連銀はズブズブの量的緩和中毒。マーケットはある日突然崩壊する?
トウシル / 2019年10月17日 16時8分
連銀はズブズブの量的緩和中毒。マーケットはある日突然崩壊する?
常軌を逸した市場!?
「『常軌を逸した』マイナス利回り債買うのはお断り-JPモルガンAMウィリアム・アイゲン氏」という、ブルームバーグ(2019年10月17日付)の記事をぜひ読んでいただきたい。
記事でウィリアム・アイゲン氏は、「マイナス利回りの債券が最終的に壊滅的な損失につながる」「ファンドの資金のほぼ半分を現金にし、債券の一斉売りが起こっても打撃を受けないようにしている」「マイナス利回りというコンセプト、つまり金を貸すために金を払うという概念そのものが、私には常軌を逸した行動と思われる」「長年にわたる欧州や日本の超緩和的金融政策が生み出した大量のマイナス利回り債券によってゆがめられた市場で、投資家は最終的に大惨事に見舞われるだろう」「私が言っているのは、これだけの紙幣を印刷し、バランスシートに何兆ドルもの証券を積み上げていれば、ある時点で何かが壊れるということだ。近い将来にそうなるとは言わないが、そうなった時に債券投資家が被る損失は壊滅的なものとなるだろう。その環境でプラスのリターンを上げるのが私の仕事だ」などと述べ、マイナス利回りの債券を買うくらいなら、引退した方がましだと述べている。
ユーロ圏のイールドカーブ(1カ月~30年の利回り曲線)
ブルームバーグの記事を改めてピックアップするが、ウィリアム氏は、「運用するファンドの資金のほぼ半分を現金にし、債券の一斉売りが起こっても打撃を受けないようにしている」という。
「QEじゃない」QE4が始まった
米国は10月15日から米国債の購入を再開した。QE3(量的緩和第3弾)が終わってから5年で、米国は量的緩和に戻ることとなった。FED(連邦準備銀行)がQE(量的緩和)をやめて、QT(量的引き締め)を5年続けた結果、9月中旬にレポ市場で金融危機が起きたことから、OMO(公開市場操作)をPOMO(恒久的な公開市場操作)に変更して、金融危機を防ごうというのが今回の量的緩和再開の背景だ。
レポ市場の危機は、米金融当局が信じているよりも流動性が大幅に低いことを示している。中央銀行は、流動性を作り出し、短期市場を管理できると信じていた。しかし、レポ市場で進行している危機は、リスクと負債の蓄積が予想よりもはるかに多いことを示している。
FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は、「今回の措置はQE4ではない」と述べており、正式名称は、準備金管理(Reserve Management)となっている。いずれにせよ、米国が量的緩和を再開ということに変わりはない。
FEDが発表した量的緩和の再開は、2020年の第2四半期まで継続される。パウエルFRB議長やFEDは「これはQEではない」と言っているが、QEどころかそれ以上に攻撃的な政策に見える。
FEDの提案はレポ操作を継続し、ネットで月間600億ドル分ずつバランスシートが拡大する間に2020年第2四半期にはFEDのバランスシートがおよそ4.2兆ドルから4.3兆ドルに達することを示している。
2020年第2四半期にはFEDのバランスシートが、およそ4.2兆ドルから4.3兆ドルに達する
FEDの総資産:3兆9,458億ドル(2004年~2019年10月現在)
今後、私の人生で一番のベアマーケットに突入する(ジム・ロジャーズ)
量的緩和が再開されたが、量的緩和には「出口」がない。量的緩和を永久に続けられるなら、経済政策で誰も苦労などしない。政府がいくら膨大な予算を組んでも、企業がいくら負債を抱えようと、政府は国債、企業は社債を中央銀行に買ってもらえばいいのである。
しかし、この世にタダ飯(フリー・ランチ)というのは存在しない。
