米中冷戦が50年続くとしても、日本株は「買い」と考える理由
トウシル / 2019年10月23日 7時38分
米中冷戦が50年続くとしても、日本株は「買い」と考える理由
米中「部分合意」を好感して上昇する日経平均。落とし穴は?
11日に米中通商交渉が部分合意に達し、15日に予定されていた米国による対中制裁関税引き上げが見送られてから、日経平均株価は上値抵抗線となっていた2万2,000円を抜け、順調に上昇しています。
日経平均株価週足:2018年初~2019年10月21日
ただ、注意すべき点はあります。現時点でまだ、部分合意は確定していません。合意文書を作成し、トランプ大統領と習近平国家主席が署名するまで、1カ月以上かかる見通しです。今回の「部分合意」劇があまりに米国主導だったので、合意文書作成の過程で、中国側が新たに要求を出す可能性もあります。そうなると、部分合意の成立に暗雲が漂う可能性もあります。
中国側が問題にしそうなのは、以下2点です。
【1】米国が12月15日に予定している「対中制裁関税第4弾」(輸入品1,600億ドル相当に10~15%の制裁関税をかける)を撤回していないこと。
【2】米国が中国通信大手ファーウェイへの禁輸も解いていないこと。また、10月7日に中国の監視カメラ大手ハイクビジョンなどへの禁輸措置も新たに決定したこと。
部分合意が正式に調印されても、問題は残ります。今回の部分合意は、合意できない問題をほとんど棚上げして、とりあえず「合意」を演出しただけです。今後、さらに交渉が進展しないと、12月15日に予定されている「対中制裁第4弾」が発動されてしまうことになります。
私は、第4弾の発動もなんとか回避されると予想していますが、予断を許しません。第4弾が発動されると、そこからさらに対立がエスカレートするリスクもあります。
50年続くかもしれない「米中冷戦」
トランプ大統領は、来年に大統領戦を控え、米中対立をいったん「休戦」にしようとしているように思われます。ただし、米中の対立は根が深すぎて、抜本的な解決策はありません。それで、とりあえず部分合意というアイディアが出てきたのでしょう。
米中の対立は単なる貿易戦争ではありません。「ハイテクの覇権争い」に発展しています。米国は中国の「国家資本主義」を批判しています。国の補助を得た中国企業が半導体、液晶、スマートフォン、車載電池、5G(第5世代移動体通信)など世界の有望市場で次々とトップシェアを取っていく戦略です。中国は、成長の根幹にかかわる「国家資本主義」を、米国に批判されたからといって、やめるつもりはありません。
貿易戦争も、泥沼に落ちる可能性があります。中国企業は、歴史的な流れからすると、そろそろ自国からの輸出を抑え、海外での現地生産をどんどん立ち上げていかなければならない段階に入っています。ところが、米国との関係をここまで悪化させてしまうと、中国企業が米国でどんどん現地生産を立ち上げるのは困難になりつつあります。
日本も1980年代に米国と苛烈な貿易戦争を体験し、その後、日本企業はどんどん米国での現地生産を立ち上げ。結果、日米の貿易戦争は、影を潜めました。中国企業が日本と同じことをやろうとしても、やりにくくなっています。
冷戦50年でも、日本株は「買い」と考える理由
米中の対立に抜本的な解決のメドがないのに株なんか買って良いのか、と考える人もいるかもしれません。米中対立と株式投資について、私の考えをお話しします。米中対立は根が深く、今後、50年以上続く問題になるでしょう。20世紀の米ソ冷戦に近いものになると考えています。
それでは、今後50年間、米中対立があって世界経済はまったく成長しなくなるのでしょうか? 株はまったく上がらなくなるのでしょうか? そんなことはないと思います。
米ソ冷戦があった20世紀後半、対立が激化し、第3次世界大戦が懸念された時は、世界的に株価は下がりました。ただし、対立が緩和する局面では、世界経済の成長にともなって、株価は上昇しました。
米中冷戦も同じ構造だと思います。米中対立がどこまでエスカレートし、世界景気へのマイナス影響がどこまで拡大するかわからない時、世界的に株が上がらないのは当然です。
ただし、米中対立が、「緩和」すれば、その間に世界経済は成長し世界的に株が上昇すると考えています。
私が注目しているのは、IT活用の最先端で、新たな変化が起こりつつあることです。第4次産業革命と言われる変化です。AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット化)、ビッグデータ分析、ロボットの活用によって、産業構造の革新が加速する見込みです。これをバックアップする通信インフラとして、5Gの普及が始まる見込みです。
今は、米中対立によって第4次産業革命の流れにブレーキがかけられている状態です。それでも、このまま第4次産業革命がまったく進まなくなるとは考えられません。来年には5Gの普及も始まるでしょう。
来年、もし米中の対立が少しでも緩和し、第4次産業革命の流れが加速するならば、世界的に景気が回復し、日経平均は上昇トレンドに入ると予想しています。
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