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9月、台風シーズン到来!防災はもちろん、原油相場にも警戒注意!

トウシル / 2019年9月2日 16時41分

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9月、台風シーズン到来!防災はもちろん、原油相場にも警戒注意!

 今回は、台風シーズンが本格化したことを受け、台風を含んだ熱帯暴風雨と原油相場の関係について書きます。

 日本各地でもすでに大雨の被害などが発生しています。一刻も早い復旧とご安全をお祈りいたします。

2005年、2008年のハリケーン直撃で米国の原油生産量が減少

 米国でも各地に被害を及ぼす「ハリケーン」は、作物などへの被害などだけでなく、原油生産量、ひいては原油価格に影響を与える場合があります。

 2005年9月と2008年9月、超大型ハリケーンがメキシコ湾の石油基地を直撃したため、石油基地の生産力が下がり、一時的に米国の原油生産量が20パーセントも減少(前月比)しました。

図:メキシコ湾およそメキシコ湾周辺に上陸した主なハリケーン

出所:米国立ハリケーンセンターの資料をもとに筆者作成

 以下のグラフのとおり、ハリケーンは、原油生産量のグラフに、まさに“爪痕”を残しました。2~3カ月で生産量は元に戻りましたが、ハリケーンの進路と勢力次第で、米国の原油生産が大きなダメージを受ける事を強く印象付けました。

図 米国の原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:米エネルギー省(EIA)のデータをもとに筆者作成

 また、米国のシェールオイルとハリケーンの関係も、無縁ではありません。メキシコ湾およそメキシコ湾周辺に上陸した主なハリケーンのとおり、2017年8月にハリケーン“ハービー”がテキサス州西部に上陸しました。

 この際、量や期間は限定的であったものの、以下のとおり、同州にあるイーグルフォード地区(米エネルギー省が提唱する7つのシェール主要地区の一つ)の原油生産量が減少しました。

図 米シェール主要地区「イーグルフォード」の原油生産量

単位:百万バレル/日量
出所:EIA(米エネルギー省)のデータをもとに筆者作成

 米国の原油生産量は、2019年7月時点で日量およそ1,200万バレルです。2005年や2009年時点ではその半分以下の日量およそ500万バレル程度にまで減少していることが分かります。

 米国は今や、減産中のサウジとロシアを上回る世界No.1の原油生産国になったと言われています。2017年1月からサウジやロシアが協調減産を開始し、世界の石油の需給を引き締める策を実施していますが、シェールの急増をきっかけとした米国の生産量の急増によって、減産の効果が薄まっているという指摘があります。

 仮にハリケーンが今年、メキシコ湾の石油基地や周辺の地域に襲来し、実際に原油生産量が減少する事態になれば、

【1】世界最大の産油国の原油生産量が減る
【2】これまで協調減産の効果を薄めてきた事象が弱まる

 という2つの意味で、原油市場はハリケーン襲来を上昇要因と捉える可能性があります。

 もちろん、その場合でも、過去そうであったように、数カ月後には生産量が元に戻ることが想定されるため、上昇したとしても期間は長期的なものにはならない可能性があります。

タイフーン、ハリケーン、サイクロン、いずれも勢力を強めた熱帯暴風雨。違いは現在地

 タイフーンとハリケーン、サイクロンは、いずれも発達して勢力を強めた熱帯暴風雨のことです。また、熱帯暴風雨は熱帯低気圧が発達したものです。発達段階は、熱帯低気圧→熱帯暴風雨→発達した熱帯暴風雨(タイフーンなど)、の順です。

 熱帯低気圧は、温められた海水が水蒸気になり、上昇気流が生まれることで発生します。このため、赤道付近の海水温度がおおむね26度以上の地域で発生する傾向があります。

 自転する地球上では緯度の差によって運動方向に変化が生じるため(コリオリの法則)、北半球の熱帯低気圧は左回り(反時計回り)で北東方向へ、南半球の熱帯低気圧は右回り(時計回り)となり南東方向へ向かいます。

