株価下落リスクを負わずに「株主優待」ゲット:「つなぎ売り」は何日前から始めるべき?
トウシル / 2019年9月11日 7時41分
株価下落リスクを負わずに「株主優待」ゲット:「つなぎ売り」は何日前から始めるべき?
前回に続き、「株価下落リスクを負わないで株主優待を獲得する方法」を解説します。
優待は欲しいが、株価下落リスクを負いたくない場合、「つなぎ売り」を使えばよい
「つなぎ売り」は、信用取引の一種です。以下の方法で、優待取りに使うことができます。
つなぎ売りを使った「優待取り」のやり方、イメージ図
9月末に100株保有すると、魅力的な株主優待が得られる銘柄を「A社」として、解説します。以下の2ステップで、優待取りが完結します。
【ステップ1】
A社100株の「買い」と、A社100株の信用取引の「売り」を、両方とも行います。買ってから売っても、売ってから買っても、どちらでも問題ありません。同じ価格で行うのが理想です。
9月末基準の優待を得るためには、9月26日(木:権利付き最終日)までに、ステップ1を行う必要があります。9月26日までに、ステップ1を行い、9月27日(金:権利落ち日)までポジションを持つと、9月末基準の優待を得る権利が確定します。
【ステップ2】
優待の権利を得たら、速やかに(原則9月27日に)、現渡し(げんわたし)で決済してください。現渡しとは、保有するA社株100株を、信用で売建て(うりたて)しているA社株100株の返済に充てることです。これで、「優待取り」は完結です。
30日(月)に現渡しすることも返済期限内なので可能ですが、貸株料を払う期間が長くなるので、忘れずに27日(金)に現渡しをしましょう。
優待取り「つなぎ売り」にかかるコスト
それでは、「つなぎ売り」で、優待を取るのにかかるコストを、優待が魅力の小売業「A社」を例にとって説明します。「A社」は架空の会社ですが、実在する会社ときわめて近い内容としています。
コストや税金の仕組みはとても複雑で、すべて理解していただくのは困難です。大まかなイメージだけ、つかんでいただけると幸いです。
つなぎ売りを使った優待取りのメリットと、かかるコストの比較
◆前提条件
・ 9月17日(火)にA社100株を1,030円で買い(約定金額10万3,000円)
・ 同じ日に、A社100株を1,030円で信用売り(約定金額10万3,000円)
・ 優待を得る権利が確定する9月27日(金)に、現渡し(げんわたし)で決済
・ 100株保有で、9月末基準で2,000円相当のお食事優待カードを得る権利が確定
・ 9月末基準の配当金は1株当たり2円、100株では200円(税引前)
・ 貸株料は、一般信用・短期の料率で計算(制度信用では異なる数値となる)
・ 信用売りを現渡しで清算する際、配当落ち相当額(200円)の支払いが必要
上記の例では、必ずかかるコストは401円です。それで、お食事優待カード2,000円分が得られるならば、十分にメリットがあります。
ただし、これ以外にも、コストがかかる場合があります。制度信用を使う場合に大きなコストとなる可能性があるのは、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」です。人気の優待銘柄では、時おり優待メリットを上回る逆日歩を請求されることもあるので、注意を要します。事前には金額が分からず、事後的に決まった金額を請求されます。
楽天証券が、「優待取りのつなぎ売り」のために用意している「一般信用・短期」を使えば、逆日歩は発生しません。制度信用ではなく、一般信用でつなぎ売りした方が、リスクが小さいと言えます。
もう1つ、かかるコストは、配当金相当額(支払)と、配当金(受取)の差額です。つなぎ売りしたまま、配当金を得る権利が確定すると、信用売りしている100株に対して、配当金相当額を、支払う必要が生じます。一方、買って保有している100株では、配当金を得る権利が確定します。実際に受け取る配当金は、源泉税(20.315%)分だけ少なくなります。この20.315%はコストとなる可能性があります。ここで例にあげたA社の場合は、配当金は1株当たり2円、100株保有で200円ですので、その源泉税分(40円)が追加コストになる可能性があります。
損益通算を使えるように手続きしていれば、このコスト(支払う配当金相当額と受け取る税引き後配当金の差額40円)は後から還付される可能性がありますが、そうでない場合は、そのままコストとなります(詳しい説明は、割愛)。
制度信用より一般信用を使った方が、リスクが小さい
優待取りをするための「つなぎ売り」では、「制度信用」または「一般信用」のどちらか選択できます。「制度信用」は、取引所が提供する信用取引で、「一般信用」は、楽天証券が提供する信用取引です。
