米中協議の一部合意による株価上昇の「神通力」。日本株にどこまで通用するか?
トウシル / 2019年10月15日 14時40分
米中協議の一部合意による株価上昇の「神通力」。日本株にどこまで通用するか?
日経平均は3週ぶり上昇、反発に期待?
先週の国内株市場ですが、週末10月11日(金)の日経平均終値は2万1,798円となり、週足ベースでは3週ぶりの上昇でした。前週末終値(2万1,410円)からの上げ幅は388円です。
週間の動きを振り返ってみると、米中閣僚級協議が10日(木)~11日(金)に控える中で米中関係にまつわる報道に一喜一憂する値動きがメインとなりましたが、終わってみればしっかりした印象だったと言えます。
そして、肝心の米中協議の結果は「一部で合意」と報じられました。それを受けた週末11日(金)の米国株市場が上昇し、同じく日経平均株価指数先物取引の終値もCME(シカゴ)で2万2,035円と節目の2万2,000円台乗せを達成していますので、週明け15日(火)の取引は上昇スタートが見込まれます。
また、日米企業の決算発表シーズンがこれから本格化していくタイミングでもありますので、米中関係の改善期待が継続し、国内外の景気や企業業績の回復見通しへとつなげることができれば、さらなる上値追いのシナリオも描けるかもしれません。
となると、今週の焦点は「株価押し上げの推進力がどのくらいなのか?」の見極めになりますが、まずはいつもの通り下の図1で足元の状況から確認です。
■(図1)日経平均(日足)の動き(2019年10月11日取引終了時点)
前回のレポートでは、いわゆる「アイランド・リバーサル」の形に注目し、75日移動平均線の維持がポイントになると指摘しました。先週の日経平均の値動きをチェックすると、75日移動平均線がしっかりサポートとして機能した他、アイランド・リバーサルの形成時に空けていた「窓」も埋めています。ひとまず下落が加速してしまう懸念が後退し、逆に反発が期待できる形で終えたと言えます。
今週はさらに週末に飛び込んできた米中協議の一部合意が追い風になれば、2万2,000円前後まで株価水準を切り上げて、その維持や上放れがポイントになってきます。
また、週末11日(金)のローソク足を見ると25日移動平均線を回復している他、前日10日(木)とのあいだに「窓」を空けています。これによって今度は10月3日~10日の期間のアイランド・リバーサルが形成され、上方向への意識が感じられる格好になっています。
上値メドを探る:4月高値と2018年高値に注目
ひとまず上値のメドとして挙げられるのは、直近高値である9月19日の2万2,255円や4月24日高値の2万2,362円になりますが、4月高値を上回ることができれば「年初来高値更新」ゾーンに足を踏み入れることになります(下の図2)。
■(図2)日経平均(日足)の動き その2(2019年10月11日取引終了時点)
そしてもう一つ、注目しておきたいのが昨年12月3日の高値である2万2,698円です。
ちょうどこの時期は、中国企業の華為技術(ファーウェイ)の幹部がカナダで逮捕され、米中摩擦の構図が単なる通商問題だけでなく、ハイテク分野での覇権争いなど多岐にわたっていることを再認識させられるという出来事がありました。その後の日経平均は12月26日の安値(1万8,948円)まで下落していくことになります。
そして、以降の日経平均は米中摩擦に対する期待と警戒で上げ下げを繰り返してきたわけですが、改めて上の図2を見てみると、2019年の日経平均の値動きは昨年12月の1カ月間の値幅内にとどまっていることが分かります。つまり、昨年12月高値を超えることで新たな相場局面入りと判断される可能性があるわけです。
また、これまでに何度か紹介したことがあるエンベロープでも上値メドを探っていきます(下の図3)。
■(図3)日経平均のエンベロープ(25日MA基準)(2019年10月11日取引終了時点)
ここ数年の日経平均は25日移動平均線を中心に、通常は±3%、相場が大きく動いた局面で±6%の範囲内で動くことが多く、現在は25日移動平均線乗せのところに位置しています。先週末11日(金)時点での+3%は2万2,306円ですので、ちょうど、直近高値や4月高値と同じぐらいの水準ですし、仮にこのまま+6%のところまで上昇すれば、2万3,000円台も見えてきます。
株価押し上げの推進力には慎重な見方も
以上を踏まえると、足元のチャートの形状からは年末株高に向けた期待が大きく膨らみそうな格好になっていますが、その一方で米中協議の一部合意をきっかけとした株価押し上げの「神通力」に対して慎重な見方もあります。
今回の協議で合意されたのは、中国側が「米国からの農産物(豚肉・大豆など)の輸入拡大」や「知的財産権保護に向けた取り組み」、「為替介入実績など通貨政策の透明化」などを受け入れる代わりに、米国側は「10月15日に発動予定だった対中制裁関税(第1~3弾)の税率引き上げを見送る」というものです。
米国農産物の購入拡大については中国内で発生した豚コレラの影響という別の理由がある他、知的財産権の保護についても今年3月の全国人民代表大会で既に関連法案を成立させており、特に目新しいものではなく、核心的な部分での合意ではありません。
そもそも、15日発動の第1~3弾の制裁関税の税率引き上げが見送られても、12月には別の第4弾(2回目)制裁関税が発動されるスケジュールとなっていますので、米中間の協議が継続されてさらに踏み込んだ合意が求められます。あくまでも「一時休戦」と見るのが自然で、結果としてこれまでとあまり状況が変わっていません。
また、今回の合意文書に署名されるのは来月のAPEC(アジア太平洋経済協力)首脳会合のタイミングとも言われていますので、それまでにネガティブな動きが出てくる可能性も考慮すると、株価はさほど上昇しない可能性があります。今月末が期限とされる英国のEU離脱を巡る動きも不安材料です。
NYダウは2万7,000ドル台維持できず、慎重な姿勢
実際に、米NYダウ平均株価の日足チャートを見ると、11日(金)のローソク足は2万7,000ドルをまたいで上ヒゲが長くなっています。米中協議の一部合意報道を受けて2万7,000ドル台まで上昇したものの、売りに押されて節目の水準を維持できなかったことを表しています。日本が休場だった14日(月)のローソク足も小動きになっており、相場のムードの変化を感じつつも、どこか慎重な姿勢がうかがえます(下の図4)。
■(図4)米NYダウ(日足)の動き(2019年10月14日取引終了時点)
■(図5)米NYダウ(週足)の動き(2019年10月14日取引終了時点)
また、同じNYダウの週足チャートを見ても、足元の株価が26週移動平均線を維持している他、長い下ヒゲが52週移動平均線でサポートされているなど下値が堅い一方で、上値は次第に切り下がっていてやや重たくなっています。
現時点ではまだチャートの形は悪くなっておらず、当面は強気の姿勢で良いかと思われますが、一度崩れてしまう怖さを内に秘めている状況には注意が必要と言えそうです。
(土信田 雅之)
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