 コリオリの法則が発生しない(緯度に差がない)赤道付近では熱帯低気圧は発生せず、また、北半球で発生した熱帯低気圧が南半球に移動することはありません(逆もしかり)。

 風速と勢力の関係は、北西太平洋・北大西洋など、地域ごとの観測を担当する機関によって若干異なりますが、おおむね秒速15メートル未満が熱帯低気圧、同15~30メートル程度が熱帯暴風雨、同30メートル程度以上が発達した熱帯暴風雨とされています(いずれも10分間平均最大風速 以下同様)。

 熱帯低気圧が発達し、発達した熱帯暴風雨になった際、タイフーン、ハリケーン、サイクロンのいずれかに格上げされますが、名前が異なるのは、その発達した熱帯暴風雨がどの地域にあるのかによって変わるためです。

図:発達した熱帯暴風雨の地域別の名称

出所:各種資料をもとに筆者作成

 台風は、気象庁などが定義する、北西太平洋または南シナ海にある熱帯低気圧のうち、最大風速が秒速およそ17メートル以上に発達した熱帯暴風雨のことです。“台風の卵”とは、台風に発達しそうな(熱帯暴風になりそうな)熱帯低気圧、と言えます。

 同じ地域を管轄する米軍の機関である合同台風警報センターの機関の基準では、(台風が)風速29メートル以上となればタイフーンになります。

 北西大西洋、北東太平洋では、風速29メートル以上でハリケーン(米国立ハリケーンセンターの基準)、南太平洋、南北インド洋では、風速33メートル以上でサイクロン(India Meteorological Departmentの基準)になります。

図:発達した熱帯暴風雨の名前と地域、および風速の関係

※風速は10分間の平均
出所:各種資料をもとに筆者作成

 日本では、国土交通省の外局である気象庁が台風や熱帯低気圧の情報を、随時ウェブサイト、あるいは状況に応じて会見で発表することがあります。また、ハリケーンやタイフーンの観測を幅広く行う米国の機関(米軍に関連する機関であることが多い)は、これらの詳細な状況や今後の見通しを数時間おきにウェブサイトで公表しています。

 発達した熱帯暴風雨によって該当する地域では、これまで何度も甚大な被害を受けてきました。これに対し、日夜、関連機関は気象観測技術を進歩させ、より高頻度で、正確な現状を示す情報を、さらには確度の高い予測を公表しています。

 過去に比べて、わたしたちは、年々発達する技術によって生み出される有益な情報をいつでも入手できる状況にあります。また、それらを“減災”に役立てることができる環境にあると言えます。

日本における台風接近率と上陸率は、この70年間でわずかながら上昇

 日本における台風に関するデータで、長期的にみて注意すべきデータがあります。以下は、日本における台風接近率(台風の接近件数÷台風の発生件数)と上陸率(台風の上陸件数÷台風の発生件数)です。

図:日本における台風接近率と上陸率

出所:気象庁のデータより筆者作成

 当該データは、台風の中心が観測施設から300km以内に入った場合を“接近”、台風の中心が北海道、本州、四国、九州の海岸線に達した場合を“上陸”としています(小さい島屋半島を横切った場合を除く)。

 近似値線(赤実線)が示すとおり、非常に緩やかですが、台風の接近率と上陸率はこのおよそ70年間で上昇しました。世界規模で懸念されている異常気象との関係は定かではありませんが、やはり今後も、日本における台風の接近率や上陸率が上昇すると考えて行動することが重要だと思います。

 例えば、熱帯で生育する天然ゴムの生産が近年、もともと主要な生産地でなかった中国南部の雲南省で生産量が増加していたり、本来熱帯に生息しているはずの蚊や蟻などの昆虫が日本でも確認されたりする例が目立っています。

 熱帯特有の事象の北限が上がってきていることを示唆するこれらの例と、台風の活動域の北限が上がる、つまり日本に接近したり上陸したりする台風が増えることの根本原因は同じなのかもしれません。

 気象庁をはじめとした専門機関の情報に、これまで以上に関心を寄せ、“減災”や原油価格など“コモディティ価格の変動”に備えることが、今後、ますます重要になってくると思います。

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(吉田 哲)

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