負けない投資家になるための道具(ツール)とは!?
トウシル / 2019年10月10日 16時40分
負けない投資家になるための道具(ツール)とは!?
量的緩和政策に出口は存在しない!?
2019年9月26日の「バブルを延命させるFRBの新たな政策が浮上!隠れQE4を画策か!?」というレポートで、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長らが、『隠れQE(量的緩和)』を画策し、バブルを延命させようと思っているのではないかという疑念を述べた。
【今回の米レポ市場への介入、すなわち、OMO(公開市場操作/Open Market Operations)は特別措置ということになっている。しかし、「この先、短期金利市場がまたおかしくなったら、連銀はOMOを既成事実化して長期にやるのではないか」という観測が浮上している。これはOMOではなく、POMO(恒久公開市場操作/Permanent open market operations)である。
OMOをPOMOに変えてQEをやるというのは、いかにも連銀がやりそうなことだ。これは危機を防ぎバブルを延命させる「隠れQE政策」と言えるだろう。POMOは10月末のFOMC(米連邦公開市場委員会)で検討、あるいは決定されるのではないかと噂になっている。
POMOという隠れQEはトランプ米大統領への対策にもなる。パウエルFRB議長はトランプ大統領に強烈に批判されており、さりとて、現状で大幅利下げやQE4(量的緩和第4弾)はやりたくない。しかし、POMOならQE4とは呼ばずに隠れQEとしてバブルを延命でき、株価が高値圏にあれば再選を狙うトランプ大統領もおとなしくなる可能性があるというのが、金融当局者の見立てであろう。】
その臆測通り、2019年10月8日にパウエルFRB議長はバランスシート拡大再開を表明した。
FRB議長、バランスシート拡大再開を表明-量的緩和は否定
(ブルームバーグ 2019年10月9日)FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、短期金融市場で最近見られたような混乱が再発しないよう、当局は米財務省証券の購入を再開すると表明した。また、今年3回目となる利下げの可能性もほのめかした。
議長は8日、デンバーで開かれたNABE(全米企業エコノミスト協会)の年次会合で、「私と同僚は徐々に準備預金の供給を増やしていく措置を近いうちに発表する方針だ」と述べた。
パウエル議長は購入の対象としてTビル(米財務省短期証券)を検討しているとした上で、金融危機時に実施した量的緩和プログラムの復活と捉えるべきではないと強調した。議長発言を受けて3カ月物Tビルの利回りは低下した。
パウエル議長は「準備預金管理のためのバランスシートの拡大は、金融危機後に当局が実施した大規模資産購入プログラムと一切混同されるべきではないことを強調したい」と発言。「最近の技術的な問題も、その解決に向けて当局が熟考しているTビルの購入も、金融政策スタンスに重大な影響を与えるものではない」と説明。「これはQEではない」と、講演後の討論で強調した。
QEは否定し、これはQEではないと強調しているが、同じことだ。POMOはQE4ではないので、今後、危機が起こればQE4を発動する流れは出来上がっていると考えていいだろう。
ファンドでミーティングを行ったが、これで米国株の下方硬直性は強化されたと言えるだろう。POMOを最低2年くらいは続けるだろうという見通しを運用者は述べているが、FRBの総資産は過去3週間で1,760億ドル増加した。これは最大800億ドル程度増加していたQE3の時の2倍のペースである。
連邦準備銀行の総資産 3兆9,458億ドル(2004~2019年)
連邦準備銀行の総資産 3兆9,458億ドル(2015~2019年)
2019年9月から債務の買い入れが急拡大している
思い出してほしい。米国の株価はFRBのポートフォリオ(総資産)と連動しているのである。2018年の第4四半期に米国株が急落したのは、FRBが量的引き締めに動いたことが主因である。
2018年の量的引き締め
主要中央銀行の資産の増減
バンクオブアメリカとゴールドマンは大まかに150億ドル/月の恒久的なOMOを想定している。この戦略により、バランスシートは年間約1,800億ドル膨らみ、Fed(連邦準備制度)による米国債の純購入額(赤と灰色の棒の合計)は今後数年間で約3,750億ドルになる。
Plunge Protection Team(PPT=株価下落防止チーム)や、NY連銀がPKO(株価維持政策)を入れている現状で、株の売りトレンドが大きくなりにくい。
NYダウ(日足)とPlunge Protection Team(PPT=株価下落防止チーム)のPKO
トランプ大統領は2019年10月7日に、「利下げを望んでおり、大幅な利下げだ。米国にインフレは存在しない。存在しているとしても、低水準で、利下げを実施するに値する。FRBが利下げすることを望む」と述べており、大統領のPPTと、金融緩和で株価を維持する操作が延々と続くだろう。
読者の皆さまはすでにお分かりであろう。量的緩和政策はそれ自体が崩壊しない限り、出口は存在しないのである。
投資戦略フェア石原順講演(楽天FX協賛)と逆張りインディケーター
上記に述べたように、相場はFRBのステルスQEで、業績相場ではなく、完全な金融相場へと向かっている。セントルイス地区連銀の金融ストレス指数を見ても、悪材料には目もくれないゴルディロックス状態が続いている。それが、バブル相場や金融相場の特徴である。
金融ストレス指数
しかし、毎度のことだが、バブルは必ず崩壊しているのである。ドル/円相場も株が大きく下げないので、リスクオンの円買いになりにくい。株が安定しているうちはレンジ相場だ。
だが、株が下がるたびにFRBが出てきて対策を打っていたら、米国の金利はゼロかマイナスに向かい、その反動でドル安がいつ襲ってきてもおかしくない。我々は現在、綱渡りをしているようなスタンスで相場に向き合っていることを忘れてはならない。
現在の為替市場は大きなトレンドが発生していないので、逆張りをしている投資家が多いようだ。逆張りが機能(ワーク)していること自体、現在は大きな方向性のあるトレンド相場でないということである。
下のチャートは、筆者の逆張りの「ATRチャネルトレードモデル」である。
ドル/円(日足)逆張りのATRチャネルトレードモデル
ユーロ/ドル(日足)逆張りのATRチャネルトレードモデル
2019年11月2日(土)の「投資戦略フェアEXPO2019 in 大阪」で、楽天FXの協賛で筆者は講演をする。
石原順セミナー来場者には、参加者特典として『お試し版(期間限定)』のMT4の売買シグナル付き逆張りインディケーターのプレゼントを予定している。下のチャートのフィルター付き逆張り売買モデルの楽天MT4版である。興味のある方は、ぜひ、参加していただきたい。
ユーロ/ドル(日足)フィルター付き逆張り売買の売買シグナル
負けない投資家になるための道具(ツール)と株式投資のストップ幅
10月9日(水)のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS先取りマーケットレビュー』は、ゲストに楽天証券株式会社株式・デリバティブ事業本部長の土居雅紹氏をお招きして、「負けない投資家になろう! そのために何が必要か!?」というテーマでお話していただいた。わかりやすいと大変好評のようだ。ぜひ、ご覧いただきたい。
番組ホームページから土居雅紹氏と筆者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。
10月9日:楽天証券PRESENTS先取りマーケットレビュー
(石原 順)
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