どちらを選ぶかで、かかるコストが異なります。優待を得るメリットよりも、優待取りにかかるコストが大きくならないように、注意する必要があります。
結論から言うと、「制度信用」を使うよりも、「一般信用・短期」を使った方が、リスクが小さいと言えます。
制度信用
取引所が提供する信用取引。取引所が選んだ銘柄で信用売買が可能。欠点は、売建てをしている時に、「逆日歩(ぎゃくひぶ)」というコストが発生する可能性があることです。逆日歩が発生するか否か、発生する場合いくらか、事前に分かりません。
逆日歩が発生すると、事後的に支払いを請求されます。運が悪いと、優待で得られるメリットを上回る、逆日歩の支払いが必要になります。
一般信用・短期
株主優待獲得の「つなぎ売り」に活用できるように設計されている、返済期限14日の一般信用取引です。楽天証券が選んだ銘柄で、信用売りが可能です。逆日歩が発生しないのが、メリットです。売買手数料・貸株料などのコストがかかりますが、事前におおまかな金額が分かるので、優待取りをやるメリットとコストを事前に比較できます。
制度信用のように、後から想定外のコスト(逆日歩)が発生することはありません。
一般信用・短期「つなぎ売り」を早くやるメリットとデメリット
まず、2019年9月末基準の優待を取るために必要な「つなぎ売り」のスケジュールを、押さえておきましょう。楽天証券で一般信用・短期「つなぎ売り」を行う場合、以下のスケジュールとなります。
一般信用・短期「つなぎ売り」スケジュール:2019年9月末基準の優待取り
優待取り【ステップ1】は、「株式現物の買い、信用取引の売りを、同じ株数ずつ、なるべく同じ価格で行う」ことです。【ステップ1】は、9月17日(火)から行うことができるようになります。そのための一般信用・短期の売り注文は、9月13日(金)の19時(午後7時)から、出すことができます。
【ステップ1】は、初日(9月17日)にやらなくても、18日(水)、19日(木)、20日(金)、24日(火)、25日(水)、26日(木)に行うこともできます。26日(木)が、最終日です。26日までに【ステップ1】をやらないと、9月末基準の優待は得られません。
早くやるのと、遅くやるのは、どちらが良いでしょうか?メリットと、デメリットは以下の通りです。
◆早く(初日・9月17日)【ステップ1】をやるメリット
一般信用・短期で、売建てが可能な株数には、限りがあります。楽天証券が用意した株数がすべて利用され、無くなってしまうと、つなぎ売りの注文が出せなくなります。人気の優待銘柄では、早めに売建ての予約をした方が、つなぎ売りが実行できる可能性が高まります。13日の19時から、売建ての予約が可能になります。
◆早く【ステップ1】をやるデメリット
売建てしてから、現渡しで返済するまで、日数に応じて、貸株料の支払いが必要です。長く借りるほど、貸株料は高くなります。9月17日につなぎ売りして、9月27日に現渡しする場合は、13日分(受渡ベースで9月19日から10月1日まで)の貸株料支払いが必要です。売建可能な最終日(9月26日)につなぎ売りして、9月27日に現渡しをする場合は、貸株料は2日分(受渡ベースで9月30日から10月1日まで)で済みます。
貸株料は、年率で3.9%ですが、1日あたりでは、約0.01%です。先に例に挙げたA社で、約定金額10万3,000円のつなぎ売りをする場合、1日あたり約11円です。13日分ならば143円、2日分ならば22円の貸株料支払いが必要になります。
結論としては、人気の優待銘柄は、貸株料(1日当たり約0.01%)を払う期間が長くなっても、早めにつなぎ売りをした方が良いと言えます。遅くなると、売建可能な株が無くなることが、あるからです。人気のない優待銘柄では、急いでつなぎ売りする必要はありません。ただし、利用可能な株が少ない場合は、早めにつなぎ売りした方がいいかもしれません。
一般信用・短期で売建可能な銘柄と、利用可能な株数を見る方法
9月11日(水)19時以降、楽天証券ウェブサイトのログイン後の画面から、「国内株式」→「信用取引情報」→「一般信用売建銘柄」とクリックし、弁済期限「14日」を指定すると、9月末基準の優待取りで「一般信用・短期」の売建てができる銘柄が分かります。ただし、売建可能な株数は、9月13日(金)の18時過ぎまでは「0株」となっています。13日(金)18時30分前後に、そこに、銘柄別の売建可能株数が入ります。売建注文は、13日19時から入力可能になります。
その後、売建注文を予約するお客様が増えると、売建可能株数は、減っていきます(途中で売建可能株数が追加されて、増えることもあります)。
楽天証券HPで、利用可能な株数を見る方法
実際につなぎ売りを行う際には、以下のご注意もお読みください。
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