著名投資家のジム・ロジャーズは「今後、私の人生で一番のベア(弱気)マーケットに突入する」と警告し、「債権バブルはあらゆるバブルと似ているが、これまでで最も酷いバブルだ。もしバブルがはじけたら、極めて多くの人々が甚大な損失を被るだろう。世界の歴史の中で、金利水準が世界中これほどの規模で低下したり、マイナス金利となった例はない。MMT(現代貨幣理論)は(ちょっと)ばかげていると思う。いろいろ試されてはいるが、もしMMTが事実なら、いま世界で一番お金持ちの国はジンバブエだったはずだ。アルゼンチンもとても裕福になっているはずだ。私はMMTなどばかげていると思う。「タダ飯」なんてものは、世の中に存在しないのだから。一時的には効果はあるかもしれないが、長期的にはしっかりと裏付けされたお金がないと、全てが瓦解(がかい)する」と、述べている。
今、米国ではジャンク債の市場やIPO(新規公開株)市場がかなり混乱している。これまで売れていたインチキな会社のジャンク債が売れないのである。これは、例のWeWorkの詐欺問題が大きく影響していて、IPO市場も崩壊に向かっている。
米国の報道では、「レバレッジドローンを保有するCLO(*)ファンドは、4Q(第4四半期)にさらなる急激なセルオフに見舞われる恐れがある」「エリザベス・ウォーレン上院議員がCLO格付けに目をつけている」と、日本の金融機関が大量買いしているCLO市場に警鐘を鳴らす報道が多いが、ゼロヘッジの報道では、「CLOファンドは、米国のレバレッジドローンの最大の買い手であるが、投資家が弱い経済データや債務を抱えた企業に対して金融的なストレスがかかる兆候を回避しようとするため、4Qに急激なセルオフに見舞われる可能性があると、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリストは最近、クライアントに向けたノートで警告した」という。
*CLO:投資家が高利回りを得るために買っている質の低いローン担保証券
現在の資産も負債も膨らますというネズミ講的な両建て経済がいつまで続くのか分からないが、おそらく、ある日突然崩壊することになるだろう。しかし、今回の措置でバブルはしばらく延命する可能性がある。
5G関連銘柄、日経平均テクニカル分析、FXと米国株のテクニカル分析、米国の量的緩和再開、米中貿易戦争の行方、反ウォール街のエリザベス・ウォーレンリスク
10月16日(水)のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS先取りマーケットレビュー』は、 楽天証券経済研究所 チーフアナリスト今中能夫さんと楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト土信田雅之さんをお招きして、5G関連銘柄、日経平均テクニカル分析、FXと米国株のテクニカル分析、米国の量的緩和再開、米中貿易戦争の行方、反ウォール街のエリザベス・ウォーレンリスクなど、多義にわたって討論してみた。
番組ウェブサイトから今中能夫氏と土信田雅之氏と筆者の資料がダウンロード出来るので、投資の参考にしていただきたい。
ドル/円(日足)
ポンド/円(日足)
NYダウ(日足)
アップル(日足)
10月16日(水):楽天証券PRESENTS先取りマーケットレビュー (ラジオNIKKEI)
投資戦略フェア石原順講演(楽天FX協賛)と逆張りインディケーターのご案内
11月2日(土)の「投資戦略フェアEXPO2019 in 大阪」にて、楽天FX協賛で筆者は講演をする。
石原順セミナー参加者には<特典>として、<お試し版(期間限定)>のMT4の売買シグナル付き逆張りインディケーターのプレゼントを予定している。<フィルター付き逆張り売買モデル>の楽天MT4限定インディケーターである。興味のある方は、ぜひ、参加していただきたい。
ユーロ/ドル(日足)フィルター付き逆張り売買モデルと売買シグナル
豪ドル/ドル(日足)フィルター付き逆張り売買の売買シグナル
NZドル/ドル(日足)フィルター付き逆張り売買の売買シグナル
(石原 順)
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