが高い銘柄がゴロゴロしています。まずはこの事実を押さえるようにしてください。
では、PBRが高い銘柄は、みな株価が割高なのかといえば、決してそんなことはない、というのが筆者の結論です。
高PBRの理由は大きく分けて2種類
実は、PBRが高い銘柄には大きく分けて2種類あります。
(1)業績はあまり芳しくないものの、「過小資本」のためPBRが高くなってしまうというケースと、(2)「将来性が高く評価」されているためPBRが高くなっているケースです。
(1)のケースは、足元の業績が芳しくなく、債務超過転落ギリギリなど、純資産の額が小さい銘柄が該当します。1株当たり純資産が非常に小さくなってしまうため、PBRの計算上、どうしても数値が高くなってしまうのです。これに該当すると考えられる銘柄は、例えば21LADY(3346)、アクロディア(3823)、ジェイホールディングス(2721)などです。
(2)のケースは、増収増益が続き、さらに今後も同様の傾向が続くと思われる銘柄のうち、特に成長性が高いとマーケットで評価されている銘柄が該当します。これに該当すると考えられるのは、スタートトゥデイ(3092)、MonotaRO(3064)、日本M&Aセンター(2127)などです。
まずは各銘柄の業績や財務状況をみて、PBRが高い理由がどちらなのかを正しく把握する必要があります。
なぜPBR10倍超えでも上昇を続けるのか
例えば、スタートトゥデイのPBRは約28倍と、驚異的な高さですが、株価は上昇を続けています。PBR25倍のMonotaRO、PBR19倍の日本M&Aセンターも同様です。月足チャートをみていただくと、長期的に株価が大きく上昇していることが分かります。
直感的に考えれば、PBRが10倍ともなれば、かなり割高と思いたくなります。でも、これらの銘柄のように、PBR10倍からさらに株価が上昇している銘柄も少なくないのが事実です。いったいどのような理由からなのでしょうか?
それは、「成長株」の株価は「将来の利益」ベースで株価が形成されるため、それにつられてPBRも「高くなってしまった」からに過ぎないなのです。
成長株をPBRで評価しているプロ投資家はいない
スタートトゥデイ、MonotaRO、日本M&Aセンターなど、増収増益が続き将来高成長が期待される銘柄は、「成長株」のカテゴリーに分類されます。
こうした成長株に投資する際、プロ投資家が1株当たり純資産の数値を参考に投資判断を下すことはまずありません。何で判断しているかといえば、将来得ることができるであろう利益の水準です。
「将来得られるであろう利益を予想」→「それに基づいた予想PERから適正株価を算出」→「適正株価より足元の株価が安ければ買う」→「結果としてPBRが上昇する」、という流れです。
ちなみに、高PBRの成長株は、得てしてPERも高い水準になります。今後、高い成長率を維持しながら業績が拡大すると、多くの市場参加者が予想しているためです。
なお、PBRを基準に成長株に投資しているプロ投資家はいないといえども、ややこじつけ気味に高いPBRを正当化すれば、「高成長により急速なスピードで純資産が増えていく」と投資家が予想しているため、ということになります。
PBRが高いというのは、将来の利益水準という、純資産とは異なる尺度で株価が形成された「副産物」に過ぎません。高水準のPBRという状況から、さらに株価が何倍にも上昇することも全く珍しくないのです。
さらには、高PBRの成長株は、バブル気味の状況にまで株価が上昇することも少なくありません。株価が上昇を続ける限りは、安易に売却せずに上昇についていくべきです。
PBRが高いという理由で、その銘柄への投資を控えたり、保有株を売却してしまうのは非常にもったいないと思います。
高PBR銘柄の株価が天井をつけて下落に転じる理由とは?
もちろん、将来の高成長が期待されている高PBR銘柄は、単に保有を続けていれば勝手に株価が上昇を続けてくれるのかといえば、決してそんなことはありません。
高成長が続くと市場参加者が判断して株価が形成された結果、副次的に高PBRとなっているわけです。したがって、成長率が今までの予想より鈍化すると市場参加者が判断した場合、その鈍化後の成長率に基づいた適正なレベルになるまで株価が下落し、それに伴ってPBRも低下します。
ただし、足元でついている株価が、高い成長率が適切に反映された妥当な水準なのか、それとも割高なのかどうか、個人投資家が適切に判断するのは非常に困難です。
プロ投資家が高成長株の成長鈍化を察知したら、株価は下落を始めます。私たち個人投資家は、上昇トレンドだった株価が下降トレンドに転じるタイミングで、保有株を売却すればよいと思います。
(まとめ)高PBR銘柄で注意すべきことは?
最後に、これまでのご説明を踏まえ、高PBR銘柄について注意するべき点をまとめておきます。
- 高PBR銘柄となる理由は「過小資本」もしくは「将来性評価」
- 高成長が期待される銘柄に投資する際、投資家はPBRを売買の判断基準にはしていない
- 高PBRだから割高とは限らない。高PBRを理由に買いを控えたり、保有株を売ってしまうのはもったいない
- 高成長期待が鈍化すれば株価も下落に転じるが、いつ天井をつけるかは分からない。下降トレンドに転じたら売却、とすればよい
特に将来の高成長が期待されている高PBR銘柄については、高PBRを気にせずに他の要素(将来の利益の見込みや株価のトレンドなど)を重視して売買をすればよい、というのが結論です。
(足立 武志)
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