景気後退期の中小型バリュー(割安)株投資。買っていい株、悪い株の見極め方は?
トウシル / 2019年9月19日 5時10分
景気後退期の中小型バリュー(割安)株投資。買っていい株、悪い株の見極め方は?
現在、東証株価指数は2018年1月をピークに下落基調にあるので、個別株投資において苦労されている方も多いのではないでしょうか?
今回は、そのような状況下、どのような視点で銘柄選定していけばよいのか、私だったらという視点でお伝えしていきます。私は、キラリと光る中小型株を見つけるのが大好きなバリュー投資家ですので、その前提でお読みいただければと思います。
まずは大局観をつかむこと
まずは大局的に、景気循環、利益の増減の循環が、どの局面にあるのかを見ることです。「低迷~拡大期」か、「高原状態(※)~後退期」かで戦略が変わってくるので、とても重要です。
(※)高原状態…景気が高水準で横ばいを続けること
ここで日経平均株価と、日経平均を構成する銘柄の業績動向(予想EPS[1株あたり利益])の推移を見てみましょう。
日経平均株価と予想EPSの推移
(2011年9月~2019年8月)
この推移から、日経平均株価は予想EPSの推移とほぼパラレルに動いていることが見て取れます。2013年のアベノミクス相場以降、企業利益は増え、株価も上昇してきましたが、利益見通しは、昨年秋から下がってきています。また、利益水準は2012年と比較して2倍になっており、これから大幅増益は期待しにくい状況とみています。
このため、現在は「高原状態~後退期」で、個別株投資をする上では難しい環境、かつ、中小型株だと流動性が低いため、割安でもなかなか上がらない状況になることが考えられます。この局面の戦略としては、年に1、2回の日本株全体が大きく下落する局面を待って買い、年に1、2回の上昇局面では売却するという形を取っていきます。
個別銘柄の選定方法
次に、個別銘柄の選定です。予想PER(株価収益率)が12倍以下で、財務体質の良い銘柄を選定していきます。
「高原状態~後退期」では特に高PER銘柄は避けたいと考えています。その理由は、高成長が前提となっているケースが多く、成長が止まった時に株価が急落しかねないからです。
また、財務体質の良い銘柄であれば安心感があり、配当を増やしたり、自社株買いといった可能性もあるため、私自身は好んで選定します。そして、1銘柄に集中せず、1銘柄あたりの投資額は最大でも運用資金の20%に抑えることをお勧めします。
銘柄の選定基準は次のとおりです。
- 売上・営業利益を順調に増やしている成長&割安銘柄
- 何らかの要因により、一時的に利益水準が下がっている銘柄
- 高シェアで利益率の高い銘柄
一つ一つ見ていきましょう。
1.は、今後も順調に売上・営業利益が増えていけば、多少、買ったタイミングが悪くても、保有し続けることで、いつかは株価に反映されてくるという考え方です。
参考銘柄は、2020年代には1,000億円の売上を目指しているコンドーテック(7438)、無借金で営業利益率20%以上の中央自動車工業(8117)、「サービスの質は人間の質そのもの」として社員の人間力を高めることに注力しているKSK(9687)、デジタル時代だからこそDMを強化しているディーエムエス(9782)です。
2.は、一時的な要因で利益が低くなっているため、株価も低迷しているけれども、正常化した時の売上・利益水準を考えると現在の株価は割安で、今後の上昇が見込めるという考え方です。
参考銘柄は、鶏肉相場の低迷により減益予想だが、営業利益率10%以上のアクシーズ(1381)、昨年出荷した製品の不具合への対応と5月の工場火災により足下の利益は低迷しているが、フル生産状態のノザワ(5237)です。
3.は、高シェアを持ち、利益率が高い企業であれば、価格支配力があると考えられ、今後、事業環境が悪くなることが想定されているとしても、現在のPERが低すぎれば、株価は水準訂正してくるという考え方です。
参考銘柄は、業界が淘汰され、受注単価も上がり、2018年度のシェア64%を誇る高橋カーテンウォール工業(1994)です。
上記の銘柄も、買うタイミングはいつでもよいという訳ではなく、年に1、2回ある日本株全体が下落した局面を狙うことをお勧めします。
株価のベースは利益にあり
個別株に投資をしていると「業績は良いのに株価がずるずる下がっていく」「決算発表の内容は良かったのに株価は下がった」というようなことが、多々あります。しかし、短期的な株価の動きに、こちらが翻弄されていては、中長期で利益を積み上げていくことは難しいでしょう。
私自身が基準に置いていることは、利益が伴っている限りは、株価が下がろうが、自らの選択を信頼することです。仮に保有している銘柄の業績が悪化し、株価が下がった場合でも、その下がった時点で割安かどうかを判断し、見切るか、保有し続けるかを決めていきます。何かしらの基準がないと、株価が上がると良い会社、下がると悪い会社に見えがちになります。そうなると、上がると買い、下がると売るという行動に繋がり、資産を減らしてしまいかねません。
「株価は最終的にはその企業の利益で決まってくる」この基本観を持ち続けることをお勧めします。この基本観さえあれば、きっと中長期的にうまくいくことでしょう。
(白石 定之)
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