隠れQE（量的緩和）で米国株はバブル延命。末期相場なら配当貴族株？

FEDのバランスシートの拡大で米国株はバブル延命中

　米金融当局はバブルの延命のために2つの措置を打ち出してきた。

（1）9月中旬のレポ市場危機以降、NY連銀が実施している臨時の資金供給オペを来年1月まで継続する。（いわゆるPOMO［恒久公開市場操作］）

（2）FRB（連邦準備制度理事会）は10月中旬以降に月600億ドルの短期国債の購入を開始し、これを少なくとも2020年の第2四半期まで継続する。

　米国は2019年10月15日から米国債の購入を再開したのである。QE3（量的緩和第3弾）が終わってから5年で、米国は量的緩和に戻ることとなった。連銀がQEをやめてQT（量的引き締め）を5年続けた結果、9月中旬にレポ市場で金融危機が起きたことから、OMO（公開市場操作）をPOMOに変えて、金融危機を防ごうというのが今回の量的緩和再開の背景だ。

　レポ市場の危機は、米金融当局が信じているよりも流動性が大幅に低いことを示している。中央銀行は、流動性を作り出し、短期市場を管理できると信じていた。しかし、レポ市場で進行している危機は、リスクと負債の蓄積が予想よりもはるかに多いことを示している。

連銀のNotQE（量的緩和ではない）POMO（恒久的な公開市場操作）
ドルの短期市場の資金繰りは悪化している

出所：ゼロヘッジ

　パウエルFRB議長は、「今回の措置はQE4ではない」と述べており、正式名称は、準備金管理（Reserve Management）となっている。いずれにせよ、米国が量的緩和を再開ということに変わりはない。

　米国の株式市場はFED（連邦準備制度）連銀の総資産と連動しており、資産と負債を両方膨らますというバブル延命策が打ち出されたため、株式市場の下方硬直性は高まったと言えるだろう。米国の貿易戦争・英国のブレグジット問題・WeWork騒動なども、とりあえずは「カネ余り」という楽観論でかき消そうとしているのが今の市場だ。

FEDのバランスシート

出所：ゼロヘッジ

FEDのバランスシート（青）とNYダウ（茶）の推移（2007年～2019年）

出所：石原順

景気拡大サイクル末期の投資手法

　パウエル議長が「QEでない」と呼ぶ『隠れQE』が始まったので、市場には「またバブルの再開だ！」という楽観的な見方が広がりつつある。しかし、株式市場を観察してみると、ここ数カ月は金融緩和という生命維持装置付きのレンジ往来相場となっている。

　上で取り上げた『隠れQE』はドル安（通貨安）要因だが、それによって株価のバブルが延命するので、為替相場の方も反応が鈍い。ドル/円相場はしばらく106円から109円がコアレンジのレンジ相場となりそうだ。

　そうした中、株式市場も為替市場もまだ逆張り手法がワークしている。

S&P500先物（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

NYダウ先物（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

ドル建て日経平均先物（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

ドル/円（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

ユーロ/ドル（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

ユーロ/円（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

ポンド/ドル（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

ポンド/円（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

豪ドル/ドル（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

豪ドル/円（日足）逆張りのATRチャネルトレードモデル

出所：パンローリングカスタムチャート

　結局、ドル/円相場は4年にわたる大きな三角もちあいを明確にブレイクしない限り、大きな動きは期待できないのかもしれない。

ドル/円（週足）　三角保合（もちあい）と波動カウント

出所：筆者作成

今の相場ではどういう投資が有効か!?

　2019年10月23日（水）のラジオNIKKEI『楽天証券PRESENTS先取りマーケットレビュー』は、楽天証券経済研究所シニアマーケットアナリスト土信田雅之さんをお招きして、「土用の丑の日を避けるIPO銘柄投資戦法」「日本株とドル/円の見通し」「隠れQE中は米国株の配当貴族銘柄投資？」というテーマで議論してみた。

　番組ホームページから土信田雅之氏と筆者の資料がダウンロードできるので、投資の参考にしていただきたい。

10月23日（水）:楽天証券PRESENTS先取りマーケットレビュー （ラジオNIKKEI）

出所：YouTube

　もう金融政策は限界に近づいている。ビル・グロースの言うように、「実質的な財政刺激がなければ、マイナスの利子率による経済的および資産の上昇は、終わりに近づいているかもしれない。また、世界的な経済成長の鈍化と、過去数カ月および数年前の2桁の市場価格上昇の終わりに備えることが必要かもしれない」だろう。

NYダウ（週足）フィルター付き逆張り売買モデルと売買シグナル

出所：石原順

　世界最大のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオは、「景気サイクルは大停滞（great sag）の状況にある。金融危機は起こらないかもしれないが、経済は長期停滞に入るだろう」と、発言している。

　隠れQEでバブルが延命しているが、隠れQEの間は期間限定で『米国株の配当貴族銘柄』に投資しているのが比較的安全な投資と言えるかもしれない。

P＆G（月足）

出所：石原順

イリノイ・ツール・ワークス（月足）

出所：石原順

エマソン・エレクトリック（月足）

出所：石原順

投資戦略フェア石原順講演（楽天FX協賛）と逆張りインディケーター

　2019年11月2日（土）の「投資戦略フェアEXPO2019 in 大阪」で、楽天FX協賛で筆者は講演をする。

「投資戦略フェアEXPO2019 in 大阪」ウェブサイト

　石原順セミナー参加者には『特典』として、『お試し版（期間限定）』のMT4の売買シグナル付き逆張りインディケーターのプレゼントを予定している。『フィルター付き逆張り売買モデル』の楽天MT4限定インディケーターである。興味のある方は、ぜひ、参加していただきたい。

ユーロ/ドル（日足）フィルター付き逆張り売買モデルと売買シグナル

出所：楽天MT4・石原順インディケーター

豪ドル/ドル（日足）フィルター付き逆張り売買の売買シグナル

出所：楽天MT4・石原順インディケーター

（石原 順）