深刻化する北朝鮮問題! 万一に備えた損失軽減策
トウシル / 2017年9月7日 16時0分
深刻化する北朝鮮問題! 万一に備えた損失軽減策
個人投資家は北朝鮮問題にどう対応していくべきか
以前のコラムで、北朝鮮問題に備えて個人投資家はどう動くべきか、筆者なりの考え方をまとめていました。
その後、北朝鮮問題はさらにエスカレート。8月下旬には日本上空をミサイルが通過し、初めてJアラートが発動しました。そして9月3日の核実験によって、過去最大級の規模の地震の揺れが観測されたと報道されています。
このように、北朝鮮はいつ何が起きてもおかしくない状況になっています。そこで今回は以前のコラムを踏まえたうえで、より具体的にどのような行動をとるべきか、まとめてみたいと思います。
株価が下降トレンドに入っている場合
ある緊急事態の影響により株価が急落した場合の対応方法は、株価トレンドがどうなっているかによって、2パターンあります。
1つは、すでに日本株のマーケットが低迷し、個別銘柄の多くが下降トレンドにある場合です。この場合、通常下降トレンドにある銘柄の保有はしませんから、投資可能資金のうち、実際に日本株へ投資している金額はそれほど多くはないはずです。
たとえば投資可能資金のうち、株に投資している額が30%のケースで考えてみます。保有している銘柄が上昇トレンドにあるなら、下降トレンドに転換したところで売却するのがセオリーでしょう。
まず、大きな出来事がない中で株価がズルズルと下落していくような場合は、下降トレンドになったところで売却すればいいだけです。
一方、対応が難しいのが突発的な緊急事態の影響を受けて、株価が急落した場合。上昇トレンドだった株価がチャート上で窓をあけて一気に下落し、下降トレンドに急変する可能性が高いからです。
このような暴落相場で気になるのは「いつ売れるか?」。これについては、2008年のリーマン・ショック時を含めた、過去の緊急事態の経験則から見て、最悪でも現在の株価から30%ほど下がれば売却することは可能です。
つまり、投資額が全体の30%、最悪でも現時点から30%値下がりしたところで売却できるとすれば、投資可能資金全体から見れば「30%×30%=9%」のダメージで済むということになります。
緊急事態が発生して株価が急落したとき、損失が投資可能資金の9%で済むのであれば、特段の対応する必要性は低いと考えられます。
日本株に多額の投資をしている場合はどうする?
もう1つのパターンが、日本株全体が堅調な局面にあり、上昇トレンドの個別銘柄が多数存在する場合です。現状の日本株はこのケースに該当すると考えられます。
現在の日本株は上がるものは上がる、それ以外は上がらないという二極化相場となっていますが、年初来高値更新銘柄が高水準に達しているなど、手掛ける銘柄さえ間違わなければ投資環境としては悪くありません。筆者も、長期間右肩上がりを続けている上昇トレンドの銘柄に集中して投資しています。
この場合、投資可能資金のうち実際に投資している金額が大きくなるため、株価が突然急落したときのダメージが大きくなります。
たとえば、投資可能資金の80%を、株式へ投資していたとします。
この状況で突然株価が急落した場合、現在の株価から30%低いところで売却するとなると「80%×30%=24%」のダメージとなります。
下降トレンドでは9%のダメージでしたが、24%となるとだいぶ大きなダメージとなります。そのため、対応を考えなければなりません。
プット・オプションをどのように活用するのか?
投資可能資金のうち大部分を株式に投資している場合は、やはりプット・オプション(対象の指数などが値上がりすると価格が上昇する)を買っておくことが望ましいといえます。
そのうえで、筆者であれば以下のような行動をとります。
・通常レベルの急落(日経平均株価でいえば1日の下落率が3%くらい)のとき
この程度の下落であれば、プット・オプションの価格もそれほど大きく上昇せず、個別銘柄が下降トレンドに転じた場合の売却も比較的スムーズに進むはずです。
よって、プット・オプションは保有を続けたまま、下降トレンドに転じた保有株を通常通り売却します。
・突発的な急落のとき
突発的な出来事が起こって株価が急落するときは、個別銘柄の株価がストップ安売り気配で寄り付かず、売却できない可能性があります。株価が急落して下降トレンドに転じたのに、売ることができない状態です。
一方、そのような状況ではプット・オプションの価格が跳ね上がります。株価急落前と比べて、価格が100倍以上に達することも珍しくありません。そこで保有しているプット・オプションを売却し、利益を確保しておきます。
万一の場合はプット・オプションの利益で保有株の損失の一部をカバーする
もし、投資可能資金1,000万円で、実際の投資額800万円(投資可能資金1,000万円の80%)だとすれば、プット・オプションを1~2個買っておけば対処可能です。
10円のプット・オプションを2個買い(10円×1,000円×2個=2万円)、それが1,000円に値上がりすれば、200万円になります。
投資している株式で、「800万円×30%=240万円」の損失が生じたとしても、その大部分をプット・オプションの利益でカバーできることになります。
もし、プット・オプションの価格がそこまで跳ね上がらないようであれば、逆に保有株は30%も値下がりすることなく、平均してマイナス10%程度で売却できるはずです。
マイナス10%で売却できれば、「80%×10%=8%」のダメージで済みます。この程度なら、その後のちょっとした上昇相場でも十分に挽回可能です。
プット・オプションはあくまでも、突然の株価急落で個別銘柄の多くがストップ安売り気配になっている状況で売却し、保有する個別株の損失の一部を補てんするという目的で使うのがよいと思います。
急落時に売却した株をいつ買い戻すか?
突発的な出来事の影響により、株価が急落した個別銘柄を売却する場合、25日移動平均線からかなり低い株価(たとえば25日移動平均線からのかい離がマイナス15%)でないと売却できないことがあります。
でもよくあるのが、株価が急落した後、急反発するようなケースです。この事実を踏まえたうえで、いつ買い戻すのがよいでしょうか?
筆者であれば、原則通り再度25日移動平均線を超えるのを待って、買い直しをします。
どうしても「急反発されると悔しい」というのであれば、反発の初期時点を狙って買い戻し、直近の安値を割り込んだら損切り、という方法もあります。
しかしこの方法は、日中株価をずっとウォッチしていないと難しいことです。株価が急落した後というのは、株価が大きく乱高下することがよくあります。そのため、たとえば朝の寄り付きで少し反発していたので買ったところ、その日のうちに株価が急落して直近安値を大きく割り込んでしまう、というケースもあります。日中仕事のあるサラリーマンの方などにはなかなか対応しにくいでしょう。
実際には、株価が25日移動平均線を突然大きく割り込むというケースはそれほど多くはありません。保有している銘柄の一部にとどまります。
ですから、そうした銘柄を売却した後に急反発するようなことがあっても、それはそれで仕方ないと受け入れ、再度25日移動平均線を超えたら淡々と買い戻しをすればよいと思います。
緊急事態が起きたら、その先については何も考えず、まずは足元の損失を最小限に防ぐことを最優先するようにしてください。
(足立 武志)
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